中国は「世界の工場」ではなくなりつつある
"Made in China"が周りに溢れている。
豊富な人材、安い賃金。それが中国の魅力だと言われていた。
しかし、ここへ来て、人民元切り上げ圧力があり、反日暴動が起きた。鳥インフルエンザなどの衛生面のリスクもないとはいえない。
実際、中国は「世界の工場」ではなくなりつつある、という分析が出た。人手が足りない、賃金が高騰している、税制上のメリットもなくなっている、というのだ。
【チャイナリスクに勝つ】 第9回---中国依存からの脱却 005/06/02 18:00(略)
こうした見直し作業の過程で,ユニデンは「中国生産のメリットは次第に小さくなりつつある」ことに気付いたという。同社は1990年代の前半に中国のシンセンに現地工場を設立した。その理由は「低い人件費と豊富な労働人口という利点があったから」(同社)だ。ところが,その利点は「この10年で随分変わってしまった」と同社は感じている。
ユニデンは次のように説明する。「低コストを求めて,世界中の外資系企業が大量にシンセンに進出してきた。その結果,次第にコストが上昇していった。例えば人件費は,当社が進出した1992年当時は月収で8000円だった。だが,今では月収が1万8000円と2.25倍にまで上がっている。その最も大きな原因は,人手不足にある。当社が進出した当時は作業員を募集すればその5〜6倍の応募があったものだが,今や紹介所を介してもなかなか作業員が入ってこない。その影響から,当社の中国現地工場は生産能力の増減に柔軟に対応しにくくなっている。少し前まで『中国は内陸部から無尽蔵に人が供給されるから,いつまでも低コストが続く』とあれほど喧伝されたのは,一体何だったのか」。
それだけではない。税金の優遇のメリットも消えつつあるのだ。「当社が進出した場所は経済特区で,外資系企業の投資に対して税金が優遇されていた。しかし,10年を経過して,その利点は薄まってきた」(同社)。日系メーカーの中国現地工場での豊富な経験を持つ遠藤健治氏も税金に関してこう指摘する。「中国の経済特区では,外資系企業にトータルで5年間の優遇税制が施される。だが,利益が上がると税率は高くなる。利益が上がらなければ,理論的には税金の減免期間は延びるはずなのだが,実際には最初の2年間は税金がゼロでも,中国の地方政府が3年目には無理矢理にでも利益が上がっているようにさせて,しっかりと税金を取っていくと嘆く日系メーカーは多い」。
つまり,ユニデンが「脱中国依存」を急ぐのは,反日デモなどによる生産停止の再発を恐れるためだけではない。中・長期的な視点から,中国現地工場のコスト競争力が薄れていくことを認識し始めたからでもあるのだ。「実際,多くの中国人は『もはや中国は世界の工場ではない』と思っている。世界の工場とは,低賃金の人海戦術を武器に先進各国の工場を中国に集め,そこで製品を安く組み立てて世界各地に輸送すること。だが,中国国民の多くが,今や低い人件費を生かして製品を造るというビジネスモデルで外貨を稼ぐという時代は終わったと考えている。つまり,多くの先進国の企業と同じく,知恵で稼ぐビジネスモデルを目指す中国の現地企業が増えており,人件費は今後ますます高くなる可能性がある。その上,市場は大きくなっているし,インフラも整備されてきた。中国のコストは今後も上昇に向かうだろう」(ユニデン)。(次回に続く)
教育や経済の水準、政府との取り決めなどの点を勘案すると、すくなくとも深センあたりでの工場経営は、それほど利点があるものではなくなってきているようだ。情報の取り扱い、特にノウハウなどを勝手に盗んでいくという話は、中国進出が始まった初期の段階から言われているが、その点についても、リスクはあるだろう。
最高から最低まで、前近代と最先端が混沌としているのが、現在の中国だ。一筋縄ではいかない。
知り合いも、台湾では、生産拠点を中国から別な場所に移転しつつある、といっていた。同じ中国系同士でも、工場管理に苦労するのだ、という。だとすれば、民族の違う外国人の工場管理はもっとうまくいってないだろう。
トラブルにヒトを入れても、見合うくらいコストが低かった時期ならいざ知らず、中国の現在の賃金より低くても、もっとちゃんとした工程管理の出来る国や地域はある。
なにより、中国が自分の足で立ちたがっているのだから、従来と同じ経営感覚では無理だ。
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