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2005-09-19

番組制作会社の労働条件は悲惨

テレビ番組を支えているのは、実は局ではなく
 番組制作会社
である。NHKのNスペだって、全部が全部本局で作ってるわけじゃない。エンドロールを見れば、NHK傘下の子会社が作ってる場合があるのだ。
で、制作会社の一番の下っ端は
 AD
である。民放でも制作で入るとまずはADだが、正社員はちゃんと昇進していく。制作会社の場合は、AD歴10年以上などというヒトがゴロゴロいる。で、こんなスレッドが2ちゃんねるの「テレビサロン」板には延々と立っていて、制作会社は
 人殺し産業
であることがよく分かる。現在のスレッドはコレ。
= 制作スタッフ 限定=〜製作会社はどこよ??♯2

そんな分かり切っているが、あまりヒトが知らないタコ部屋労働の一端を、なぜか東京新聞が取り上げた。系列にキー局がないからだろうね、東京新聞。朝日・読売・毎日・産経はそれぞれテレ朝・日テレ・TBS・フジとキー局を持っているから、絶対こんな記事は載せない。キー局の高給好待遇を支えてるのは、
 制作会社で奴隷以下の生活を強いられ、使い捨てられる、ADたち
がいてのお話。奴隷であるADがいなくなれば、キー局の番組は作れなくなる。そんなキー局が
 労働者の人権
なんて言うのは、ちゃんちゃらおかしいのだ。いつも制作会社を踏みつけているくせに。
まずは、実態からはかなり薄まった印象の東京新聞の記事を引用する。

TV危機 制作会社が人材難

 テレビ番組の大半は「制作会社」と呼ばれる中小企業が作っている。華やかなイメージのテレビ業界だが、番組を底辺で支える制作会社のアシスタントディレクター(AD)が、次々と辞める事態に歯止めがかからない。影響力が強いメディアとして繁栄を極めているように見えるテレビだが、多チャンネル化やインターネットなどのITメディア猛追のなか、深刻な問題を抱えている。 (宮崎美紀子)

■睡眠は2、3時間 給料手取り18万

 「睡眠時間は二、三時間だったが、体よりも精神的にギリギリの状態でトイレで泣いていた。むちゃな要求でもADは絶対に『できない』と言えない。テレビが好きだったのに、毎日ただ仕事をこなすだけで、本当は自分は何がやりたかったのかわからなくなった」

 二十一歳の女性ADは、かつて担当した情報番組の現場を振り返る。彼女は一年半で、この番組を辞めたが、他のADも続々と辞めたという。給料は手取りで十八万円強。家賃を払うといくらも残らないが、皮肉にも、お金を使う暇がないから貯金できたと笑う。

 ある三十代ディレクターには笑えない思い出がある。AD時代、深夜の街をビデオテープが入った重い紙袋を両手に提げて歩きながら「このまま車にはねられたら楽になれる」とぼやき、並んで歩く後輩に諭された。「やめときましょうよ。すぐに死ねないから痛いだけです」

 テレビ界に入ると最初に就くのがAD。弁当配りや、撮影現場での車両整理など、雑用全般を担当する。制作現場にはなくてはならない黒子だ。テレビ局の正社員もADを経験するが二、三年でプロデューサーやディレクターに昇格する。

 しかも年収一千万円を超える正社員に対し、制作会社は低い。十年でやっと一人前といわれる。

 「全日本テレビ番組製作社連盟」(ATP)が加盟社を対象に実施した「ADアンケート」では、正社員ADの年収は三百四十三万円(平均年齢二六・六歳)、契約ADは同三百一万円(同二六・四歳)。「労働時間が長い」「体力がもたない」と四人に一人が離職する。最も多い理由は「仕事内容が自分と合わない」。制作会社側も「制作費に余裕がなく、人材育成できない」と悩んでいた。

 ATPが合同で行う就職セミナーの参加者は今年、一気に三割減り、採用した人材も居着かない。人材難に危機感を持ったATPは先日、各界の有識者を集めてシンポジウムを開いた。

■求人のライバル IT企業が猛追

 楽天系のインターネットサイト「みんなの就職活動日記」の川上裕人・事業部長は「学生にとってメディアといえば新聞、テレビ局だけではない。先見の明のある学生は、ケータイもライブドアも楽天もメディアだと考えている。テレビ業界内だけが競争相手ではない」と指摘する。

 IT企業「インデックス」取締役の千田利史氏は、テレビ局からの受注中心で、ヒットが出ても制作会社に成功報酬が入らない産業構造を問題視し「成功の見返りがないと、若い人を吸引できない」と断言した。

 上智大学の音好宏助教授(メディア論)は「若い人は、今の不満をステージを変えることで何とかなると考える」と若者の離職率の高さを説明。学校教育と仕事現場の隔たりを指摘し、インターン制の大切さを訴えた。

■選択肢が広がり手軽に転職可能

 作家の重松清氏は、さまざまな撮影現場に足を運んだ経験から「ADは本当に大変な仕事。耐えさせるには、その先にある夢を見せないといけない」と話した。また「映像制作が特権的な仕事だった昔は、奥義があり、そこへ向かって修業しろといえたが、今はビデオカメラが家庭にあり、高校生でも上手な映像を作る。先輩が一子相伝のようにもったいぶって、『一生懸命働け』とは言えない」と制作会社に意識改革を求めた。若者の気質については「いじめ問題とともに思春期を送った今のAD世代は、敏感でもろい。ずぶとい団塊の世代が自分たちと同じだと思ってはいけない」と説いた。

