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2005-08-12

祈り、働け 聖ベネディクトの教えに従う修道院のビール、世界のベスト100ビールに選ばれるも増産せず

そりゃ、無理だって。

修道院の修道士・修道女が働くのは、

 使徒職

として、神のみ旨に従って労働しているわけで、経済原理とは関係のないところで行われている。怠惰は信仰の敵だからだ。

ところが、よりによって、シトー会すなわちトラピスト修道院のビールが、世界のビールランキングベスト100の上位にランキングされてしまったために人気沸騰、出荷分完売という事態に。でも、当の修道院は

 増産はしない

と明言している。経済性は使徒職に先立つものではないからだ。


【お一人様2本まで】代引限定代引のみ販売 ベルギー最強!幻のビールウエストフレテレン(West...

ベルギーの修道院が醸造するビールが世界一に選ばれたが……
[ 2005年08月12日 10時49分 ]


REUTERS/Jeff J Mitchell

[ブリュッセル 11日 ロイター] ベルギーの修道院が醸造している有名なビールが、世界最高のビールに選出されたために、アッという間にソールドアウト、販売を中止せざるを得なくなった。

ベルギー西部のウェストフレーテレンにあるセント・シクストゥス修道院は、約30人のシトー修道会とトラピスト会の修道士の住居。修道士たちは隠遁し、祈りを捧げ、日常業務をこなし……そしてビールを醸造している。

ウェブサイト「RateBeer(www.ratebeer.com)」が6月に65カ国のビール愛飲家数千人を対象に行った調査によると、世界最高のビールに選ばれたのが同修道院が醸造している「ウェストフレーテレン12」だった。

しかし修道院の醸造能力は限られたもので、急増した需要に全く対処できなかった。

修道院に電話をかけると、留守番電話から「ビールがすべて売れてしまったので、店を閉めました」というメッセージが流れた。この電話、修道院では「ビール電話」と呼ばれているそうだ。

修道院は需要を満たすために醸造量を増やす意志はない。

修道院長はウェブサイトに「私たちは醸造家ではなく修道士なのです。修道士として生活できるようにビールを醸造しているだけなのです」と書いている。

マーク・ボデ修道士は地元紙「デ・モルゲン」に「外部の方々はなぜ、私たちが醸造量を増やさないのか理解してくれません。しかし、私たちにとって修道士としての生活が主で、醸造は二の次なのです」と語った。


上記、若干の事実誤認があるようだが、「ウェストフレーテレンの聖シクトゥス修道院」は、厳律シトー会つまりトラピスト修道院だ。この修道院の紹介



Welcome to the homepage of The Abbey of Saint Sixtus of Westvleteren, Flanders, Belgium.

Our abbey consists of some thirty Cistercian or Trappist monks. They try to lead a quiet and modest life, searching for God.

We are sure that a life of seclusion, prayer, manual labour and ascetism arouses questions. Therefore we want to tell something about our community and our way of life.

We hope that you will have one more question after visiting our website: the ultimate question, the question of God...




 Our abbey consists of some thirty Cistercian or Trappist monks.

とある"or"の訳し間違いだろう。シトー会って、その発足の昔から醸造を使徒職とする修道院があって、聖ベネディクトの教え

 祈り、働け

を信条として苛酷な労働の末に、若くして帰天する修道士が多かったところである。


ビールファンの気まぐれな注文殺到に対して、修道院長は、次のようにサイト上で答えている。



Brewing to live


"As every man we must be able to live. So we have to try to earn our living and let others share in what we have to abstain from. Indeed, we have to live 'from' and 'with' our brewery. But we do not live 'for' our brewery. This must be strange for business people and difficult to understand that we do not exploit our commercial assets as much as we can. We are no brewers. We are monks. We brew beer to be able to afford being monks."

Father abbot

(on the occasion of the consecration of the new brewery)


醸造に携わる修道士達の画像

http://www.sintsixtus.be/foto/brouwen.jpg


この「聖シクトゥス修道院」に実際にビールを買いに行ったヒトの旅行記がある。

 St. Sixtus Abdij

http://www.kenmochi.com/beer/tour/sixtus.html

上記によると、普段でもなかなか手に入らない少量生産・人気のあるビールだったようで、今回の人気投票はその希少性を更に煽ってしまったことになる。

罪深い世界のビールランキングは以下に。

http://www.ratebeer.com/Ratings/Beer/RateBeer-Best/2005/RB_RATEBEERBEST062005.htm



日本における厳律シトー会といえば、北海道の渡島当別にある

 灯台の聖母トラピスト大修道院

http://www3.ocn.ne.jp/~trappist/monac.html
が有名だろう・北海道の観光みやげ

 トラピスト修道院のクッキーやバター

は、使徒職の一環として製造されたものだ。


上記サイトの解説にもあるように

 「聖務日祷の時刻には、合図が聞こえるや否や、どのような仕事に携わっていても即座にこれを差し置き、急いで集合しなければならない」(戒律43章)観想修道者の最大の務めは、一日に7回の祈りをささげることです。

という信仰生活を送りつつ、

 「怠慢は霊魂の敵である。われわれは師父たちや使徒の例にならって、みずからの手で労作し生活してこそ、まことの修道者といえるのである」(戒律48章)と聖ベネディクトは戒律の中で言っています。絶え間ない祈りの生活を続けていくためには、自分たちの働きで生計を維持し、同時に精神的、肉体的健康を保っていく必要があります。修道者たちは毎日数時間を労働にあて、互いに健康と技能を分かち合い、責任を分担しあって共同体の運営に寄与しています。

労働を行っているのが、世界中のトラピスト修道院、ということだろう。
 人気が出たから、ビールを増産する。あるいは外部に醸造を委託する

という発想は「使徒職」という観点からは存在しない。


続き。
第二次世界大戦後から1992年までは

 St.Sixtus

という名前で他の醸造所にビールをライセンス生産させていたという。

幻となってしまった、聖シクトゥス修道院のビールは以下で見られる。
http://www.kenmochi.com/beer/proven/westvleteren.html

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