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2006-09-02

産科崩壊 一人産科医体制で起き勝ちなこと (その2) 尾鷲の医師を追い詰めたきっかけは毎日新聞の記事 一年の内363日病院にほぼ24時間詰めていた医師に感謝もなしか

「気持が折れてしまった」という尾鷲の産科医が職場を去る。そのきっかけになったのは
 毎日新聞の心ない記事
だった。
元記事は削除されているので、転載分から。毎日新聞三重版3/8付けの記事だ。


尾鷲総合病院:やっと確保の産婦人科医、報酬5520万円 市民は“困惑” /三重

  医師不足に悩む尾鷲市が独自に確保し、昨年9月から市立尾鷲総合病院に招いている産婦人科医の年間報酬が5520万円に上ることが7日までに分かった。同病院の医師の平均給与は約1500万円。その3倍以上の破格な報酬に市民からは「産婦人科医の存続は有り難いが、市の財政事情から考えると高額すぎるのでは」と困惑する声も出ている。

 同病院の産婦人科医は、三重大学医学部付属病院から派遣されていたが、付属病院の医師不足に伴い、昨年7月以降、派遣がストップ、常勤の医師がいなくなった。これを受け、市民団体が同科の存続を願う活動を展開、6万人を超す署名を集め、三重大と県に陳情した。しかし、派遣は再開されず、市独自で探した結果、津市の開業医が9月から来てくれることになった。

 これに対し、市民団体のメンバーの一人、高田大礼・尾鷲自治連合会長は「他の医師とあまりにも格差があると医師のチームワークが乱れるのでは」と心配する。また、存続を願う署名をしたという市内の主婦(36)は「お金優先のように思えて悲しい」と話し、市内の別の主婦(61)は「医師の受け入れはお金だけの問題ではない。医療過疎地ではいかに医師を大事にし、育てていくかが重要。今回の報酬問題は、医師を思いやる市民の気持ちも問われている」と話した。


ということで

 高額の給与を新聞で煽った毎日

が、今回の

 産科崩壊の引き金を引いた

ということではないのか? なぜ

 高額な報酬でも見合わないほど危険な業務に「年僅か二日の休み」で粉骨砕身してこの医師が当たったか

ということをきちんと考えないで

 高い給料取りすぎはけしからん

とばかりに煽り立てた毎日新聞。この落とし前はどうつけるのだ? なぜ

 高給でも医師が集まらないのか

という理由を少しでも考えたことがあるのか? そして、この報道の後に

 こんな体制の自治体の病院では働けない

と思っている産科医がたくさんいることを。

尾鷲市の妊産婦は、今回

 いたずらに高給に対する不満を煽り立てたメディアと市議、市民団体

に、異議申し立てをした方がイイよ。あなたがたが尾鷲市で不利益を被ってる理由は、こうした

 無理解な点数稼ぎの連中が、本来ならもっと労働条件のよいところにも行けるだろうが、わざわざ尾鷲市を選んだ医師の意欲を失わせて、診療を続けなくさせた

のだから。

たった一人で、363日働き続けた医師の時給を計算すると、この報酬は決して高くはないのだ。

この医師がどれだけ劣悪な労働条件だったかを、今年の5月、院長が次のように証言している。朝日より。

医師の心労、軽減必要 
2006年05月24日

「地域全体で医療を完結させる必要がある」と語った五嶋院長。自身も緊急手術など激務が続く尾鷲市立尾鷲総合病院院長 五嶋博道さん(60)
http://mytown.asahi.com/mie/k_img_render.php?k_id=25000150605240002&o_id=931&type=kiji
(略)

——今いる産婦人科医の勤務状況を教えてください。

 自然出産なので、24時間ほとんど病院内にいる。寝泊まりもして休日はない状態。50歳を過ぎた経験豊富な医師なので、患者からは「安心できる」と評判はいい。本人も派遣ではない立場なので、責任をもってやっている。緊急の所用の場合は、他の産科医が来てもらえるように三重大に要請している。
(略)


