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2006-04-17

高松塚・キトラ古墳保存問題 渡邊座長辞任で済む話ではない

これを意図的な隠蔽と言わずして何と言う。高松塚・キトラ古墳保存問題を数年にわたって追っているこのblogだけれども、さすがに怒りを通り越して、あきれ果てている。ただただ、「役人の自己保身」が「文化財の保護」に優先されたことが悔しい。これが文化立国日本の現在なのか。

4/15付け毎日より。


高松塚古墳:壁画損傷こっそり補修、東文研所長が指示

 奈良県明日香村の高松塚古墳(7世紀末〜8世紀初め)で、作業中の文化庁や東京文化財研究所(東文研)の調査員が02年に国宝壁画を傷つけ、公表せずに補修していた問題で、補修が当時の東文研所長で、現在は文化庁の同古墳壁画恒久保存対策検討会座長を務める渡辺明義氏(70)の指示で行われていたことが14日分かった。補修にあたった複数の当事者が検討会のメンバーになっていることも分かり、関係者からは検討会の正当性を疑問視する声が上がっている。
 東文研は、文化財の保存と修復技術の調査研究をする独立行政法人の機関。高松塚古墳では美術などの専門家が傷んだ壁画の修復などにあたっている。
 指示は文化庁の内部資料、「高松塚古墳修理日誌カード」などから分かった。事故はこの年の1月に起き、その場で補修が行われたが、2カ月後の3月28日の日誌によると、渡辺氏は同日午前、現地を訪れ、「事故部分には周囲の土を殺菌して、水だけで溶いて塗付する」と方針を示した。作業は午後、その方針通り行われた
 渡辺氏を含め補修に当たった7人のうち4人が検討会(24人)の委員。【栗原俊雄】
毎日新聞 2006年4月15日 3時00分 (最終更新時間 4月15日 3時19分)


なんですか

 壁の土を水で溶いて塗っておけ

って、渡邊明義高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会座長自ら指示したというわけですか。で、

 渡邊座長が傷ついた壁画をこっそり補修させる

 その時の補修メンバーのうち渡邊氏を除く6人の内、3人が検討会委員

ってことですか? 結局、

 高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会のメンバーの1/6は、高松塚壁画が傷つけられていたことも、黴が生えていたことも、勝手に修復したことも知っていた上で、「石室解体」という結論を導いた

って話ですか。これは

 アンフェアな議論の仕方

だったんじゃないの? だって、石室解体に至る議論では

 石室内で黴が発生したのは原因不明

だった訳でしょ。今出てきてる話では、

 防護服を着ないで、石室のそばで作業をして、黴胞子を石室内に大量に流入させた可能性

が持ち上がっていて、しかもそれは

 作業日誌に書いてある

訳でしょ?

その顎がはずれるような驚きのニュースは4/13に朝日が抜いた。

高松塚古墳のカビ発生、防護服着ずに作業 01年工事
2006年04月13日06時07分

 奈良県明日香村の特別史跡・高松塚古墳で、文化庁が01年2月に墳丘土の崩落防止工事をした際、同庁のマニュアルに反し、工事関係者が防護服を着ないで作業したことが12日、わかった。

 古墳では、同年3月に石室外に大量のカビが確認され、12月に石室内でも大量に見つかった。文化庁の担当者は、01年4月作成の作業日誌で「(マニュアル違反があった)この作業が3月の石室外のカビ発生の原因であることは間違いない」と指摘していたが、壁画の劣化原因を究明する同庁の同古墳壁画恒久保存対策検討会には「対策が不十分だった」とだけ報告していた。

 同古墳には「高松塚古墳保存修理マニュアル」がある。古墳内の定期点検や工事などの際には、搬入物はすべてアルコールで滅菌。また古墳に入る時は、体を防護服で覆って雑菌などの持ち込みを防ぐことを決めている。

