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2006-10-18

「マスコミたらい回し」とは?(その2) 奈良県で脳出血の産婦、緊急搬送先見つからず吹田の国立循環器センター搬送についての補足

昨日の
 「マスコミたらい回し」とは? 医療現場で起きていること
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2006/10/post_798f.html
の続き。

奈良県の産科の悲惨な状況については、県民だから痛いほど知っている。ちなみに、五條市に地盤のある例のセンセイは、学校法人内の男性職員には
 子どもを三人以上作れ
と命令しているという。お願いですから、
 地元に利益誘導
するなら、道路工事なんかじゃなくて産科・小児科・救急の充実予算を引っ張ってきてください。それとも
 県外出産推奨
ですか?

で、一般の救急搬送についてもいろいろ問題ありまくりの奈良県では、今回のような
 非常に難しいお産
があっても、なかなか助けられないのだが、
 どういう条件下なら、救急搬送を受け入れられるのか
という視点が、報道には抜け落ちている。特にテレビは、もっぱら
 ご遺族である24歳の夫君の切々たる訴え
を中心に構成されていて、
 医学的には何が必要だったのか
という検証は不十分。かつ
 18病院も断りやがってけしからん!
とばかりに、
 魔女狩りになりそう
な気配だ。
ご遺族にはお気の毒だし、奥様のご冥福を心からお祈りするのだが、
 泣きは絵になる
とばかりに、あざとい編集をするのは止めてほしい。

マスコミ各社は
 すぐにどこかが受け入れればよかった
という論調なのだが、これは間違っている。
 救命できない施設に無理矢理搬送する
のは
 人殺し
と同じだからだ。なおかつ、昨今のマスコミの「救命救急失敗」バッシング報道は
 善意で受け入れたとしても、そこで死亡した場合は訴訟を起こされる可能性を高めた
ので、
 マンパワーも設備も整った病院
でなければ、搬送を受け入れられないのである。そうなると、今回のような
 深夜搬送に対し、宿直に手術に必要な人員が揃い、設備が整っていて、かつベッドに空きのある病院
というと
 吹田の国立循環器センター
くらいしかなかったのかもしれない。
 今回受け入れ可能だった病院の条件
を整理してくれたヒト達がいる。
【医療】分べん中意識不明:18病院が受け入れ拒否…出産…死亡 奈良[1017]★2スレッドより。


872 :名無しさん@七周年:2006/10/17(火) 17:55:04 ID:y5XqPhBo0
正直、今の裁判制度、昨今の判決を見ると、 「分娩中に脳出血を起こした妊婦」なんて、
地雷どころか、すでに導火線に火のついたダイナマイトも同然ですよ。

麻酔科医がいて、脳外科医が複数いて、産科医が複数いて、ハイリスク新生児を診られる小児科医がいて、
帝王切開と脳外緊急手術が同時にできてしかもNICUとICUをもっていて、それぞれに空床のある病院なんて、
日本中にいくつあるでしょうかね。 しかもそんな施設があったとしても、結果が悪ければ訴訟。

874 :麻酔科専門医 :2006/10/17(火) 17:56:43 ID:l09yLWA30
このケースを救命できる条件を考えてみました。

1)産科疾患以外の可能性も考慮に入れられる産科医がいる
2)頭部CTを迅速に撮れる体制にある
3)頭蓋内出血の有無・手術の可否を即座に決断でき、すぐ手術にはいれる脳外科医がいる
4)産科麻酔・脳外科麻酔の両方に精通した麻酔科医がいる
5)新生児が仮死状態のときすぐに救命できる周産期小児科医がいる・新生児ICUがある
6)ICU・せめて人工呼吸器が使える重症患者室がある

・・・これらの条件を整えられる施設でなければ、受け入れるのはむしろ罪です。
この条件を満たす施設でも救命できる可能性はかなり低いと思われますので。
これだけの施設が県内にいくつ存在するか疑問です。深夜だったということがさらに惜しまれます。

875 :名無しさん@七周年:2006/10/17(火) 17:57:33 ID:zOD17Dv+0
>>872
「深夜に」が抜けている。

全国でも5本の指に入るであろう産科施設で勉強したことがあるけど
深夜に脳外と麻酔は無理だろうな。


878 :名無しさん@七周年:2006/10/17(火) 17:58:52 ID:TantDeWB0
>>872
まぁ、だから国立循環しか受けられなかったのでしょう。
関東だったら、そうだなぁ。成育とNICUのある大学病院?
県立医科大が受け入れできない状況だったってことで、
この妊婦さんは気の毒なことに不幸に不運が重なっちゃったんだね。
妊娠中毒症以外に動脈瘤とはAVMとかは持ってなかったんだろうか?
ゼクはとれたの?

ただし、県立医科大にすぐ受け入れられてたとしても、
助かった可能性は低いんじゃないかナァ・・・。
助かったとしても後遺症は高い確率で残るでしょう。

となると、
だんなさんは乳飲み子に身体障害者を抱えてかもしれない。

879 :872:2006/10/17(火) 17:58:52 ID:y5XqPhBo0
>>874

県内にいくつあるかというより、日本中探していくつあるかのレベルだと思いますよ。

888 :麻酔科専門医 :2006/10/17(火) 18:03:23 ID:l09yLWA30
>>879 たしかにそうですね。

せめて妊娠前に未破裂動脈瘤やAVMの有無が確認できていたら、
タイトな管理の上で帝王切開、または硬膜外麻酔併用の減痛分娩を選択できたのに。
分娩の怖さを再認識しました。