はっきり言って
 院内に監禁された状態
で診療を続けていたのだ。

尾鷲市長も
 本来三人でやるべき仕事を一人でして貰っている
と今年の四月に認めている。
日経メディカルより。


2006. 4. 21【地域医療の現場から 第1回 ◆ 三重県尾鷲市】年5520万円で産婦人科医を雇用したワケ
(略)
5500万円は「政治的判断」

 そんな中で、紹介されたのが三重県津市で開業している先生だった。年収5520万円という額は先生から提示されたもの。正確には「手取額を保証してほしい」というものだった。

 もちろん、その提示額には驚いたが、1)増員のめどが立たないため、しばらくは一人医局とならざるを得ない、2)24時間体制の勤務となる、3)20年近く開いてきた診療所を閉じ、地縁のない尾鷲市に来てもらう──の3点を考慮し、報酬面で折り合いが付かずに医師を確保できないリスクよりも、高額の報酬で雇うリスクの方が小さいと判断、2005年9月より赴任していただいた。

 後の議会で高給について指摘され、メディアでも額面を強調して報道された。今もメディアからの取材依頼も多い。だが、これだけの報酬を保証したというのは、それでも産科が必要だという政治的な判断だ。

 この先生の赴任後、2006年3月末までの半年の間に、尾鷲総合病院では87人の出産があった。これは本来3人でまわすべき仕事だ。それを一人で一手に引き受けてもらっていることを考えても、5000万円の価値はあったと考えている。

 もちろん、一人医局が健全な状況とは思わないし、現在も別の医師を捜しているところだ。「5500万円」という報酬が報道されて以降、赴任を希望する3件の問い合わせがあった。だが、うち2件は「5500万円は特別で、今後は正規の報酬に、少しプラスする程度までしか出せない」と告げると、連絡がなくなってしまった。医師および助産師の確保については、今後も努力を続けていきたいと思う。
(以下略)


まあ、市としては
 1. 一人医局ではなく、三人体制にして、医師の生活の質を上げ、医療過誤を起こさない診療体制を確立する
 2. 産科運営を政争の具とすべきではない
のが必要だけどね。三人体制なら、たぶん
 5250万円よりは医師に対する俸給の総額は上がる
だろう。もし、そうなっても、
 医療に関する費用削減
とか言わないようにね、市議会。

一方、なぜか東北大学では
 医療過誤が起こりうる「一人医局」推進体制
を喧伝している。
これも毎日新聞より。


総合産婦人科医:東北大など養成へ 小児科や麻酔科の知識も

 妊娠、出産から乳幼児期まで母子の医療に幅広く対応できる医師の育成に、東北大、金沢大、宮崎大の3大学が乗り出す。産科や小児科の医師不足や地域的な偏りに対応するためで、文部科学省が今年度から3年間、取り組みに助成する。
 東北大は、専門性を深める後期臨床研修(3年間)中の研修医向けに、「総合周産期実践医」養成コースを同大学病院に設ける。産科の他に、麻酔科や新生児集中治療室でも研修し、母体や新生児の急変に対応できる医師を育成する。今年度中に具体的なプログラムを作成し、07年度から本格的に始める。
 金沢大と宮崎大は、医学部の学生を含めた教育、研修を進める計画だ。
 金沢大は、妊婦と乳児のいずれにも対応できる医師を養成する「周生期医療専門医養成支援プログラム」を策定する。医学部の5、6年生10人程度を公募し、卒業後も継続してプログラムを受講してもらう。
 宮崎大も、縦割りだった産婦人科と小児科の教育体制を見直し、学生や研修医が両分野を総合的に学べる体制をつくる。
 東北大医学部の岡村州博教授(産婦人科)は「お産では、妊婦を診る産科、新生児を診る小児科などが連携する必要があるが、地方では十分な体制がとれない。総合的な知識や技術を持つ医師を育てたい」と話している。【下桐実雅子】
毎日新聞 2006年8月22日 東京朝刊


