北京の朝鮮族
今回の旅行中、吉林省・黒龍江省牡丹江・黒龍江省哈爾濱・北京では、それぞれ瀋陽から哈爾濱から同行したガイドさん(こちらは3/4漢族で1/4滿洲族)と別に現地ガイドさんが付いた。で、別に付いたガイドさんは全員朝鮮族だった。
珍しかったのは北京の朝鮮族の日本語ガイドさんだった。なんでも北京にいる600人の日本語ガイドの1%だそうだ。吉林省延吉出身で、外語大で日本語を勉強したのだという。
行く先々で朝鮮族が付くという人選になっていたのは、一行に一人韓国人研究者がいたからかも知れない。
東北三省内には朝鮮族はたくさん居住しているから、朝鮮族が日本語ガイドをしていても、誰も気に留めない。
ところが、こと首都北京となると事情は変わる。
今回の一行には、わたし以外には中国の少数民族政策の実情を事前にある程度知っているヒトがいなかったので、他には誰も気づいてなかったのだが、実は、北京の朝鮮族ガイドさんは
普通話がヘタ
だった。東北三省では問題にならないレベルだが、1267年から一時中断を挟んで740年ほど首都である北京では
普通話がヘタな少数民族は、漢族にいじめられる
のである。
何度も道を聞いたり、タクシーを拾おうとして揉めていたのだが、揉める原因の一端は
ガイドさんが漢族ではなく、かつ普通話=北京語が上手ではない
ことに起因していた。東北三省は普通話は東北官話の系統の発音になるが、北京語の特徴である捲舌音が舌歯音で代用されることが多い。これは
田舎訛り
で、老北京(北京っ子)には馬鹿にされる。それ以外にも
普通話が母語でないヒトの発音などの訛り
が結構あった。たぶん
ハングル・東北方言訛りの北京語
になっていて、老北京には余計に耳障りだったのだろうと思う。
そのために、ガイドさんは話す相手(漢族)に
一人前の人間として扱って貰ってない
のだった。ハナから非常に小馬鹿にされた態度を取られていた。それに対して
ガイドさんには、外国人である日本人を連れている面子
がある。外国人の前で、漢族にやられっぱなしでは面子が立たない。
漢族の少数民族差別意識と朝鮮族ガイドさんの面子とが衝突して、やたらと話がややこしくなっていた。ややもするとけんか腰になっていたが、北京の漢族相手では分が悪い。
もし、これが
下手な普通話を話す外国人
だったら、もう少し状況は変わってくる。老舎故居を探しているとき、上品な漢族の老人(ひょっとしたら滿洲族かも)が鳥籠を持って歩いていた。少し古風な呼びかけで丁寧に尋ねたら、懐かしい北京土話(北京方言)でこれまた丁寧に教えてくれた。
朝鮮族ガイドさんが苦闘していたのは、やはり
漢族が優勢な首都北京の風景
であり、歴史を勉強する者としては見落としてはいけないことだったと思う。
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コメント
朝鮮族ですか。
過去には色々と面白いこともあったようで、現状を一概に決め付けることもできないのかもしれません。
中国では、誰が本当の被害者で、誰が本当の加害者なのか、見当もつかなくなっています。
というよりも、加害者であり続けなければ、政治勢力として生き延びれなかったのが中国だと言った方が良いのかもしれません。
こと朝鮮族に関しては、沈陽などと同様に、日本との関係もありますから尚更に評価が難しいような気がします。
彼らが置かれているチャイナという環境が、彼らをそうさせた、あるいはそうさせているのか、それとも彼らがそもそもそうだから、過去現在がかくあるのか、果たしてどっちなんだろう。
他にも色々とありますが。
それにしても、現地では、歴史問題の荒唐無稽さがよく分ります。
歴史評価というのは、中国では、自分達の政治的立場を固めるための歴史作成なんですね。
しかし、ひとたび状況が変われば、その歴史作成が、それを行った政治勢力のダメージになる場合もあるのかもしれません。
散文的になって申しわけありません。
投稿: 木津 | 2006-09-25 23:09