高松塚古墳壁画損傷問題 河合隼雄長官の「責任」と朝日新聞文化部
河合隼雄文化庁長官は、以前、京大教育学部にいた。学生部長をやっていた時期もある。その頃を知る人達は、
河合先生が文化財行政に興味があるとは思えない
と感じているし、本人が
『ウソツキクラブ短信』
という本をお書きのように
食えない、「ウソツキ」だ
と思っている。すくなくとも誠実な人物だ、という印象は薄い。
文化庁長官になって、高松塚壁画古墳の褪色が明らかになってからは、あらゆる取材を拒否し、逃げ回っていたが、前科がある。
学生部長時代、学生との交渉を嫌がって学内で逃げていた
のに、恩師が遭遇した。というか
○○先生、助けて〜
と、本部前にいらした恩師の後ろに隠れたらしい。ちょうどその直後が恩師の授業だったので、授業後に
先ほど河合学生部長がわたしの後ろに隠れましてね。追っかけてくる学生諸君との楯にするつもりだったようですが。
と笑いながら、暴露されていた。その事件以来、
面倒な問題は先送りするヒトなんだ
と思っている。
さて、文化庁にとって厳しい高松塚古墳壁画損傷問題についての報告書が月曜日に提出された。産経より。
文化庁長官ら謝罪、幹部ら4人処分 高松塚壁画剥落高松塚古墳(奈良県明日香村)の国宝壁画剥落(はくらく)事故などを検証する文化庁の調査委員会(委員長、石沢良昭・上智大学長)は19日、壁画管理で庁内の縦割り行政の問題点などを指摘した報告書を、河合隼雄長官に提出した。河合長官は「国民におわびしたい」と謝罪。小坂憲次文部科学相は同日、当時の文化庁幹部や担当者ら4人を減給や戒告などとする処分を発表した。
報告書は、壁画担当の同庁美術学芸課と壁画以外の古墳全体を管理する記念物課で情報が共有されておらず、対応の不手際の積み重ねが隠蔽(いんぺい)の印象を与えたこと、公表などを判断する当時の幹部の責任−などを指摘。壁画劣化を「人災」と示唆した。これを受けて同庁は、文化財保護法の抜本的見直しを含めた文化財行政の再検討を表明。文化財部長をトップとするワーキンググループを設置する意向を示した。
文科省と同庁は、湯山賢一・元美術学芸課長(現・奈良国立博物館長)を減給20%・1カ月▽林温・元同課主任文化財調査官(現・慶応大教授)を戒告▽木谷雅人・元文化財部長(現・京都大副学長)を訓告▽常盤豊・元記念物課長(現・文科省教育課程課長)を厳重注意−とする処分を発表。大臣の俸給全額、同庁長官は同20%、同庁次長は同10%(いずれも1カ月)を自主返納することを決めた。
委員会には河合長官が問題発覚以来初めて出席。「庁内に総合的に判断できる人がいなかった。報告書を再生の契機としたい」と釈明。進退について「信頼回復に全力をあげ職務に取り組みたい」とした。小坂文科相は「当時の文化庁の不適切な対応が国民不信につながった」と同庁の体質を批判した。
≪説明責任、不十分≫小坂憲次文部科学相との一問一答は以下の通り
−−処分の理由で「適切でなかった」こととは「本来報告すべき事項が上部に伝わっておらず、適切な処置が取れない原因にもなった。組織の長の責任を明らかにする必要がある」
−−文化庁の取り組みに対して文科省としては「文化庁の担当者といっても、すべての文化財についての知見は持っていないことを自覚してほしい」
−−報告書をみてどう感じたか「客観的に掘り下げた調査がされた。文化庁がしっかりとしたプロとして再生できるチャンスとして生かしてほしい」
−−壁画保存は客観的に失敗だったか「報告書で指摘された点は反省が必要。開封された古墳がどうなるか、事前に国民に説明する責任があったが、それが十分ではなかった」
−−今回は文化庁の組織上の問題だが、文科相の自主返納額が大きいのは「過去の事例も参考にしている。私としては責任を取った上で、文化庁への発言権を確保したいと考えた」
≪調査結果、厳しく受け止める≫河合隼雄文化庁長官との一問一答は以下の通り
「文化庁の意識、体質に問題があったという調査結果を厳しく受け止めている。長官として国民にお詫びしなければならないと思う」