大学の医学部教授は
 弟子を後ろから撃つ
のか?てか
 お産が重なってるときに、一例のお産にマンパワーを注ぐと、他の妊産婦にトラブルが起きたらどうする
って話なんですが。どう考えても
 厚労省に媚びた、実態の伴わない「教育予算獲得」
だと思いますが。文科省は、どうも、
 どういう悲惨な事態になるのかまったくわかってない
ようですね。文科省の官僚のみなさまは
 自分の奥さんのお産が始まってるのに、横で「重篤な妊産婦と子どものケアにかかりっきりになってる」一人の医師しかいない分娩室
を想像してみた方がよろしいかと。こんな
 十徳ナイフ
みたいな人材を一人派遣するより、それぞれ
 小児・麻酔・産科の専門医を一人ずつ派遣
する方が事故も起きないのですけれども。

おまけ。現在以下のスレッドで
 尾鷲の産科医の高給を市議会で糾弾した議員の発言と実名
が晒されている。ソースが出てないけど、もし、これが本当なら、ひどすぎる。
 【医療】 「三千万なら大学病院の助教授が来る。報酬高すぎ」 産科医消滅の危機、実は中傷が原因…三重・尾鷲★5
http://news19.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1157174619/642-
発言の内容。


「市長が提示した4800万円には反対だ。
議会でこんな議論をしなければいけないことは不愉快だ。
1年前の交渉で議会に相談もなく5520万円を決めたことが
ボタンの掛け違いだ。他の医師も理解しているとの説明だった。
産婦人科医師を除く現在18人の医師の平均給与はどの程度なのか。 」

湯浅事務長
平均で年収約1500万円。

「提示の4800万円は3倍以上だ。
他の医師がむくれるのも当たり前であり、市長のやることは後手後手だ。
こんなことでは他の医師が三重大に帰ってしまう。
もっと早く議会に基本的な考えを示すべきだった。
6万3千人の署名は三重大や県に出したもので、市長への要望ではない。
4800万円を出すこと自体が話にならない。
 医師がいなければ総力を挙げて探せばよいのに、1年前にそれも
しなかった。仮に3千万円で医師を公募すれば大学の助教授クラスが
飛んでくるという話もある。風聞として産婦人科医師の開業時の話が
いろいろ入ってくる。
第一に他の医師が納得できる額が求められるのに
話にならない高額だ。 」


つづき。全文は以下に。
市長に更新交渉一任
市議会生活文教委 総合病院の産科医師(南海日日新聞より)
http://ooame5520man.web.fc2.com/nankai.html
 尾鷲市で産婦人科医消滅の危機  まとめサイト
http://ooame5520man.web.fc2.com/index.html

