忍び寄る鳥インフルエンザ 中国南部発の強力ウイルスにより、タイで7月末以降2人死亡
先日、取り上げた
2006-08-19 広東省の公安、ホテル宿泊客の情報通知義務づけ (その2) 規制強化の目的は「新型インフルエンザ」対策?
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2006/08/2_230f.html
が、俄に現実味を帯びてきた。
毎日より。
鳥インフルエンザ:タイで強力ウイルスか【バンコク共同】昨年12月以来の高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)により7月末以降、2人が死亡したタイで、非常に感染力が強く致死率も高い新たなタイプの同型ウイルスが存在する可能性が出ている。感染した家禽(かきん)を調査した国連食糧農業機関(FAO)が18日までに明らかにした。
FAOアジア太平洋地域事務所(バンコク)によると、タイでは7月23日に北部ピチット県で家禽へのH5N1型ウイルスへの感染を確認。さらに、同28日には東北部ナコンパノム県でも感染が確認された。
家禽を分析した結果、ピチット県では致死率が10%程度だったのに対し、ナコンパノム県では最大94%に及んでおり、感染力にも大きな差があることが分かった。
同事務所は「ウイルスが感染を繰り返す度に変異し非常に強力なタイプが誕生した」可能性を指摘。中国南部で発生した鳥インフルエンザのウイルスに酷似していることから「中国からラオスを経由してタイに広がった」としている。
感染経路としては、指摘されていた渡り鳥の移動や家禽の搬送に伴う感染拡大のほかに「卵を入れるケースに付着したふんの可能性が強い」と警告している。
毎日新聞 2006年8月23日 東京朝刊
FAOのニュースリリース(英文 2006/08/17)
Both endemic and new virus strains to blame for bird flu recurrence in Asia’s poultry
FAO calls for improved and sustained AI control efforts in Asia
17 August 2006, Bangkok/Rome
http://www.fao.org/newsroom/en/news/2006/1000377/index.html
現在、FAOが調査できている、タイで死亡例が出ているわけだが、問題は
中国南部で発生した鳥インフルエンザのウイルスに酷似
という点だ。つまり
広東省のホテルのすべての宿泊者のチェックイン3時間以内に、公安に情報の通報を義務づけ
というのは
鳥インフルエンザ感染者の割り出しと足止め、感染蔓延地域の把握
のためではないかと疑われる。例によって、中国はきちんとした情報を国際社会に出さないようにしているから、現在、タイで起きているような鳥→ヒトへの悪質なウイルス感染による死亡例があるのかないのかも不明だ。
わかっているのは
8/16に広東省の隣の湖南省で鳥インフルエンザが発生し、鶏が処分された
ということだけだ。もう一度、8/16の鳥インフルエンザ発生記事を読み直すと、
同省ではこれまでに、鳥インフルエンザ感染による住民の死亡例も確認されている。
という一文がある。これは今年の2月に発表されている。
人民日報より。
湖南で高病原性鳥インフルエンザ 1人の感染確認衛生部は10日、湖南省で1人がH5N1型の高病原性鳥インフルエンザへの感染により死亡したことを明らかにした。これにより、中国で見つかった高病原性鳥インフルエンザ感染者は12人となり、死者は8人に増えた。
亡くなった患者は20歳の女性で、湖南省綏寧県の住民。今年1月27日に発病し、発熱や肺炎のような症状があった。容態は急激に悪化し、治療の甲斐なく2月4日に死亡した。患者は発病の前に自宅で家きんを屠殺したことが分かっている。湖南省疾病予防控制センターの検査や中国疾病控制センターの再検査で、H5N1型の鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が出た。衛生部の専門家チームは、世界保健機関(WHO)の定義や中国の診断基準に基づき、患者が高病原性鳥インフルエンザに感染していたと診断した。
現地政府は事態を重く見ており、衛生部門などが対応策を取るとともに、患者と密接な接触のあった者に対する医学観察を行っているが、これまで体調の異常は見つかっていない。患者の情況について、衛生部はすでにWHOや香港・澳門(マカオ)・台湾、一部の外国への通報を行った。(編集UM)
「人民網日本語版」2006年2月11日
現在、タイで流行している毒性の強いH5N1型鳥インフルエンザウイルスは、上記湖南省のウイルスと同型ではないかと疑われる。
広東省の
公安への宿泊者情報通知義務づけ
は、
鳥インフルエンザがかなりヤバイんじゃないの?
という、先日の友人の言を裏付けるものでないことを祈りたい。
ともかくも、中国はこうした疫病の流行を隠蔽するので、国際社会が実態を知ったときには、手がつけられない状況になっている可能性がある。今は夏で、中国やタイなど、問題の毒性の高いH5N1型鳥インフルエンザウイルスが存在する地域へ旅行している日本人も少なくないだろうし、そうした地域から日本に入ってくる外国人も多いだろう。
今のところ、感染した鳥との濃厚な接触がないと感染しないと言われているのだが、先日、新疆ウイグル自治区で「外部との接触のない男性が鳥インフルエンザウイルスに感染して死亡した」例もあり、予断を許さない。清潔な水が得がたい地域への旅行では、衛生に気をつけ、手の清拭(できれば洗浄)やうがいなど、日本のインフルエンザ流行時と同様の対策を取るようにしてほしい。
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