病草紙を読む
今日は大阪にある武田薬品の杏雨書屋で開かれた講演会に行ってきた。
http://www.takeda-sci.or.jp/pages/library/
武田薬品は、実は漢方にも力を入れているし、古い医学史資料を収集している。医学書も数多く所蔵しているが、医学書だけではなく、貴重書にはすばらしいものがある。
研究者のみに公開されているが、さすがに国宝はなかなか見せてもらえない。学部時代、段玉裁『説文解字注』の授業に出ていたので、よく
武田が持ってる『説文解字』の唐写本
の話が出た。「雨が降ってると見せてもらえない」んだとか。
このあたりの話は、以下に詳しい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/説文解字
で、そんな杏雨書屋なのだが、たまたま研究会のご縁で、今日まで開催されていた
第44回 杏雨書屋特別展示会 「病草紙と医家の描いた絵」
に合わせて行われた、西山良平京大大学院教授と京都国立博物館の若杉準治氏の講演
杏雨書屋 第15回研究会
を聞くことが出来た。杏雨書屋の持っているのは、「大館本(関戸本)」の模本が中心だ。
西山教授 「病草紙」の平安京
「病草紙」の画像から、院政期の京都の様子を読み解く。
特に問題となるのは
烏帽子をつけている男と僧形の男の差
で、
病により、「病人」ではなく差別される側に変化するその基準は何か
を、「病草紙」は画像で表現する古い例である。中世の被差別民の嚆矢が「病草紙」の
僧形の男
に現れてるのではないか、という考察。具体的には
身体の変形が差別の指標になるようだが、その境界がどこにあるかが判然としない
という話。
他には
高下駄はトイレで用を足すときに使った履き物
だそうだ。「病草紙」で高下駄を履いていると、大抵、排泄シーンであり、排泄シーンの横には
排泄物を餌としていた犬
が一緒に描かれている。
若杉準治氏 病草紙について
「病草紙」は、平安時代後期に製作された絵巻物だが、主に「奇妙な病気」を集めている。
詞書きは
1. 病気紹介
2. 場所を明示して病気紹介
3. 時間を明示して病気紹介
4. 場所も時間も明示して病気紹介
の四種類に分かれる。
画像の方は
1. 病者のみを描く
2. 病者と観察者を描く
3. 病者と看護者を描く
4. 病者を含み、一つの空間を構成する
という四種類ある。詞書きと画像のそれぞれの種類が対応しているわけではない。
恐らく、「餓鬼草紙」の画像と比較すると、この「病草紙」は、後白河院が個人的に作らせたもので、「餓鬼草紙」の絵師と「病草紙」の絵師は重なるだろう。当時、この絵巻はあくまでプライベートで楽しむモノで、
六道輪廻に対応して「餓鬼」「地獄」「人=病」草紙が作られた
というわけではなさそうだ。
京都国立博物館所蔵の「病草紙」「餓鬼草紙」は、京都国立博物館のサイトから見ることができる
収蔵品データベース(→「病草紙」で検索すると細かく出てくる)
http://www.kyohaku.go.jp/jp/syuzou/index.html
国宝餓鬼草紙
http://www3.kyohaku.go.jp/cgi-bin/list.cgi?gazo_no=1&mz_synm=0000000706&name1=%B2%EE%B5%B4%C1%F0%BB%E6&limit_no=0
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