高松塚・キトラ古墳保存問題 渡邊座長辞任で済む話ではない (その2) 巧妙に隠蔽された「76年のムカデ侵入」
せっかく書いたエントリーをとばしてしまったので、書き直す。
キトラ古墳は壁画剥離に至るまでに紆余曲折が多すぎ、機を逸した。
高松塚古墳は、拙劣な根回しによって、あっという間に石室解体を決めた。
高松塚古墳石室解体が決まる経緯は以下のエントリーに詳しく書いた。
注目すべきはこのあたり。
2005/5/08
高松塚古墳壁画保存問題の謎
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/05/index.html
で、このエントリーで取り上げられているように、この時点で文化庁は
生物学者三人をフィーチャー、「黴が根絶できないのは、黴とダニの相互増幅説」
を出してきたのだった。フィーチャーされた生物学者にはお気の毒な話で
76年からムカデが石室に侵入していた事実
2001年に防護服を着ないで工事をして、黴の胞子が石室に入った可能性
を全く知らされずに、
2002年から石室にムカデが侵入、黴が増殖した
という「データ」を元に、学識経験者として招聘されてるわけで、客観的データでもなんでもないもので話をさせられたのを、最近まで知らなかったと思うと、大変悲しいことである。てか、この三人の
学問的業績に泥を塗るマネ
を文化庁がしたってことになりませんか?
文化庁が公表している検討会の記録によると、2004年8月10日に開かれた第二回検討会では
76年のムカデ侵入について、場所をぼかして報告
あたかも2002年に大量に虫が侵入して黴びたと報告
している。資料はコレだ。
国宝高松塚古墳壁画保存管理の経緯
昭和51年(1976)
12月15日〜24日
保存修理。パラロイドB72のほか、接着剤としてプライマルAC55及びエマルジョン(AC55に微量のアンモニアとプライマルASEを溶かしたもの)を天井部分に試用。
この時期、ムカデ等の虫類侵入がしばしばあり。取合部にカビが発生している。
つまり、
76年にムカデが侵入したことは書いてあるが、「どこに侵入したか」については明記されてない
のである。で、2002年の記述。
平成14年(2002)
10月27日〜11月1日
点検。
取合部と石槨内に複数種のカビの多量発生。
カビ:東壁 青龍の後方の汚濁部と女子群像下方に黒色の粘性の強いカビ。
西壁 白虎の下方(黒色で点状)。
石槨内にムカデやワラジムシの死骸が10匹余あり、カビに覆われているもの多し。10月28日〜31日
撮影。11月7日
点検。石槨内でムカデ・ワラジムシ・クモ・アリ等20匹前後。11月10日〜15日
点検。前回程度の虫の死骸を採取。壁面水分率調査。
これって明らかに
ミスリードを狙った報告書
じゃないのか?ちなみに、2005年5月11日に開かれた、石室解体へ向けての提案があった第三回の検討会には第二回の議事録要旨がアップされてるのだが、これを見る限り
虫について突っ込んでいる委員は誰もいない
のである。
出席メンバーは全委員24人中14人。
以後の経緯は以下のエントリーに。
2005/5/11
高松塚古墳壁画保存問題、今日のところは結論に至らず@5/11
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/05/511_6422.html
2005/5/12
高松塚古墳壁画保存問題で文化庁焦る 河合隼雄文化庁長官をフィーチャーするのはどうだ?
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/05/post_6420.html
2005/6/27
高松塚古墳解体 今日検討会で決まる
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/06/post_a0a1.html
この時が「第四回検討会」だった。議事録要旨は以下に。
http://www.bunka.go.jp/1hogo/pdf/takamatuduka_kentoukai5-1.pdf
高松塚古墳石室解体 毎日、「出来レース」と批判@6/25
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/06/625_6399.html
2005/7/20
「高松塚古墳壁画を石室から剥がせ!」 発見当時の72年に、フレスコ画の専門家が提言していたが、文化庁は無視した
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/07/72_1835.html
2005/9/09
高松塚古墳壁画、白虎画像に黒黴 完全除去は不可能
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/09/post_5404.html
2005/9/27
高松塚古墳壁画退色問題 誰がウソをついたか
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/09/post_ec6e.html
2005/10/03
高松塚古墳 点検日誌なし 信じられない杜撰な運用
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/10/post_cfad.html
2005/10/18
高松塚古墳で細菌による壁画損傷 キトラ古墳は壁画に穴 文化庁認める
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/10/post_b5a5.html
2006/2/09
文化庁の担当官の目は節穴か 九月に黴を見落とし、高松塚古墳の女子像の顔に黒黴のしみが拡がる
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2006/02/post_9c47.html
去年の5月からでも、これだけあるのだ。誰がどうやって文化庁の言い分を信じろと? それともわたしがペシミスティックすぎますか?
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