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2005-07-27

新書のレベルが下がるわけ

必要があって、30年ほど前の高松塚古墳関係の論文を集中的に読んでいる。そして気が付くことは
 いまなら新書一冊になる内容が、30頁ほどの論文になってまとめられている
ということだ。日本人の読む新書の中身はこの30年で限りなく薄くなり、水増しされている。
新書が次々創刊されて、書き手が奪い合いだそうだが、中には
 こんなものを出すのか
という内容もある。しかし、それが売れるということは、読み手自体も、
 簡単に騙されやすくなった
ということだろう。良心的な書き手は、新書を書き飛ばさない。出版社にとって都合の良い書き手とは
 仕事がとにかく速く、中身がわかりやすそうな書き手
である。わかりやすいというのはいいことなのだが、実は
 不正確になっている場合
が往々にしてある。上質の書き手であれば、
 難しいことを易しく書く
のだが、最近は
 間違っていることを、平気で書き散らかしている
ことが少なくない。一見、口当たりのいい新書にはそうした落とし穴がある。

マスコミも読書力が落ちていて、平気で
 新書で何かイイのありませんか?
と聞いてくる。これだけ新書ラッシュになると、新書に含まれているのは、ゴミが60%だと覚悟した方がイイ。残り40%からイイものを探すとなると、これはこれで大変だ。岩波が刊行をやめたヘンな新書があったけど、あれこそ
 やっつけ仕事で出版した新書
の最たる者で、NHK生活人新書くらいのいい加減さだった。NHK生活人新書は、編集者がダメらしく、内容が使えない。PHP新書も編集者がダメで、原稿の明かな誤りをチェックせずに平気で出版している。PHPはいろんなタイトルを出してるので、しょうがなく買うことがあるのだが、間違いが多いのは昔から変わらない。
以前は、中公新書と岩波新書がまあまともだったんだけど、最近はどうだろう。こちらも玉石混淆で、石の方が増えつつある印象を持っている。
いかんせん、新書は編集者がダメだと、話にならないのだけれど、新書担当って、どうもダメ編集者率が高いように思う。担当してる内容の基礎的な部分がチェックできないのでは、サギだろう。

実は、これは
 最近の研究者はヒトの論文をちゃんと読んでない
ということからも来ている。ワープロの発達で、論文生産量は増えたはずだが、肝心の中身はどうか。
自分の「新説」は、本当に新説なのか。すでに他人が発表したことを知らないで「新説」と言い切ってるだけじゃないのか。
このあたりの検証が緩い。
しかも、最近
 ある研究のサブセットみたいな研究で博士論文を書く例
が出てきた。すでにある程度の業績がある分野で、
 以前の業績を無視して、しかもその一部で博士論文を書く
わけで、普通は博論として認められないのだが、悲しいことに、現在の博士課程では、指導教官が忙しすぎて、論文チェックが出来ない場合があり、とんでもない博論が通ってたりする。

これは
 日本の図書館制度の欠陥
にも問題がある。ハーバードで修士を取った知り合いが言っていたけど、図書館司書に
 もし、あなたの論文が明日審査されるのだとしても、今日新しいあなたのテーマに関する論文が出ていたなら、それは読まなくてはいけない。
と指導されたという。そうした図書館を持たず、必要な情報を情報のプロである司書に頼れず、自分でかき集めている日本の文系研究はかなりレベルが下がりまくっている。このまま行くと
 修論=昔の卒論レベル
 博論=昔の修論レベル
だろう。そうした研究者が書く新書は、どうしても水増しが多い文章になるし、
 出版点数は多いが、つまらない本も多いので、本が売れなくなる
という悪循環をもたらしている。
面白い本というのは、ビジョンがはっきりしてるものだが、書き手も出版社も、行く手に悩んでいる。

昨日、再び読んで震撼したのは、この短い論文だ。
 佐竹昭広「古代日本語における色名の性格」『萬葉集抜書』 岩波現代文庫所収
佐竹先生が28歳の時に書かれたものである。今の編集者なら、このテーマ一つで、一冊の新書を書かせるだろう。

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