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2006-09-28

博士号の候補生(doctoral candidate)の蹉跌

最近、大学教員の公募要件は
 博士号を持っているか、採用前に取得可能なこと
というのが大半だ。大学院を拡充して、博士は取りやすくなったモノの、取ったからと言ってアカデミックポストに無事就職できるという訳でもないのだが、取らないわけにはいかないのだ。

普通の大学教員は、博士持ちとそうでないヒトが混在している。
専門学校化した短大・大学では、技術系教員に学士とか準学士とか高卒教員もいたりして、大学教員の学位取得状況は、いよいよ混迷を極めている。そりゃ、必死になって博士を取ったのに、高卒教員より低い扱いでは、モチベーションも下がろうというモノだが、日本という国は、なぜか学位に敬意を払わず、できるだけ無視するとか、逆差別しておとしめようというヒトが結構いて、若い教員は忸怩たる思いだったりする。
法学部の学士助手は別にして、まともな、専門学校化してない大学では、文系教員は、40代前後だと、博士持ちとそうでない教員がいる。実は、40代で就職の早い人達は、修士で助手、助手から各大学へというルートだから、博士論文はゆっくり書けばイイや、だったのだ。ところが、ドラスティックに大学改革が進んでしまい、いつの間にか学位の点で取り残されてしまっている。別な大学に移りたくても、一本釣りでもなかったら、公募ということになるのだが、学位がないので、はねられてしまうのだ。
修士就職で学位がないヒトは、今いる大学に出来るだけ長くいるように努めるしかないらしい。で、何故学位論文を書かないのかと尋ねると、大抵
 忙しいから
という答が返ってくる。たしかに、学生指導とか会議とかいろんなことがあるから、学内では中堅どころとなる40代の大学教員が純粋に研究できる時間ってあまりないのではある。

一方で、博士論文を書く約束をして、そのままテンポラリな就職をしてしまった場合はどうか。最近、COEなどのポストに、こうした「博士号の候補生」が就職することがある。COEは時限プロジェクトだから、終われば次を捜さなくてはならない。
しかし、次の職に就くためには、少なくとも学位は必要である。
周囲を見ていると、博士課程単位取得修了で学位論文待ちのヒトには、二種類いる。
 ヒトが悪くて、仕事は手を抜くが、論文は書くタイプ

 ヒトがよくて、仕事はするが、論文が書けないタイプ
だ。COEなどのプロジェクトや、テンポラリなポストに重宝される人材はもちろん後者である。後者は、そのヒトの良さと事務能力を買われて、奴隷のようにこき使われる。で、プロジェクトが終われば、そこで失業となってしまうのだ。
以前だったら
 助手になれば次をボスが用意してくれる
ことが多かったけれども、どちらかというとポスト数を増やし一時的なバブルな状況を作りだしたCOEが終わると、今度は、絶対的なポストの数が不足することは目に見えている。優秀な若手研究者がテンポラリな職位で、本来の研究ではなく、雑用にこき使われているのをあちこちで見聞きすると、果たして、日本の20年後の大学教育は、一体どうなってしまうのかと暗澹とした気持になる。いまそうした若手をこき使っているボス達は、20年後には恐らく退職しているはずだからだ。ボス達にこき使われていて、不安定な職に就いている若手研究者は、本来ならば20年後には大学の中核となる人材なのだが、その時に果たして大学に残っているのかどうか。そして、本来の研究能力を発揮できているのかどうか。
その上、人のよい、テンポラリな職位でこき使われている若手研究者は、在職の期限が終わるまでには、忙しすぎて、肝心の博士論文が書けてない可能性が高い。つまりは、若手の才能を事務能力故に使い潰しているのが、こうしたテンポラリな職位の暗黒面なのだ。もし、少しでも注意力があるなら、裏をかいて、適当に業務をこなしつつ、論文も完成できるだろうけど、それを遂行するには、かなり「人が悪く」ならなくてはいけないのだ。
逃げろとは言わないが、「賢く生き延びて欲しい」ものだ。

ちなみに、もう30年以上前から
 博士号を持っていても就職できない
のが
 世界的状況
であった印度学は、こうした
 助手→失業→非常勤で長年食いつなぐ
というライフスタイルが確立してしまっていた。40過ぎてようやく常勤の職に就けたという海外で学位を取得した留学経験者が掃いて捨てるほどいた。印度学では、学部に上がったときに、就職がないことをきちんと説明してくれたので、それなりの覚悟を持って勉強していたからいいようなものの、今時の若手研究者は、そこまで腹はくくってないだろう。小学校に上がるときから受験、受験で勝ち続けてきたはずが、最後に足を掬われたりしてるんじゃないのかな。

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