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2007-04-02

近代の垢もしくはイドラ

厚労省が昨日から
 医師等資格確認検索
http://licenseif.mhlw.go.jp/search/top.jsp
をweb上で公開している。元になったのは
 医籍(医師・歯科医師免許を申請するときに作られる)
なのだが、これが穴だらけで、物故者が削られてないのはもちろんのこと、異体字の処理が雑だったり、改姓したヒトの改姓届が反映されてなかったり、甚だしくは性別を間違えて登録していたりする。
そのあたりの話は、こちら。
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/04/post_05f5.html
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/04/2_b2d4.html

で、下の記事の後半に書いた話なのだが、律令とその施行を考えるとき、近代人は真面目すぎるかも知れないと思った。
今回、医籍に物故者が残っている理由は、
 遺族が登録抹消の申請をしないから
である。登録抹消については、医師法に次のように定められている。


2 医師が死亡し、又は失そうの宣告を受けたときは、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)による死亡又は失そうの届出義務者は、三十日以内に、医籍の登録のまつ消を申請しなければならない。

ところが、これが厳密に守られていないのである。
要するに
 除籍するのは、遺族に何のメリットもなく、手間が掛かるだけだから
というのが、その理由だ。

古代の戸籍や僧尼名籍の除籍は、必ずしも律令の規定通りに運用されてはいない。そうしないことで得られるメリットがあったからだけれども、現代の医籍の除籍運用を見て、考えてしまった。
近代以降に生まれている人間には遵法意識が染みついている。それが、古代の律令の運用を考えるときに、イドラとなって、本質を見誤らせてるのではないか、と。
貨幣経済について考える場合も、インド・中国・奈良時代の日本では社会的背景も違えば、貨幣の流通範囲も違うけれども、ともすると現代の貨幣経済に慣れ親しんだ文脈で見てしまうことがある。そうしたアプローチは、文脈を読み落とし、読み誤る。
法に対する態度についても、同じことが言えるのではないか、と思う。
帳籍研究をしてるヒトってたぶん真面目なんだと思うけど、真面目であることが、見落としの原因になることもあるのではないか、と感じた次第だ。
以後、そのあたりに気をつけつつ、資料を読むことにしよう。

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