中田英寿引退
96年アトランタ五輪でのマイアミの奇跡と、アマチュア出身者西野朗監督との軋轢。あれ以来、戦略からではなく、個人的感情で中田を外した西野朗が嫌いだ。
日本代表より面白いユース世代。中田がユースだった頃は、代表の試合より、ユースの試合の方がよほど人気があった。
二十歳で日本代表へ。「カズさんとも合いませんね」と言ってのける中田の姿勢は、日本にもホンモノのプロ選手が出てきたのを実感させた。
中田英寿は90年代の
Jリーグ以後
を体現するサッカー選手だった。
ユースから代表へ移行する時期の中田には、元がアマチュアの
学校サッカーから抜けられない指導者達
が理不尽な圧力をかけることがあった。しかし、中田は結局は、潰されることなく、実力でのし上がっていった。
97年のW杯アジア予選。加茂周代表監督の迷走する指揮に振り回された日本代表は、カザフスタンで敗れ、加茂周は更迭される。この時以来、加茂周も嫌いだ。岡田武史監督に交代、日本のW杯出場は、ジョホールバルの対イラン戦にまで持ち込まれた。
ジョホールバルでの戦いでは、中田英寿が勝利の鍵を握った。2-2で迎えた延長戦、中田が何度もゴール前にボールを運ぶのだが、投入された岡野が合わない。「岡野〜」と何度叫んだことか。PK戦かと思われた、延長後半14分、ようやく岡野が決め、日本はW杯初出場を掴んだ。
W杯で、日本は一勝もしなかったが、髪を染めてピッチを駆け抜けた中田英寿の姿は、世界のサッカー関係者の目を奪った。そして、中田は、ジャパンマネー付き移籍と陰口を叩かれたカズとは違い、
98年W杯フランス大会での活躍
を契機にイタリアに移籍した初めての日本人選手となる。ペルージャ移籍後の
ホームでの最初の試合 対ユベントス戦での2ゴール
は、中田のイタリアでの初年の成功を約束した。98/01年のセリエAのペルージャとローマでの中田の活躍は、
久しぶりにサッカーの出来る日本人が出現した
という喜びを味わわせた。
中田が日本のチームの中心になると勝てない、というジンクスができたのは
2000年のシドニー五輪 準々決勝の対アメリカ戦でPKを外した時
からだったろうか。シドニー五輪代表チームは
中田のチーム
だった。シカゴブルズのマイケル・ジョーダンが、最後のショットを外して負けても、誰も文句を言わない。それはジョーダンが打つべき時に打って、その結果外れたからだ。それと同様に、中田英寿がPKを蹴って外して負けたのだから、シドニー五輪の敗北は仕方がなかった。
翌年6月、中田の所属するローマはセリエAで優勝する。
そして、この勝利を最後に、中田は徐々に輝きを失っていく。中田英寿の頂点は、このローマ優勝だったかもしれない。
その後の中田英寿は、セリエAの普通の選手から、ベンチ要員となり、ついにはイタリアを離れた。
ジーコ監督の信頼が厚く、日本代表のチームの中心となってはいたが、国内組との温度差は大きかった。
そのプレイスタイル同様、前が見えている中田にとって、
黄金世代
という名前に踊らされて、内実を磨かない下の世代は歯がゆかったのではないか。マイアミの奇跡を共に闘った川口能活だけが、中田の内心をうかがえたのかも知れないが。
中田英寿にとって最後の試合となった、6月22日の対ブラジル戦。1-4と惨敗した後、スタイリストの中田にしては珍しく、10分もピッチに仰向けに横たわり、涙を流した。かつてはピンポイントで決まったパスは精度を欠き、コースを読まれていた。それでも、最後まで中田は闘った。すべてを出し尽くした中田にとって、ピッチとの訣別には、それだけ時間が必要だったのだろうか。
次期日本代表監督となるオシム監督は、次のように述べる。朝日より。
オシム氏「これだけ貢献した人いない」 中田引退惜しむ
2006年07月03日23時23分サッカー日本代表監督への就任が固まっているJ1千葉のイビチャ・オシム監督(65)は3日夜、合宿先の岐阜県飛騨市のホテルで報道陣に囲まれ、「日本のサッカーにこれだけ貢献した人はいない。彼がこれから何をするかは彼自身が決めることだが、サッカー界で何らかの仕事をすることを願っている。彼のような選手を自分が手にするには、長い時間がかかるだろう」と話した。
中田のような選手
果たして、また日本にこうした
前がよく見えて、心技体に優れたサッカー選手
が現れるのか。
中田英寿を惜別し、再びサッカーの世界で何かの形で活躍してくれることを祈る。
中田英寿がいなければ、この10年、これほど日本代表の試合を熱心に見ることもなかっただろう。
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コメント
中田英寿さん、おはようございます!
再来月の6月に、エキシビジョンでサッカーの試合をするそうで。
おおっ!!やったー!!!
ひとまずはDVDに録画をし、家宝とする所存です!
ケガ等には十分に気を付け、くれぐれも試合当日にいなくならないよう、細心の注意をお願いいたします。
投稿: 岡野洋明 | 2008-04-16 01:33