880 :名無しさん@七周年:2006/10/17(火) 18:00:12 ID:N4jKM9Bi0
しょうがないで済ませたいやつ、誰でもいいから叩きたいやつ、
そういうやつがものごとをどんどんだめにしていくって気づかないかなあ
>>873
医療ミスは減らせる。
最近の社会学や人間工学の応用なんか見てみろよ
しょうがないじゃなく、起こさないように予防するにはどうすればいいか
ってことを考えなきゃだめだ。


というわけで、今回の事例は本当に難しいお産だったのだ。

ご遺族は
 意識が消失してから、搬送先を捜すまで、放置された状態だった1時間45分の間に、担当の産科医が仮眠を取っていた
ということにかなりの不信と不満を抱いていらっしゃるようだ。

さて、今回のケースがもたらすことについて。


884 :名無しさん@七周年:2006/10/17(火) 18:02:29 ID:1XUgBE3r0
>>874
質問です。

そのこと(=874さんの発言「これらの条件を整えられる施設でなければ、受け入れるのはむしろ罪です。 この条件を満たす施設でも救命できる可能性はかなり低い」)をマスコミはちゃんと理解していると思われますか。

また司法(福島の件は別として)はしっかり判断できるでしょうか。

よろしければ、ご意見をお聞かせください。

892 :名無しさん@七周年:2006/10/17(火) 18:06:05 ID:hWim64zT0
 病院の体制を考えると、脳出血の診断がついたとしても、治療は難しかっただろうと思う。脳外科医、麻酔科医、産科医、新生児科医等のマンパワー及び十分な管理ができる施設を要すると思われる。

 遺族は、病院の事後の対応(説明)に不満があり、脳出血を予測しなかったこと、脳外科を呼ばなかったこと、搬送までに相当時間がかかったことに憤慨しているようだが・・・。家族側からすれば、これらが満たされていたら助かっていたと思うのだろう。

 民事裁判にはなるだろうけど、刑事にならないことを祈ります。

893 :名無しさん@七周年:2006/10/17(火) 18:06:34 ID:TantDeWB0
>>884
横レスですが。
マスゴミは理解できてない可能性が高いし、
例え理解してたとしても、医者叩きのほうが数字が取れるから
医者叩きをすると思います。

司法は、もう、ダメ・・・。
トンデモな判決が産科領域以外にもイパーイ。

894 :名無しさん@七周年:2006/10/17(火) 18:06:49 ID:zOD17Dv+0
>>889
「不十分なのに受け入れ」がアウトなのは既に判例アリ。
今回「不十分なので受け入れ拒否」がアウトになったら、そのとき

救 急 指 定 返 上 チ キ ン レ ー ス

が始まる

932 :麻酔科専門医 :2006/10/17(火) 18:16:26 ID:l09yLWA30
>>884
>そのことをマスコミはちゃんと理解していると思われますか。
おそらく解らないと思います。
ハイリスクの周産期分娩を知らない人にとって、分娩は無事に身ふたつになって当たり前という感覚でしょうから。
また、これは考えたくないのですが・・・医師側に立った記事では部数が伸びないと判断するデスクもいるかもしれません。

>また司法(福島の件は別として)はしっかり判断できるでしょうか。
医師側が周産期の緊急性・この患者のリスクの高さをどこまで説明できるかにかかっていると思います。

参考になればよいのですが「LISA」という麻酔科の専門雑誌のバックナンバーで、今回のケースによく似た状況で麻酔科はどう対応するべきか?
という記事が特集されています。
この特集記事を執筆された先生方からの意見は、医療側にも司法側にも有用だと思います。

952 :名無しさん@七周年:2006/10/17(火) 18:21:23 ID:1XUgBE3r0
>>932
丁寧にお答えいただきありがとうございました。

産婦人科の訴訟が増加するのも、司法の知識不足(弁護側の説明不足)と

出産という幸せな状態から一挙に不幸な事態へと陥る事情にあるのでしょうかね。


今回の事例は、どういう方向に行くのだろうか。奈良県の産科減少が更に進むということにならなければいいのだが。

ちなみに、
 断った病院の意識
はこんなところだという。


936 :名無しさん@七周年:2006/10/17(火) 18:17:14 ID:aR+edcGF0
で、結局これは
分娩中に意識不明
母体が助かるか、子供が助かるか、それとも両方助からないか、
と言う結果になると裁判になるから18もの病院が断ったと
言うことですね?

結局マスコミとこれまでいろいろ裁判を起こしてきた人と
それをそそのかしたであろう弁護士の責任ということ?

951 :名無しさん@七周年:2006/10/17(火) 18:21:11 ID:zOD17Dv+0
>>936
1. 母体はおそらくどこへ行っても助からなかった
2. 子供が助かったのは運が良かった

でも2を感謝されることはなく1で訴えられるだろうな・・・
というのが普通の医者の感覚だろう。断って当然。


脳出血を起こす産婦というのはたまにあるが、母子ともに助からない場合も多いのだ。
 お産は100%安全ではない 母子ともに死亡リスクはある
のだが、今回の報道でもその点は意図的に触れられてない。むしろ
 子どもを母親が抱けなかった
などという感情的側面がクローズアップされている。
 若年の脳出血、特に出産時の脳出血がどういう転帰を取るか
という取材すれば簡単に分かる部分を
 それは視聴者や読み手に受けない
とばかりに、わざとオミットしているのだ。これは
 公正中立な報道ではなく、単なる感情論に乗っかったプロパガンダ
ではないのか。

この報道に知らず知らずに利用されている年若いご遺族が誠にお気の毒である。

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