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2005-06-05

中国医学の本を買う

昨日は研究会。今は『医心方』を読んでいる。巻一の『黄帝内経太素』の佚文のところから。
どういうわけか、手元には臺灣リプリントの安政の校本がある。これは、まだ学部生だった頃に、中哲の人たちが何人かで『医心方』と『本草経考証』の臺灣リプリントを買うからどうだ、と誘われて購ったものだ。その当時は、まさか『医心方』を勉強するとは思っていなかった。日本で『医心方』というと、医学書というより、房中書の部分に重きを置いているヒトが多いように思う。

『医心方』の「房内」は後の方の巻で、巻一は医学の心得というか、医学観というか、そうした中身が延々と書いてあるだけなので、エッチな好奇心で『医心方』を読みたいヒトには全く向いていない。てか、『医心方』の房内って、そんなに凄いことが書いてあるわけじゃないし。エッチ系の興味で読むなら『カーマ・スートラ』の方をオススメする。

ついでに言っておくと、原文で『カーマ・スートラ』を読むのは手強い。これは印度学では常識で、たまに
 『カーマ・スートラ』が読みたいから
という不純な動機でサンスクリットを始めるヒトがいる。大体、初級で挫折するわけだが、専門に進んだとしても、3回生くらいの実力では辛いものがある。ま、ある種の工具書なので、テクニカル・タームが難しいのと、理念ではなく実践にまつわる話を、インド的修辞を凝らして書いてあるので、さらにわかりにくい、というわけだ。東大の原先生が集中講義でおいでになった時に『カーマ・スートラ』の話もなさっていたのだが、原先生曰く、
 索引というのは、何度も原文を読んで、原文を熟知した者がつかうものである
そうだ。その時、原先生は、
 いささか趣味の悪い文章ですが、少し勉強しましたので
と、『カーマ・スートラ』から引用した原文を自在に説明なさっていた。もちろん、最初からコンコーダンスを引くわたしのような怠け者には、及びもつかない高邁なお話なのである。印度学徒で、『カーマ・スートラ』を読んだことがない(通読ではなく、少なくとも手に取るくらいはする)という奴は、モグリである。中国学徒で『金瓶梅』を読む奴よりは、遥かに出現頻度が高いはずだ。

で、わたしの卒論は、実は仏教学なのに医学史的な内容だったことを昨日思い出した。卒論を書くために、『チャラカ』『スシュルタ』といったインド医学書をめくった。『スシュルタ』は大地原豊先生の父上の翻訳が臨川書店から影印版で出ていたので、高いけれども、泣きながら買った。もちろん、索引なんてついてないのだ。頭から最後までめくって、カードを取って、ご存命だった大地原先生に
 お父様の『スシュルタ』のカードを拝見したいのですが
とお願いして、見せて頂いたことがある。カード自体は、あっさりした内容で、わたしが見たい中身が全部書いてあったわけではなかったが、大地原先生は、ことのほかご機嫌で
 ほお、親爺の書いたものが、お役に立ちますか
と、紫煙をくゆらせながらおっしゃったことだった。
『チャラカ』に至っては、部分訳を矢野先生から頂いた。京大印度学では、医学史を研究するヒトが、十年か二十年に一人くらい出るのだが、なぜかみんな違う方向へ進む。矢野先生は天文学へ移られたし、後年、創価大にいらした岩本裕先生は、実は、『チャラカ』『スシュルタ』などインド医学の勉強をされていたのだが、空襲ですべてを失い、法華経の勉強に変わったように聞いている。矢野先生から頂いたのは、その岩本訳と矢野先生が訳された分だったと思う。それではもちろん足りなかったので、インドの本屋に注文して『チャラカ』の梵英対訳本を買った。インド本屋の常で、着いたのは卒論提出後だった。同じ本は文学部図書館にあったので、卒論を書いてる間はそれを使っていた。

そんなこんなで、インド医学の基礎的な書物は、少しだけ手元にあるし、仏教関係の医学的な内容ならば、どこを見ればどんなことが書いてあるか、少しだけならわかっている。『医心方』の『黄帝内経太素』佚文の後は、仏典の引用が続く。どうして仏教が日本に受け入れられたか。その謎を解く鍵でもある。

ともかくも、インド医学の書物はあっても、中国医学の本がないので、家に帰ってきて、googleで検索、幾つかの候補を絞り、インターネットで発注した。この頃は、中国語の古典を読むヒトが減ってるので、古書価格が暴落していてありがたい。日本の日本医学史関係の書籍は古本でも高いけれども、欲しいのは中国書なので、助かっている。
しかし、『黄帝内経』に足を突っ込むことになるとはなあ。

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