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2006-09-17

車いすと物乞い

日本で
 衣食足りて、礼節を知る
と言い習わされている言葉は、元々『管子』の牧民篇にある
 倉廩實、則知禮節。衣食足、則知榮辱。
 倉廩實(みつ)れば、則ち禮節を知る。衣食足れば、則ち榮辱を知る。
が出典だ。
 経済的に余裕が出来て初めて、道徳的な生活を営むことができるようになる
という意味だ。

今回、中国東北部と北京へ行って、ちょうど中国がその段階になったのを実感した。
2000年前後は、鄧小平の長男が中国の身体障碍者協会の会長をして、身障者の地位向上に努めていたとはいえ、社会的なインフラは未整備で、車いすが通れるような歩道は少ないし、白杖を持った人が歩いていても、誰もあまり助けていなかった。

いまは状況が変わりつつある。
一昨年から中国で一連の調査をしてるけれども、白杖を持って歩いていても、意地悪されたことはない。
中国の道路は、
 車優先
で、人がいようがなにしようが、パッシングを掛けてくるし、割り込んでくる。信号はあるけれども、交通巡査が直接交通整理をしてるような場所以外では、ほとんど意味がない。
ところが、白杖を持って渡っていると、一応、止まってくれるようになった。
北京では、老舎故居へ行く途中、天安門広場南側の、地下道で渡らなければならない交差点でうろうろしていると、おばちゃんが声を掛けて、道を教えてくれた。
随分と親切になったなあ、と思う。
北京で白杖を持って一人でタクシーに乗っても、メーターを誤魔化されたりはしなかった。
歩道には点字ブロックが設置されているところが多くなった。かなり田舎だと思われるような地域でも、最初から点字ブロックを入れて、敷石を設置するようになってきている。

大きな都会では、車いすを見かけることが増えた。たいていはお年寄りが家族に押して貰っている。
まだまだ、日本のように電動車いすで、あちこち行動するというようなことは少ないようだが、町で車いすを見かけるようになっただけでも、凄いことだと思う。

これからの中国は急速な超高齢化社会を迎える。老人が多くなれば、身障者は増える。
北京五輪に向かって、北京のあちこちで大規模な工事が行われているが、当然、世界の目に触れることを意識して、バリアフリー設計になっている。国土の広さに余裕がある分、中国はバリアフリー設計のしやすい国である。その気になれば、その手のちょっとした設備は簡単に組み入れられる。国家の威信を賭けてやっているから、その点は徹底している。

もっとも、相変わらず、足を何かでおかしくされた物乞いの少女は、街角に座っている。
車いすと物乞い。
これが、現在の中国の身障者の二つの姿だ。障碍があっても普通に暮らそうとする富裕層と、生活のために身体に障碍をつくって物乞いをする貧困層。絶望的な段差がそこにはある。

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コメント

以前は私も、「衣食足りて礼節を知る」と、そう思っていました。
しかし中国のこれは、果たして自発的なものなんでしょうか。
各自の人間本性から発するものなんでしょうか。
何か違和感を拭えずにいます。
もし本当にそうだったら、各種の歴史的問題に対しても、違った対応をするはずですし、それこそ「良心に基づいて」本当のことが色々と表に出るはずですよね。

投稿: 木津 | 2006-09-25 23:28

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