 制作会社の人材不足は、「根性がない」「業界体質が古い」で片づく単純な問題ではない。学生は職について実践的に学ぶ場がないまま社会に出る。加えて将来の選択肢は多く、労働意識も変わり、合わなければ早々に見切りをつける。

■デジタル化余波 制作費しわ寄せ

 一方で、多チャンネル化で多くの良質番組が求められているが、テレビ局はデジタル化投資で制作費を削減し、しわ寄せが制作会社に集まる。免許事業のテレビ局に利益が集中し、数百社ある制作会社は力関係を逆転させる術(すべ)を持たない。

 制作会社「PDS」社長で、ATP理事長の工藤英博氏は「俳優、タレントが偉くなって、目標になる花形プロデューサー、花形ディレクターの存在が希薄になった。視聴率を上げるために一握りの人気タレントに頼り、若い人たちのやる気を奪ってきたことは反省しなくてはいけない」と率直に話す。

 同副理事長の高村裕氏は「本当にテレビをやりたいという人が少ない。人に接する仕事が苦手な人が増えている」と嘆く一方で、「テレビ局も制作会社も現状維持でやってきた。そんな業界に若い人は魅力を感じないだろう」と反省する。

 放送ジャーナリストの小田桐誠氏は「テレビ局でも、きつい制作や報道現場に行きたがらない社員が増えているが、まして制作会社は待遇が厳しい。どんどん制作費が減り、先の見通しがなくなっている。頑張れば報われた昔は貧乏自慢が武勇伝になったが、今は笑い話にもならない」と業界の閉塞(へいそく)感を指摘する。

 打開策について「テレビ制作を志す人のすそ野を広げることが重要だ」と指摘するのは、放送評論家の志賀信夫氏だ。

 「国は大学の映像学科で学ぶ人にもっと実習の場を与えてほしい。視聴者の意識改革も必要。『テレビは見るもの』ではなく『作るもの、主張するもの』という考えに変わらないと、いい番組は出てこない。テレビと社会のかかわり全体を変える必要がある」

 メディア事情に詳しい「オフィスN」代表の西正氏は制作会社に発想の転換を促す。

 「テレビだけを相手にせずに、通信系の会社と組んで制作会社がオリジナルのソフトを作ることを考えてみればいい。通信会社は高い金を出してハリウッド映画の権利を買っているが、その何分の一かで十分な番組が作れる。通信会社は映像の素人、制作会社は上下関係なく仕事ができる」

 制作現場の人材不足は今は業界内の問題だが、やがてテレビ文化の衰退につながる。小田桐氏は、こう警告する。

 「もう制作会社だけでは劇的な解決策はない。この問題は随分前からいわれていたが、行き着くところまで行って、今や何から手を付ければいいのかわからない状態。テレビ局もスポンサーも十分な制作費を出さないと、結局は番組の質の低下として自分たちに返ってくることを自覚すべきだ」


こんなひどい労働条件下の制作会社でも、従来はヒトが集まっていたのには理由がある。
 人材募集に学歴不問のことが多い→キー局は、もの凄い競争率で、強力なコネとある程度の学歴が必要
 テレビの仕事に憧れを持っている→制作会社の実態はあまり知られてないから、簡単に若者をダマせる
ま、映画産業や音楽産業の
 下っ端から、監督やミュージシャンへ
というのと同じで、そんな構造はとっくに崩壊している。もう10年くらい前だったかなあ、知り合いのミュージシャンが
 坊や伝説は崩壊したので、この頃は坊やのなり手がいない
と嘆いていた。坊やとは、ミュージシャンの手足となって働く若い下っ端の総称で、昔は
 坊やから、有名ミュージシャンへ
というのが、伝説として存在して
 ミュージシャンになりたい若者をダマし続けてきた
のだが、その幻想が崩れたのが10年以上前のこと。
映画産業の方は
 助監督から名監督へ
というのが、これまた伝説としてあったのだが、ここまでビデオが普及すると、
 最初から監督デビュー
だからな〜。大学の友達が某映画会社の助監督の試験を受ける、と言ったときに、テレビの仕事をしていた伯父が
 やめとけ! 京大の美学出の助監督なんて、いじめられるだけだ
とえらく憤慨していた。テレビの草創期は、映画産業から、今一な人材が流出して来たのが本当のところで、現場は
 映画並みの体育会系・徒弟制
だったのだが、その体質は、今も番組制作会社に受け継がれているらしい。
で、番組制作会社って相当いい加減、と思ったのは、わたしが東京の伯父の職場に遊びに行ったとき。
 お前でも、いまからこの仕事に入れば、すぐディレクターだなあ
という伯父の言葉を聞いて
 テレビってほんといい加減に番組作ってるのね
としみじみ思った。制作にたいそうなヒトと金をつぎ込む、NHKのNスペは別として、日本のテレビ番組の大半は、
 ADの命と引き替えに作られている
のである。

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