「マスコミたらい回し」とは? (その17) 産経新聞、社説で「脳内出血がわかっていたら搬送先が拡がっていて病院が早く見つかった」と電波を飛ばす
大淀病院の産婦死亡事例について、産経新聞が社説で電波を飛ばすという
快挙
に出た。突っ込みどころは赤で。
平成18(2006)年10月24日[火] ■【主張】病院たらい回し 患者本位の基本忘れるな分娩(ぶんべん)中に意識不明に陥った妊婦が、19カ所もの病院に次々と転院を断られ、やっと収容された病院で脳内出血と帝王切開の緊急手術を受け、男児を出産した。だが、8日後に亡くなってしまう。問題は病院の「たらい回し」である。
残された夫は「妻の命をもっと大切にしてほしかった」「今後、同じことが起きないよう妊婦の搬送システムを改善してほしい」と訴えている。
妊婦は8月7日、奈良県大淀町立大淀病院に入院し、翌日午前0時過ぎ、頭痛を訴えて意識を失った。適切な処置ができないと判断した大淀病院は受け入れ先を探したが、満床や専門医不在を理由に断られ、6時間後、約60キロ離れた国立循環器病センター(大阪府吹田市)に運び込まれた。受け入れを打診した20カ所目の病院だった。
患者を医療設備と専門スタッフのそろった病院に搬送するシステムの欠如がまず問題だ。
奈良県では高度な医療や緊急治療の必要な妊婦の40%近くが県外に転送されている。厚生労働省が進めているお産を扱う周産期医療をネットワーク化するシステムの導入も他の自治体に比べ、遅れたままだ。
重体の患者を引き受け、面倒な医療訴訟を起こされる事態を避けたがる受け入れ側の病院の体質もあるだろう。厚労省によると、周産期医療は訴訟が多く、医療ミスや医療事故の12%は、産婦人科医が当事者だという。
妊婦が最初に入院した大淀病院の誤診の問題も、忘れてはならない。大淀病院は容体の急変後、妊娠中毒症の妊婦が分娩中に痙攣(けいれん)を引き起こす「子癇(しかん)発作」と判断し、痙攣を抑える薬を投与した。当直医が脳の異常の可能性を指摘し、CT(コンピューター断層撮影法)の必要性を主張したが、受け入れられなかった。
脳内出血と正確に診断されていれば、搬送先の幅が広がり、早く受け入れ先が決まっていた可能性は高い。
奈良県警は業務上過失致死の疑いもあるとみて捜査に乗り出した。
患者を救うのが、病院や医師の義務である。患者中心の医療の基本を忘れているから患者をたらい回しにし、患者不在となる。
もう一度、医療とは何かをしっかり、考えてほしい。
え〜、産経新聞にお尋ねしますが
脳内出血って脳のどこが出血した状態
か、理解していますか?
大脳深部の「基底核」「視床」と呼ばれる部分に起こる場合が80%
で、脳の深い部分が出血でダメージを受ける、大変に予後のよくないものなのですが。今回の事例も
右脳基底核混合出血
である、という話が流れていますが、もし
単独の脳内出血
であったとしても
予後のよくない症例
であることは確かです。今回はその上に
分娩が進行中であった
という、難しいファクターが付随しています。
産経新聞にお尋ねしますが、「脳内」って
脳のどこかから出血
じゃないんですが。ひょっとして
クモ膜下出血と脳内出血を混同
してませんか?
