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2005-12-04

学会シーズン 東大教授でも退官後の就職先に暗雲がたれ込める国史学 一方で漢文史料を用いて日本で学位を取る中国からの留学生

先週、今週と土日は学会。

先週は、土曜日が研究集会、日曜日は見学会で、三重県の主要な寺社を回り、資料として写真を撮った。

今週は、昨日今日と研究集会。

どちらも、古典系の学会だが、平均年齢が年々高くなる。

東大のある先生に伺ったところ

 いま、東大で外国語が出来たら、別な学科に行きます。古代史なんてまずやりません。

とのこと。東大でそうなら、よその大学は推して知るべし、だろう。

古典研究は

 時間が掛かって、儲からない上に、直接役には立たない学問領域

だから、年々講座が減っている。講座が減る、ということは、

 担当する教員の絶対数が減る

ということだから、

 古典研究者は、学位を取っても、大学教員としての就職先が見つかるかどうか分からない

のだ。一人前になるには、時間は掛かるんだけどね。そんなわけで、今や

 東大教授でも、退官後(正しくは停年後)は、次の職が見つからないかもしれない分野

である。

ま〜、コンピュータリテラシも必要だし、英語も出来れば尚いいだろうけど

 自国の歴史に関心がない

って国は、その内滅びるのではないか。本当に

 アメリカの51番目の州

になっちゃってもおかしくないくらい、日本の大学生は、国史には興味がないようだ。

今日も、とある有名国立大学の停年間近の先生が

 私立は一週間に四日とか五日とか出勤しないといけないんだよね〜

と、眉根に皺を寄せて、他の先生と相談をされていた。国立だと、週三日出勤が常識だったんだろうけど。出勤どころか

 高校にリクルートに行く

というのもアリですよ、先生。今まで優秀な学生諸君がさまざまな補佐をしてくれていたでしょうけど、これからは、そうはいかない可能性が高くなる。

二度のつとめを取るか、年金生活での悠々自適の研究の日々を取るか、今、日本の文系の先生方は岐路に立たされている。しかし、東大教授でも、次の口が簡単には見つからない、という話は、正直、ビックリした。ちょっと前なら
 東大教授の肩書きさえあれば、停年後の勤め先はよりどりみどり
だったんじゃないの?
東大でアウトなら、停年の早い国立大学の教員志望者は減るんじゃないのかなあ。日本の大学は、
 東大が時流の嚆矢
だし。
 東大で起きてることは、他の国立大学でも早晩起こる
ということだ。つまりは
 一部有名私大の国史学が栄えて、残りは減衰曲線を描きつつ、就職口がどんどんなくなる
ということですか。元々、史学系の就職は厳しかったのだが、現在は
 古代史は、担当教員が停年で辞めたら、後任補充なし
だそうだ。これまでは
 有名国立大学を60歳代で停年→私立大学へ二度目の就職→70歳で停年
というのが、大学教授の黄金パターンだったんだけど、それすら危ういのが人文系である。
優秀な人材は機を見るに敏だから、
 有名国立大学文系では、先行き怪しい古典学は見捨てられる
だろうな。20年後の日本は、しんどい国になっているだろう。

せっかく、最近
 日本の古代史の実像が徐々に明らかになるような発見が相次いでいる
のに、それを解釈し、研究する人材がいなくなってしまいそうな状況になりつつある。これが杞憂だとイイのだけど。古代史は
 漢文=中国語文語文で書かれている史料が多い
から、ヘタをすると
 将来、日本の古代史研究者は中国人が中心になる
なんてこともあり得るぞ。実際、
 最近、大学院の中国人留学生には、『古事記』『日本書紀』『万葉集』で学位を取ろうとしている学生が増えている
し。
 外国人の方が、熱心に勉強している状況
って、どうかと思いますがね。もっとも、
 中国人が古代史をやる主たる理由は、漢文史料で楽だから
なので、
 それはちゃうやろ
ということを、平気で発表してることがある。だって、中国人留学生は
 中文・中哲系などで記紀や万葉集研究
してたりするので、指導教官が日本古代史に暗かったりすると(中国学研究者が日本史に詳しいことはあまりない。中国の正史である二十四史は読んでも、日本の六国史は読まない)、
 きちんと指導出来ずに、恐ろしい博士論文を提出されてしまう
のである。心ある主任指導教官ならば
 古代史の先生を指導教官につける(普通は博論は複数指導体制)
だろうけど、もし
 日本古代史の専門家がいない大学
だったらどうなる? 今みたいに、古代史の講座をがんがん削ってると
 外国人による、トンデモ日本古代史が世界の常識になる
可能性が高くなるかもよ、文科省。
 日本の文化を世界に発信
するつもりならば、
 日本の文化を専攻する研究者を一定数は確保する
努力もしないとダメじゃないのか。たまに、中国の日本学研究のエライ人が
 日本の文化は中国文化の模倣である
なんてことを国際学会で口にするし、留学・客員先の高等研究機関でも、その立場を貫く。欧米人もそうした発表をすることがあるが、叩かれにくいのは、
 欧米人は英語などで海外の学会で発表するので、気づかれにくい
のである。
 日本語で中華思想を喧伝するだけ、中国の日本研究者はマシ
なのかもしれないが。

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