不機嫌の理由
ここ数日、気分が悪い。なにか腹に据えかねることがあるのだが、その理由がわからない。
つらつら考えて、やっと思い当たった。
先日、話の成り行きで、敬愛する恩師にして大先輩を揶揄されたのだ。その時は、軽く流して、それ以上話が進まないようにしたのだけれども、そのことが胸の奥底に溜まっていたのである。
揶揄したのは、まったく違う専門のヒトで、要は外道(仏教学というか印度学以外の専攻のヒトのこと。たぶん印度学の方言。印度学はサンスクリット必修で、学部の間は、予習が間に合わないので、真面目な学生ならあまり寝る暇がない。そうした隔離された状況下では、他の専攻のヒトとは、どんどん話が通じなくなったりする。わたしは極めて不真面目だったので、予習もせずに寝ていた)なのだが、その恩師のちょっとした身振りを笑いの種にしたのだった。恩師は、勉強をしすぎて、片方の目の視力を早くに失っている。そういう努力をして、なおかつ、学生相手の講義の準備にも一切手を抜かない方だ。同じ研究室だったから、そうした事情をよく知っている。だからこそ、腹が立っているのだ、と気がついた。
そもそも、身体に障碍のある人物が、何か変わった身振りをするのは、身体的な機能の欠損のせいかもしれず、そうしたことを話題にするのさえ、はばかられる。
それが、常識だと思っていた。
恩師を揶揄した人物は、たぶん、そのことに思い至らなかったに違いない。悪気はないのだろうけれども、思いやりはないな。少なくとも、恩師の授業を受けていたのだったら、目を悪くされていることには、気がついているはずなのだ。
ちょっと悲しい気分になった。
| 固定リンク
コメント