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2005-05-08

高松塚古墳壁画保存問題の謎

反日デモやJR宝塚線脱線事故などがあって、書くのがのびのびになってたのだが、高松塚古墳壁画保存問題が、ヘンなことになっている。文化庁が、前代未聞の
 石室解体→移管保存
を考えているのだ。これまでの文化庁の
 現場保存
というポリシーからは著しく懸隔がある案なのに、なぜか急ぎそちらの方面に行こうとしている。何が起きてるのだろう。

解体案が出されたのは、4/19の国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会の作業部会だった。


解体、方向固まる-高松塚石室-作業部会が意見集約

  劣化が激しい高松塚古墳(奈良県明日香村)の壁画の保存対策をめぐり、文化庁の「国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会」の作業部会が19日、東京文化財研究所で開かれ、「壁画が描かれた石室を解体する以外に保存方法はない」との意見をとりまとめた。5月にも開かれる検討会で最終的に判断されるが、作業部会は同庁から具体案の検討を任されており、石室解体が事実上、固まった。
  作業部会(座長=石崎武志・東京文化財研究所保存科学部長、13人)は考古学、保存科学、生物科学などの専門家らで構成。

1. 現在の方法で対応
2. 墳丘全体を外気から遮断して管理
3. 石室のみの限定管理
4. 壁画のはぎ取り
5. 石室解体で壁画取り出し
-5案について議論した。
  石崎座長らによると、石室内でのカビの発生や虫の侵入を防げるか、温度・湿度を適正に管理できるかなどを検討した結果、現地での保存を続けるのは難しいと判断。壁画の下地のしっくいの状態が悪いことから、キトラ古墳で実施しているようなはぎ取りも困難で、石室ごと壁画を取り出して修復・保存するしか選択肢はないとの意見が大勢を占めたという。 
  ただ、搬出に耐えられる強度が石室にあるか、壁画の損傷を防げるかなど、解体に向けて検討が必要な課題もある。
 文化庁の担当者は「議論が集約された。対策を急ぐ必要があり、次の検討会で結論が出ることを期待したい」と話した。
(4/20)


石室のみの限定管理は、経費がかかりすぎるというのだが、本当に解体・移管でいいのか。

実は、文化庁は妙にこの「解体・移管」に力を入れている。


高松塚古墳 文化庁、解体へ着々準備 専門外の委員加え合意急ぐ 石の移動 実験済み
 
  明日香村の高松塚古墳(特別史跡)の壁画(国宝)をめぐり、文化庁が壁画の描かれた石室の解体・搬出に向けて、水面下で着々と準備を進めていたことがわかった。今年初め、修復保存の検討会や作業部会に専門外の委員を新たに加えて意見の取りまとめを急ぎ、石室解体の簡単な実験もすでに実施。5月にも合意を得たい考えだ。だが、この間の議論の詳しい経緯や、壁画が劣化した原因は明らかになっていない。専門家からは「壁画を守るには解体やむなし」との声が聞かれる一方で、文化財行政への不信感も漏れてくる。

   (大脇和明、小滝ちひろ)

  壁画の激しい劣化が表面化したのは昨年6月。02年に撮影された「白虎」の写真を発掘直後の?年撮影のものと比べると、描線がぼやけて消えかかり、変色や退色も進んでいた。ほかの絵にもカビや変色が見られた。
  文化庁は2カ月後、劣化を認めて検討会に報告。対策の議論が始まったが、その中身がほとんど明らかにされないまま、石室解体案が急浮上した。
  具体案を検討する作業部会はこの2月、9人だった委員が?人に増員された。新たに加わった4人のうち3人は、銅鏡や縄文時代などが専門の考古学者で、高松塚古墳が造られた飛鳥時代は「門外」だ。
  同庁は「石室に侵入する虫やカビの状況を見極めるため増員した」と説明する。だが、網干善教・関西大名誉教授(考古学)は「壁画古墳が専門でない人を入れてどうするのか。最初から解体ありきで、現地保存の難しさを強調するための人選だったのではないか」と厳しい。
  作業部会の上部組織にあたる検討会もカビなどの専門家を加えて15人から24人になったが、やはり古墳壁画に詳しい人の増員は少ない。中心メンバーの一人は「議論を重ねた作業部会の案を検討会が覆すなんてできない。反対が出ないような布陣にしたんだろう」とみる。
  作業部会はすでに具体的な解体方法の検討も進めていた。関係者によると、滑車などを使って人力主体で石を移動する案があり、初歩的な実験も済ませたという。
  同庁によると、文化財保護法に従って国の文化審議会に「遺跡の原状変更」を諮問すれば、石室の解体は法的には可能だ。同庁幹部は「修理のための解体で遺跡破壊ではない。国宝建造物を解体修理することもある」と説明する。
  最大の難問は、もろい凝灰岩を15個組み合わせた石室と壁画を壊さずに動かせるかだ。
  石材業「飛鳥建設」(奈良市)の左野勝司社長は、88年の藤ノ木古墳(奈良県斑鳩町)の石棺調査で、1・5トンもある凝灰岩の棺のふたを滑車などを使って開けた。
  高松塚古墳については「石室の詳しい状況がわからないが」と断ったうえで、「慎重さが必要だが、成功の可能性はある。ただ、絵がある石の移動は経験がない。まずは保存科学で壁画を十分保護できるかが鍵」と話す。
  今も壁画劣化の原因は明らかにされていない。ある考古学者は現況を「薬害エイズ事件」になぞらえた。
  「良薬だというので使ったら被害者が出たのに、副作用情報がなかなか伝わらない。検討会は、情報公開しないまま解体に進んで責任逃れをしないでほしい」