 だが作業日誌は「作業者は、頻繁に出入りする必要があったためか防護服を着ておらず、一般の作業着のまま作業をしている」と書いていた。

 文化庁美術学芸課は「カビの原因は検討会で議論したが、マニュアル通りに作業しなかったことまでは触れなかった。関係者に話を聞いて作業状況を調べたい」としている。


もう、ボロボロと
 隠蔽されていた重要な事実が明るみに出てる
わけで、作業日誌を精査すると、頭の痛い事実ばかりが並んでいる。

で、修復担当の東文研の2004年の報告書では、以下のように
 事実が隠蔽されている
のである。


高松塚古墳の微生物調査の歴史と方法

木川 りか・佐野 千絵・三浦 定俊

 平成12年ころから,石室手前,取り合い部の空間で,墳丘の植物の根の影響と考えられる取り合い部の天井部分の土の崩落や,雨が降ったあとの調査において取り合い部の天井部分より水がしたたっているような状況が報告され始めた。
 この状況を受け,平成13年2月に,取り合い部の盛り土部分の補強工事(補強,樹脂処置)が行なわれた。しかし,その工事の後,補強された擬土の部分や,土部分を中心にカビが発生した。


わたしが去年までに、高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会を取材した記者にしつこく確認したのは
・防護服はちゃんと着てたのか
ということだったんだが、その時点では
 絶対に防護服は着ていた
というのが、検討会からの回答だった。座長が隠してたんじゃないの?

なおかつ、上記の東文研の報告書で虫が初めて見つかったのは、平成14年だと記されている。


 平成14年10月の調査において,これまでとは,明らかに異なる状況が発生した。それは,石室内に多数のムカデ,アリ等の虫が生きたまま侵入していたこと,石室がこれまでより湿っているように感じられたこと,さらに石室内壁面にカビが原因と考えられる黒い痕が発見されたことである。しかし,既に黒色の原因となったと考えられるカビは採取時点で死んでいたため,この時点の培養検査では原因菌の正確な同定はできなかった。
 このとき,カビのみならず,多数の虫が石室内に侵入していたことを受け,墳丘の枯木の処置や雨水対策が緊急にとられた。その対策については,文化庁の報告に詳細が述べられている。

 
ところが、ムカデは76年には、石室内で確認され、壁画の劣化、とくに褪色に影響したと思われる殺虫剤を撒いて殺しているのだ。この事実は、上記の報告書には全く触れられてない。
4/14付け朝日より。

76年当初から石室内に虫、カビ増殖の要因か 高松塚
2006年04月14日

 奈良県明日香村の特別史跡・高松塚古墳で、文化庁の保存修理が始まった76年当初から、国宝の壁画が描かれている石室内にムカデなどの虫がいることを同庁の修理担当者が作業日誌に克明に記録していたことが13日、わかった。専門家は「虫がカビをまき散らし、さらに死骸(しがい)がカビの栄養になるなど汚染要因になった可能性がある」と指摘しており、有効な手だてを打てなかった同庁の管理が改めて問われそうだ。

 「ムカデ2匹有り(既に死)」。虫生息の記録は、作業日誌1冊目の1ページ目(76年9月27日)からいきなり始まる。

 その後も描写は続く。「東壁と天井との境目をムカデがはっているのを発見 トリクレン(有機塩素系溶剤のトリクロロエチレン)を注射器でかけ即死」(同月28日)、「天井石の細い割れ目からムカデが身をよじり出すようにして出てきた」(10月1日)、「ムカデ1匹発見 隙間(すきま)に逃げ込む」(同月28日)。

 さらに「小さな虫捕らえる 今日3匹目」(10月3日)、「盗掘口壁下、西壁の隅 クモの巣を見る」(11月5日)、「クモの巣にからまったようなムカデ死ガイ見付け採取」(同月10日)などムカデ以外にも虫が入り込んでいた様子が記されていた。また、点検のたびに殺虫剤を噴霧したことも記録されていた。

 こうした中、翌年2月17日には「虫に対して無為」と、担当者の無力感が伝わる記述もある。虫の記録はその後も続いた。

 同庁が専門家に劣化原因の究明を委託した恒久保存対策検討会では05年、生物学者らが「石室内の温度が壁画の発見翌年の73年に最高17度台だったが、00年ごろには19度を超えた。04年夏には温度上昇に伴ってダニが発生。ダニはカビを食べる一方で、石室内を歩き回ってカビをまき散らし、双方の繁殖が進んだ」と、虫とカビの関係を指摘していた。

 本来、密閉状態のはずの石室の中に、なぜ虫が侵入したのか。専門家の間では「墳丘に生えた竹の根が腐った穴をたどった」「石壁と石壁のわずかなすき間から侵入した」などの説があるが、原因はわかっていない。