明らかに事実誤認であるのは
脳内出血と正確に診断されていれば、搬送先の幅が広がり、早く受け入れ先が決まっていた可能性は高い。
という部分です。
高リスクの出産を扱えて、同時に脳外科の手術も出来て、かつ、生まれた子どもにトラブルがあったときに備えてNICUも完備している病院
の方が
子癇発作の産婦を受け入れてくれる病院
よりも遙かに少ないでしょう。それとも
産婦の脳外科手術だけして、子どもは自然分娩させる
とでも? それ以前に
脳内出血であれば、予後がよくない場合が多いので、手術適応になること自体が少ない、もしくは脳ヘルニアをおこさないような手術しか行えない
のですが。それとも、産経新聞では
産婦の脳外科手術を先にして、子どもを後にして、子どもの命を救わないのがよい
のでしょうか。
従って、今回は
たらい回し
なのではなく
脳外科・産科・小児科・麻酔科の四つの診療科の医師がチームを組んで、受け入れられる病院が国立循環器センター以外に当日なかった
ということです。ついでに言っておきますが
脳外科手術のための麻酔
と
帝王切開のための麻酔
は、違います。
一発、麻酔を打てば、どっちの手術もOK
なんて、単純な話ではないそうですよ。
もし
脳外科・産科・小児科・麻酔科の一つでも欠けたら、決して、一人も助かってなかった事例
なのですが、そのことを理解して
たらい回し
という言葉を使っていますか? そんな
設備の整った高度医療の可能な病院がもっとたくさんあった
というのが
産経新聞社説の主張
なのですが、明らかに
ウソ
ではありませんか?
今回の事例は
生命の危機に瀕している母子から、子どもだけでも救えた極めて稀な例
である。産経新聞は
出産で死ぬのはおかしい
という論調だが、
出産は常に死と隣り合わせという事実
を忘れて、医学的裏取りをしないままに、
感情にまかせて、ウソを書いてる
としか思えない。極めて稀な例で不幸な転帰を迎えることは、ご遺族には受け入れにくい事実なのだが、それを報道機関が
歪曲して伝える
のは、すでに報道ではなく
感情的プロパガンダ
だ。
おまけ。
この社説は産経webに掲載されてるのだが、web上にはその時々でいろんな広告が出ている。なんと
製薬会社の広告
もあったようだ。
産科医絶滅史20巻〜地雷を踏んだらサヨウ奈良〜スレッドより。
414 :卵の名無しさん :2006/10/24(火) 13:33:42 ID:lf3lrqDe0
>>393-394
リンク先スポンサーを見たらいきなりキタコレwwwwwhttp://e-hisamitsu.jp/shop/contents/sample05.aspx?adid=001
↑の会社の製品(「※」は他社も併売)
エストラーナ (エストラジール)!!!
ナボールSR (ジクロフェナクNa)
アルピニー (アセトアミノフェン)
ドラール (クアゼパム)※
エスクレ (抱水クロラール)
ルピアール (フェノバルビタールNa)
MVI-3,-12キット (IVH用ビタミン剤)
ハイチオール (L-システイン)
メファキン (塩酸メフロキン)
アトラント (塩酸ネチコナゾール)※
ボレー (塩酸ブテナフィン)
エクラー (プロピオン酸デプロドン)※
ベシカム (イブプロフェンピコノール)
セクター、モーラス (ケトプロフェン)
インサイド (インドメタシン)415 :卵の名無しさん :2006/10/24(火) 13:35:07 ID:LJunNHsN0
エストラーナ中止だな。
あらま
久光製薬の広告
が貼ってありましたか。アホやな、産経webの制作者。医師に反感を買う社説のページに製薬会社の広告も置いていたとは。
414さんと415さんが注目した「エストラーナ」は婦人科で使う薬剤だ。更年期障害や骨粗鬆症の治療に用いる。
エストラーナ
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se24/se2473700.html
久光製薬のエストラーナ以外にも、他社から同様の薬剤は出ており、選択の余地はある。
ま、久光製薬は
もし、エストラーナなどの産婦人科での売り上げが落ちたら、この産経webの広告出稿の仕様に問題があった
ということで、産経webの営業とよく話し合ってくださいね。
| 固定リンク
« 「お産の取り扱いを止めます」 70年の伝統を持つ新潟県妙高市けいなん総合病院の決断 「一人医長では安全なお産はできない」 | トップページ | 「マスコミたらい回し」とは? (その18) 柚木道義議員に電話してみました »
コメント