発見前の環境 保てる施設を

 発見直後に高松塚古墳壁画を模写した日本画家平山郁夫さんの話 石室の解体は大手術。やむを得ないが、壁画を動かさなければならないのは残念だ。発見前の地中と同じ温度、湿度を保てる施設を古墳近くに造って修復、保存してほしい。乾燥すると絵の具が縮んで剥落(はくらく)する。
(4/22)


網干先生は
 絶対現地保存派
なので今は措くとしても、最初から解体するつもりでいたらしい、というのが透けて見える。
実際問題として、非常に薄い漆喰層しかない高松塚古墳壁画が、石をばらすことで、どういう影響を受けるか、文化庁は検証していない。
解体して壊しました、では話にならないのだ。ところが、この拙速ぶりは、
 壊しても構わない
という庁内の暗黙の合意があるのではないか、とすら疑われる。つまりは、
 すでに劣化してしまった高松塚古墳壁画が「石室解体」で破壊されても構わない
という頭があるのではないか。要するに
 文化行政のまずさの証人である高松塚古墳壁画を永遠に葬り去るための石室解体
ではないのか、とまで思ってしまう。

高松塚古墳の壁画に生じる黴の原因は、特定された。


「悪循環」を報告へ/高松塚古墳 カビ出現−駆除に出入り−高温で発生好条件

  壁画をむしばんだのはカビ、ダニ、人による「複合汚染」−−。奈良県明日香村の高松塚古墳の壁画劣化問題で、文化庁はこんな調査結果を11日、専門家による保存対策検討会に報告する。ダニが石室内にカビをばらまき、それを防ごうと人が出入りすることで温度が上がり、さらにカビが発生しやすくなるという悪循環。現状ではこれをくい止められないとの判断が、石室解体案を後押ししている。
  報告書によると、カビは72年の壁画発見当初からみられた。当初は薫蒸剤をシャーレに入れて石室内に置く対策が効果的だったが、やがて湿度が上がって薬剤が気化しなくなり、78年にカビが急増。82年、薫蒸剤を加熱蒸散させる方法を採用し、カビは減少した。
  しかし、01年春に石室入り口の外側天井部の強化工事をした直後にカビが大発生。殺菌のため人が石室内に入ると温度が上がり、新たなカビが繁殖する悪循環に陥った。
  石室内の温度は、壁画発見翌年の73年に最高?度台だったが、00年ごろには19度を超えた。04年夏には温度上昇に伴ってダニが発生。ダニはカビを食べる一方で、石室内を動き回ってカビをまき散らし、双方の繁殖が進んだ。
  調査を担当した生物学者3人は「現行の保存方法ではカビ抑止は期待できない」「石室を取り出して修復するのが最良」と一致した意見を提出した。さらに、昨年の墳丘発掘調査で、過去の大地震によるとみられる地割れが多数見つかったことから、同庁は「今後起きる大地震への対策も急務」として、現状保存の難しさを強調している。
  一方、石室解体案には検討会のメンバーから異論も出ている。ある考古学者は「特別史跡である古墳への影響を考えるべきだ」と語る。環境学の専門家らも「急いで解体する必要はない。劣化対策で何が不十分だったのかをもっと検証すべきだ」と指摘している。
(5/6)


石室にヒトが出入りする限り、黴は防げない、というのが文化庁の見解だ。

で、ただ今「石室解体」に向けて、文化庁は着々と準備中。


高松塚古墳 石室の岩 挟んで移動 文化庁案 解体1、2月頃

  特別史跡・高松塚古墳(奈良県明日香村)の国宝壁画の劣化問題をめぐり、文化庁が壁画の修復・保存のために検討している石室解体の手順案が明らかになった。墳丘の土を取り除いた後、石室を構成する15枚の凝灰岩を一つずつ特製の器具で挟み込むなどして取り出し、温度や湿度を管理した施設で修復する。作業時期は気温が低くカビなどの影響を受けにくい1、2月ごろを選ぶ。修復後は現地に戻して復元することも想定している。11日に東京で開かれる専門家の恒久保存対策検討会に提案する。
  手順案は、
1. 壁画が描かれたしっくいの剥落(はくらく)を防止
2. 石のつなぎ目でしっくいを切り離す
3. 天井石(4枚)をコの字形の器具で挟んで少し持ち上げ、下に木製の保護材を入れて器具と固定させて移動
4. 壁石(東西各3枚、南北各1枚)をL字形の器具で持ち上げ、天井石と同様に移動
−−との内容。解体した石は脱酸素剤などと一緒に密封してカビの発生を防ぎ、温度や湿度を管理できる施設に運んで殺菌、修復する。
  ただ同庁は、解体作業中の壁画の保護方法などに「詳しい検討が必要」としている。
  同庁はほかに、「石室の周りに金属パイプや鋼板を入れ、水が浸入しやすい地盤から切り離して保存」「壁画のはぎ取り」などの案も示すが、いずれも経済的負担の大きさや技術的な問題を理由に消極的だ。
  一方、現状での緊急対策として、冷気を通す金属パイプを石室周辺に埋め、石室内の温度を下げてカビの発生を防ぐ案を検討。パイプ数十本を石室の上下に埋設すると、石室内の温度は現在の約20度から10度以下まで下げられるとみている。
(5/6)


石室冷却は必要だと思うが、
 「石室の周りに金属パイプや鋼板を入れ、水が浸入しやすい地盤から切り離して保存」
は、まだ検討の余地がある。

一度破壊されれば、二度と壁画は元に戻らない。拙劣なやり方ではなく、もっと広く議論をして、技術を集め、最も高松塚古墳壁画保存によい方法を取るのが、文化庁が進めるべき施策だ。
今のやり方は
 役人の不作為を「石室解体という名の破壊」で永遠に葬り去る
としか映らないのだが。

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