虫が最初からいたんじゃ、全然、これまでの議論が無意味じゃん。しかも、これも検討会を取材した記者にしつこいほど確認した
・ホルムアルデヒドとか塩素系とかの殺虫剤など撒いてないだろうな
について、
 褪色をうながすような薬剤は使用してない
という回答だったんだけど、全然違うじゃん。そりゃ
 密閉した石室内で塩素系の薬剤を撒けば、間違いなく褪色を引き起こす可能性が高い
ってば。ああ、ばかばかしい。これまでの
 検討会の回答で否定されていた事柄
って、結局は
 座長以下、修復・保存作業にあたった人員が「隠してた」だけ
の話で、わたしのような素人でも考え得る程度の
 イヤな予感がそのまんま的中
してる訳だ。保存科学の問題以前ですな、これは。

で、結局、渡邊座長は辞任に追い込まれた。朝日より。


高松塚古墳検討会の渡辺座長、辞任へ 未公表問題で引責
2006年04月16日10時22分

 奈良県明日香村の高松塚古墳(特別史跡)で、カビの大量発生の原因とみられる規定違反があったり、壁画を傷つけたりしていながら、文化庁が未公表にしてきた問題で、同古墳壁画恒久保存対策検討会の渡辺明義座長(70)が15日、座長と委員を辞任する意向を示した。一連の未公表問題の責任をとったとみられる。

 朝日新聞社が入手した作業日誌によると、01年2月から3月にかけて、工事関係者が規定に従わず、防護服を着ないで古墳内で作業したため、石室内にカビの大発生を招いた。規定違反は公表していなかった。

 また、02年1月28日には、石室内で作業中の文化庁や東京文化財研究所(東文研)の担当者らが国宝の壁画を傷つけた。2カ月後の3月28日、渡辺氏が同古墳に出向き、古墳内の土を殺菌して傷に塗りつけ、補修するよう指示していた。渡辺氏は当時東文研所長で、公表していなかった。

 渡辺氏は「当時は石室内のカビを食い止めることに全力を注いでいた。規定違反については報告を受けた記憶がない。壁画の傷については当面、目立たなくする処置を指示した。情報を公開する必要は感じていたが、対策検討会でも報告しなかったことは謝罪すべきだ」と話した。

 そのうえで渡辺氏は「石室解体による壁画の修復方針も決まり、以後は新しい体制で壁画を守ることが重要と考えた」と述べ、座長とともに委員も退く意向を示した。

 渡辺氏は、壁画の損傷が報道された後、文化庁に辞意を伝えたという。


最初に

 高松塚古墳の壁画損傷

を抜いたのはNHKで、NHKの中の人に

 いいニュースだったね

とメールしたら、

 文化庁を叩くのは本意ではないのですが

という返事が来た。たしかに、残念ながら、文科省内では、あまり重要なポストだとは思われてないらしいからな、文化庁。弱きを叩いてもしょうがないところはあるのだが、叩かれても今回は文句の言えない失態だ。それになあ、

 最初に解体ありき

で、高松塚の保存問題が話し合われてるのは間違いない。その検討会のメンバーの1/6は

 結論が出る前に、黴が出ていた本当の理由や、壁画を損傷させてこっそり直していたことを知っていながら隠蔽

して、そんな事実があったことをおくびにも出さず、他のメンバーと「討論」した上で結論を出させたわけで、

 日本の民主主義ってこの程度のレベルなのね

というのが、よくわかった素晴らしい出来事だ。だって、検討会メンバーの年齢構成って、

 輝かしい戦後民主主義教育の申し子世代中心

だからな。孫がいてもおかしくない年代のおじさんたちが中心だもの。

戦後60年、民主主義的な手続きは腐り果てているというのを、教育・文化を担う国の役所、文科省の下部組織・文化庁が自ら体現したわけで、これほど素晴らしい「啓蒙活動」はないだろう。

文化行政の中身は疲弊してるってことでしょうかね。少子高齢化がもの凄い勢いで進行している、これからの日本は
 文化財などのソフトで生き抜く他はない
のだけれども。この様子では
 1300年前の貴重な極彩色の壁画よりも、生きている役人のクビの方が大事
ってことなんでしょ?
(追記 14:00 奈良博からアクセスありがとうございます。わたしのような素人の記事がお目にとまったとは光栄ですが、奈良博に参観に行っても意地悪しないでくださいね。)

おまけ。文化庁の評判。文部科学省14スレッドより。

98 :非公開@個人情報保護のため :2006/04/12(水) 19:00:20
文化財を自分たちで破壊して、 その修理を自分たちで行う。 経費はすべて税金。

一生食っていけるマッチポンプ
文化庁

105 :非公開@個人情報保護のため :2006/04/12(水) 21:02:58
>>98
他局から来ると感じるんだけど、文化庁の体質ってヌ
ルいんだよね。

危機管理意識に乏しいというかさ。
昔の役所って感じ。

115 :非公開@個人情報保護のため :2006/04/13(木) 08:15:25
美術学芸課長って、つい最近文化財技官から事務官にかわったんだよね。
その途端に発覚って・・・。

116 :非公開@個人情報保護のため :2006/04/13(木) 09:50:48
>>115 技官にはまともな人間が少なからずいるってことの証左。
彼らは事務官の悪行三昧にいつも義憤をもって雌伏していた。
技官こそがこれからの霞ヶ関の希望の星。

117 :非公開@個人情報保護のため :2006/04/13(木) 09:53:52
むしろ逆だろ!
技官だったから4年間も隠してたのを、事務官になった途端に見つけられて、公表せよってことに
なったに決まってるだろ。

防衛施設庁の例といい、国土交通省の例といい、技官はロクなことしねえ。

118 :非公開@個人情報保護のため :2006/04/13(木) 15:34:35
まあケンカはよそうぜ
116さんは荒れるの狙ってらっしゃるのかしら。

119 :非公開@個人情報保護のため :2006/04/13(木) 20:34:11
>117 新聞にすっぱ抜かれ隠せなくなったからだろ。

120 :非公開@個人情報保護のため :2006/04/13(木) 20:43:27
>>117
組織を守ってこその官僚だろ?
ミスを公表して得する人間なんて一般国民含めてどこにも居ないんだよ

121 :非公開@個人情報保護のため :2006/04/13(木) 21:51:22
隠すという体質は旧文部に実は満ち溢れている。119の答えはその表れ。
隠して組織を守ると言う発想、まだまだ根深い。
私学部や施設部など金が動いている所、じつはまだまだ隠されたことが多い。。

124 :非公開@個人情報保護のため :2006/04/13(木) 23:15:52
>>121 119だけど、仮に壁画損傷のミスを犯した当人が正直に上司や幹部に報告し、公表されたとしたら
そいつは確実にスポイルされる。マスコミは当人や関係者を槍玉に上げる。当事者意識のない評論家の
攻撃に晒されるだけ。アメリカ流に司法免責のような制度を設け、でミスの原因解明に基づく対策考える
ようでないと、この種の問題は解決しないね。

127 :非公開@個人情報保護のため :2006/04/14(金) 00:43:16
>>105
大文化庁さまに御指導いただいている低底辺の法人のものですが、昨年
担当の係員さまがお変わりになられたら渉外一同たいへん負担が軽くなり
たいへん感激いたしております。ありがとうございました。
ずっと今の担当者様でお願い申し上げます。

129 :非公開@個人情報保護のため :2006/04/14(金) 01:38:12
>>124
ミスを犯した事以上に、
隠蔽した時点で、粛正の対象。

148 :非公開@個人情報保護のため :2006/04/16(日) 09:10:02
>>145
文化財部長(事務官)と当時の美術学芸課長(文化財技官)の対立だな。
報告したと主張しているのは当時の課長のはずだから。

道路公団の時と一緒の構図だな。

157 :非公開@個人情報保護のため :2006/04/16(日) 20:54:35
>>155 文化庁次長は次官コースだし著作権、記念物の経験者で幹部になった者も結構いる。
そして文化財部の事務官は自分の在任中に波風の立つようなことなく、トラブルが表面化
しないようにしておけばOK!。あと適当に概算要求のネタ考えておく。
ま、この役所、特に旧丸文系は自分の縄張りを如何に守り、何かトラブル発生したら教育
委員会や学校現場に責任を押し付けることにより自己保身を図り、自民党文教族の言いつ
けに従順に従い、教育ムラ以外の分野からの批判には耳を貸さないか粗探しやって対抗す
る、それがこの役所で優れたマネジメント能力とされる要件なんだからさ。


散々な言われようですね。

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