−−この件で長官が公の場に出てきたのは初めてだと思うが「事実関係をしっかりふまえて話したい気持ちがあった。事実がはっきりしたので、これからは報道関係の方ともいくらでもお会いしたい。明日香村にもぜひ行ってお話させていただきたい」
−−文化庁が確かに変わった、というのを監視する機関はどうするか「チェック機能はまだできていないが、どんどん情報公開するので国民の皆さんが監視できると思う。監視のための機関をつくる考えはない」
−−壁画保存は客観的に失敗だったのかどうか「初めてのことで成功か失敗かというのは難しい。明らかな失敗、公務員としてしてはならないということはなかった」
−−壁画保存は文化庁の直轄では無理だという指摘もあったが「やはり責任は文化庁が取るべきだ」
(06/19 23:39)
すでに、国家公務員じゃないヒト達を「処分」してどれほどの意味があるかは謎だ。せいぜい
紫綬褒章や勲章などがもらいにくくなる
ってぐらい?
で、問題は、
河合隼雄長官は月曜日の報告書提出と謝罪会見まで約二年間、明日香村には足を踏み入れてなかった
ということなのだ。河合長官の自宅は以前は奈良市内にあったし(今もあるかもしれない)、この6/2には
奈良県立図書情報館でフルートコンサートを開催
http://www.library.pref.nara.jp/oshirase/20060504.html
しているのだ。この件については、以前書いた。
2006-06-13 平城遷都1300年事業と文化庁 なぜ6/2に河合長官は奈良県立図書情報館でフルートを吹いたか
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2006/06/130062_1576.html
ただ、この時、わたしは
関西出張という名目で文化庁から出張旅費も出ている筈だから、当然、県内の明日香村には出向いたんだろう
と楽観していたのだが事情は違った。
朝日新聞奈良版には
問題発覚後、河合長官は一度も明日香村に足を踏み入れてない
という明日香村関係者の怒りの声が掲載されている。
さて、河合長官は、
明日香村の人達の怒りに真摯に向き合うつもりがあるのか
どうか。
また、朝日新聞は、処分発表記事に
千田稔奈良県立図書情報館長(紙面では「国際日本文化研究センター教授」の肩書き)のコメント
を載せて
妥当な判断
としていたが、日文研(=国際日本文化研究センター)での関係を考えれば、千田先生が元上司の(国際日本文化研究センター所長だった)河合先生を公に批判することはあり得ない(たぶん、個人的にも親しい)わけで、
一見、識者の公平なコメントを装った、河合長官擁護の紙面作り
であることは疑いない。てか、6/2の
奈良県立図書情報館でのフルートコンサートは奈良県と朝日新聞が主催
したわけだから、河合長官も千田館長も
朝日新聞文化部のお仲間
ってことだ。
最近、朝日では、小滝ちひろ論説委員が、歴史関係のいい記事を書いていて、密かに応援してるんだけど、たぶん、
千田・河合ルートとはお友達
なんだろうな、と考えると、批判が鈍るのは当然か、と思っている。それとも、小滝論説委員が悪いんじゃなくて、親分の天野幸弘論説委員が
千田・河合ルート擁護の指令
を出してる? まあ、天野さんは、あのラインとは仲がいい筈だからな。
ともかくも、河合長官は、
長官を辞任しないんだから、文化庁の大改革を速やかに進める
ようお願いしたい。いくら俸給を返上しても、税金で
ご自慢の木管フルートや、金製フルート(18金か12金かは不明)によるフルートコンサートを始めとする、さまざまな活動
をなさってるわけで、その分は国に恩返しするつもりで働いていただきたいものだ。記者会見では、さすがにおやつれのご様子でしたが。もっとも、77歳なんだから、
晩節を汚さずに潔く勇退
というのも、一つの道なんだけどね。文化庁の後始末をしてご退官でしょうか。
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