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コメント

はじめましてこんばんは。古い記事にコメント失礼します。
私は障害福祉の仕事をしているものです。

私、この医者の気持ちが少しわかる気がします。
私は今の仕事をする前、老人福祉の施設で働いていました。私だけではないのですが、サービス残業が当たり前の毎日で、働いても働いてもちょっとしたミスをしただけでも現状を知らない立場の人からひどいバッシングを受けました。じいさんばあさんを預けているだけの家族や現場を見もしない上層部。責任の擦り合い。最終的にはミスしたスタッフ個人の責任。
2ちゃんなんかでは介護は馬鹿でとりえの無い人間がやる仕事だと言われたりしてます。実際、一般企業から外れた人が就職する事もありますが、十中八九短期間で辞めます。人手が無いので例え猫でも雇う勢いの福祉施設はとりあえず採用はしますが、1年持つ事はありません。なぜなら現実は2ちゃんで言われるように馬鹿でもできる仕事では無いからです。厳密には勉強ができなくても、仕事に必要な精神や知識を日々勉強する姿勢さえあれば続けられるのでしょうけど。
施設職員の多くは時給700~1000円程度で契約し、20日×8時間で月160時間程度仕事をするのですが、実際は月250~300時間は働きます。つまり、実質の時給は500円前後というコンビニ以下の条件で頭と体をフルに使う仕事をしなくてはなりません。下から突き上げられ上から叩かれ、本来協力すべき横の同僚たちも苛立ちと不安からかお互いを傷つけあって罵り合って最後は辞めていく。体も健康、頭も良い、真面目で優しい人でも持って4、5年です。それ以上やるには希望を捨てるか悪になるしかありません。私も根性だけで約5年がんばり、10人程いた同期の最後から2番目の離職者になりました。10人全てが介護福祉士なのに…元すら取れてない気がします。(最後の一人は「結婚したら辞めるからもう少し我慢する」と言っていた。)
私は運よく障害福祉の面白さを知り、とある事業所でサービス提供責任者として迎えていただき、上司や同僚にも恵まれたので介護福祉士の資格を活かす仕事を続ける事ができていますが、辞めた同期の半分は福祉の仕事から離れてしまいました。学生の頃や新人の頃は、福祉を変えると目を輝かせていたのに…。
そもそもこの手の問題の根本にあるのは国の金の使い方のマズサや、医療や福祉に対する理解の乏しさ、いや、もっとまずいのはそれらの問題を改善しようとしない事にあるのだと思います。(表面的には色々と法律いじって努力しているかのようにパフォーマンスはしてますが)
この先生のようにプライベートを犠牲にして職責を果たそうとがんばる人間でも、周りが理解しなければいつかは心が折れてしまいます。もはやこれは行政やらマスコミによるいじめみたいなものですからね。
おそらく、介護福祉従事者の保障をあげて、例えば駐車違反監視員並みの給料がもらえるように国が予算を回せば同じような現象が起こるでしょう。
「介護しかできない馬鹿どもに手取り20万円はやりすぎだ!」
ってね。現実、ケアマネや施設の主任クラスでも手取り20万円以上は極稀。夜勤の無い部署の平社員なら手取り10万位でも特別ではありません。国家資格を持っていても大学出ててもです。共稼ぎじゃなければ結婚もできませんし、子供もおちおち作れない薄給です。でも、介護は簡単だし、国の足を引っ張る年寄りや障害者にはお金をかけたくないし、このくらいが妥当だと国は考えているのでしょう。おそらく多くの一般人もかな?自分自身もこの仕事をしなければ考えても見なかったのかもしれませんし。
いずれにせよ、少子化と言っても子供を産み育てる事に幸せを感じる人がたくさんいるのも事実。未来を憂いて去った産婦人科医の気持ちもわかるけど、これ以上子供を産み育てる環境を悪化させれば日本がどうなってしまうか国はもちろん辞めた産婦人科医も含めて国民全体で考えなくてはなりません。日本を老人島にしない為にも、子供を産み育てる環境を整えて欲しいと思います。それは、介護する若者を増やす事にもつながるので。

長文、及び記事と少しずれた内容失礼しました。お目ざわりであれば、このコメントは削除してください。
では失礼します。

投稿: 福祉と俺と | 2007-02-08 02:35

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昨今ブラック企業と言うものが非常に取り上げられる機会が多くなっていて、労働に対する正当な報酬を支払わない企業などには非常に厳しい目線が注がれるようになっていますが、そんな中で先日毎日新聞にこんな記事が出ていたと話題になっています。 市職員、9月分給与100万円超も 水害対応で、残業最高342時間 /茨城(2015年12月5日毎日新聞) 常総市は4日、関東・東北豪雨への対応で残業し、9月分の給与が100万円を超えた職員が十数人いたことを明らかにした。水害が発生した9月10〜30日までの残業時間は最高で... [続きを読む]

受信: 2015-12-16 07:02

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