JR宝塚線脱線事故 遺族に報道被害 嫌がらせ続く
起きるべくして起きた報道被害だ。
遺族に悲しみの追い打ち 中傷など相次ぐ 2005/05/16尼崎JR脱線事故で、犠牲者の遺族宅に嫌がらせの電話や電報などが相次いでいることが十五日、分かった。JR西日本に対する言動を非難する内容のほか、無言電話もあり、遺族側は「これ以上エスカレートするのが怖い」と地元警察に通報。兵庫県警は、悪質ないたずらとみて警戒を強めている。
事故で息子を失った男性は今月上旬、聞き覚えのない声の女性からの電話を受けた。
女性は、男性の親族らがJR西日本の社員に「JRに殺された」「この子に向かって謝って」と強く訴える様子をニュースで見たといい、「普段からそういう態度でいるから、息子が事故に遭ったのです」と話したという。「どちらさまですか」と問い掛けには答えず、一方的に電話を切ったという。
男性宅には同じころ、意味不明の言葉を並べたり、「ばか野郎」「あほう」などと書かれた電報が三通届いた。男性は「いろんな考えの人がいるのは分かるが、この苦しみや怒りをどうすればいいというのか」と話す。
兵庫県警は、各警察署に設けている被害者対策の窓口が対応。この男性以外にも、遺族を中傷する内容のはがきや電報が送りつけられる被害があったという。
明石市の歩道橋事故で二男を亡くした神戸市垂水区の下村誠治さん(46)は「私たちも嫌がらせの電話や手紙を受けたが、そういう人には何を言っても通じない。一方で、献花台に花を供えたり、励ましの手紙をくれる人がおり、こうした人たちを大切にしようと考えてきた。私たちの経験からできることがあれば協力したい」と話している。
また、JR西日本によると、遺族に見覚えのない犠牲者名あての請求書が届くケースが確認されているという。同社は「安易に支払いに応じないよう、十日から口頭で注意を呼びかけている」としている。
犠牲者名簿がネットや新聞紙上に出た。それを悪用して、住所や電話番号を割り出し、嫌がらせの電話や電報を送ってきているのだ。いろんなツテを用いて、たぐり寄せることは可能だろう。嫌がらせだけでなく
振り込め詐欺
の恰好の標的にもなっている。
事故直後に遺族に取材を掛けるから、こういうことが起きる。遺族は、まだ最愛の家族を失ったことを受容できない段階で、混乱している。それに乗じて、マスコミ取材陣が遺族を煽り、「イイ絵」を撮り、編集して何度も流す。遺族にとっては、ある一瞬の言動が、繰り返し放映されることで、視聴者に強い印象を与える。まるでその遺族が、そういう強い言葉や感情の持ち主であるように見えてくるのだ。
これは報道被害だ。責任を取るべきなのは、遺族なのではなく、無責任に興味本位の映像を流し続けたマスコミ側にある。そして、亡くなられた方、ケガをされた方の名前と住所をネットや画面、紙面に個人情報を晒したマスコミは、こうした被害について、どう考えるのか? 新潟県中越地震でも、NHKが個人情報を垂れ流し、それが振り込め詐欺に材料を与えた。何度も同じことをしているのに、何故善後策を取れないのか? 結局は
流したら流した者勝ち
というマスコミの構造が齎らした被害であり、そのことを検証も反省もしないマスコミの倫理の問題だ。盗用したTBSの部長や記者会見で追い込みを掛けた記者の名は、マスメディアでは明かされることがなかった。身内の個人情報はきっちり守り、一般市民の個人情報は好き勝手に垂れ流す。このダブルスタンダードが糺されない限り、報道被害は続くだろう。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント