NHK クローズアップ現代 飛鳥美人は救えるか? 7/5 19:30-19:57
さて、
高松塚古墳壁画に黴が発生して、徐々に壁画が劣化していくのを「黙って」見ていた林温氏
が出演するというので、楽しみ半分危惧半分で見ていた、今日のクロ現。
大政翼賛にはならなかったが、文化庁を追求するところまではいかなかった、という出来だった。
国谷さんの突っ込みが、
林さんを糾弾はしなかったものの、結構辛辣
だったので、林さん、目が泳いでいた。
しかし、所詮は林さんも元文化庁のお役人、
専任で担当する人員が必要だった
というに及んで、
じゃ、あんたは「兼任」だったから、高松塚古墳壁画が黴びても、責任はないって言いたいわけ?
と、非常に腹立たしく感じた。ええかげんにせえよ、文化庁。一応、林温氏は
日本絵画研究の第一人者
ってステータスなんだけどさ。林温氏のかずかずの業績は
日本の美術 至文堂
のいろんな号で見ることができる。美学や国史のレポートでお世話になったことのあるヒトもいるはずだ。
今回は、NHK奈良局の「文化班」(といっても、特別な部署があるわけでなく、2002年のキトラ古墳再調査開始以降のチーム)担当だ。キトラ古墳と高松塚古墳は、時代も似通っていて、場所も明日香村、研究者も担当者もだぶっている。その中でも、取るべきヒトにインタビューは取っていて、実質25分の尺にちょうどいい量のVになっている。ちゃんと現地保存派の網干先生や、石室解体をあまりよく思ってないだろう百橋さんの発言を入れていた。
石室解体実験であった数々の問題点も、きちんと見せていたし、奈良の地元で腰を据えて取材した結果が出ていたと思う。
ただ、限界もあった。
石室解体の前提として、石室を形作っている凝灰岩が均質である、としているけど、1300年の時を経た石室の石材が、同じように「風化」しているとは思えない。おそらく、解体時に重機で引き上げる際、この
まだらな強度の石材
が、圧壊する可能性があるのではないか。また
漆喰が絶対に剥がれずに解体できるのか
というのも疑問だ。現在行われている解体実験は、
非常に恵まれた状態を想定して行われている実験
である、ということを、時期を見て文化庁は考えた方がイイ。もしくは
破壊せずに解体するのがベストだが、破壊してしまう可能性がある
ことをアナウンスする必要がある。
取材は高橋記者。高橋記者は、京大国史出身で、膨大な資料を上手に整理して、高松塚古墳30年の歴史を過不足なく組み立てていた。高橋記者は、スタジオ内で林さんを気遣いながらも、今回の
高松塚古墳石室解体
が、文化庁の無策によるものであることを、はっきり示していた。
ところで、林さん、なんで出てくるかな〜。今回出演を受諾した時点で、自分がのこのこ出て行くのがアウトだと判断できなかったんだろうな〜。世の中の批判の一部は、少なくとも
高松塚古墳壁画を目視できる唯一のヒトでありながら、劣化に見て見ぬふりをして国民に説明せず、昨年の写真集出版でコトが明るみに出ると、「経年劣化はある」と言い放ち、今回は「石室解体はやむを得ない」と首切り役人を買って出た張本人
を許してはいないよ。責任は文化庁にあるにしても
現場にいたのは林さんだろ!
とみんな(関係者を含めて)思ってるわけで。普通は、この出演は断ると思うんだけどな。それとも
説明責任を果たしたい
という気持ちですか?林さん。本人にゆっくり聞いてみたいところではある。
国谷さんは、石室解体が密室で決まった、というのを唖然として聞かされた普通の人たちの思いを代弁していた。たぶん、国谷さんだって
なぜ急に解体?
と思ってる筈だ。最後まで、
なんか納得いかないんだけど
という表情だったのが印象的だ。
で、クロ現は、改編のたびに
打ち切りが囁かれている
って話なんだけど、どうなんだろうねえ? 今年度一杯は大丈夫?
CGやセットについては、いつもながら
的確にCGを入れる
という処理の仕方だ。担当PDは、NHKの若手・中堅の中では、CGの扱いが格段にうまい。一応
高松塚古墳は外気遮断してます
というのを見せるために、各ドアのガラスも表現してたのは、たぶん担当PDのこだわりだろう。絵コンテを切って、CGデザイナーに指示を出せる数少ないPDだ。(てか、他のPDは
こんなんでやっておいてね
という、とってもいい加減な指示の出し方をするらしい。それを知ったときは卒倒した)
今回は
高松塚古墳の1/10の模型
もあったからなあ。で、模型は
NHKアートに発注
したのかな?
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