「マスコミたらい回し」とは? (その4) 出産で容態が急変したら4割は県外に搬送 奈良県の「周産期医療」崩壊状態
今回の脳出血した産婦が死亡した、非常に稀で、なんとも難しいお産のケースで、大淀病院の産科医が警察に取り調べられそうだ。実は、
奈良県南部で常勤の産科医がいて、お産の出来る公立病院
というのは、ここくらいなもので、もし身柄を拘束されてしまったら
奈良県南部で安心してお産の出来る公立病院は全滅する
のである。高リスク産婦の搬送などの扱いを考えると、公立病院でお産ができなくなる損失はあまりにも大きい。個人病院から搬送依頼する場合、果たして、今回のケースのように
19もの病院に問い合わせる
ことが可能なのか。そもそも、今回は
公立病院からの依頼を県立医大が受けられずに、受け入れ先を探す
ということになったのだが、これが
個人病院からの依頼
だったら、果たしてここまでやってもらえるのだろうか、という不安がある。
奈良県の
周産期医療の崩壊ぶり
は、昨日の奈良県のローカルニュースでも流れた。
容態急変妊婦の4割を県外搬送県内では妊婦や胎児に高度な医療を行う国の基準を満たした病院が1つもなく、緊急の手術などが必要な妊婦の40%近くが県外に運ばれており、体制の整備が急がれています。
県によりますとおととし1年間に県内の医療機関で妊産婦の容態が悪化して高度な医療が必要になりほかの医療機関に移されたケースは207件ありますが、このうち37%に当たる77件は県内に受け入れ先が見つからず県外に運ばれたということです。
妊産婦や胎児に高度な治療を行う「母体・胎児集中治療管理室」に6つ以上のベッドを備る、という国の基準を満たす医療機関は県内には1つもなく、橿原市の県立医科大学附属病院の母体・胎児集中治療管理室に3つのベッドがあるのが最も多いのが現状です。
厚生労働省が来年度までに各都道府県に1か所以上、基準を満たす医療機関を置くよう求めているため県は県立医科大学附属病院のベッド数を3つ増やす方針で、県健康安全局の米田雅博次長は 「基準を満たす医療機関の整備が 遅れているのは確かだ。
今回のような不幸な事態が2度と起こらないよう整備を進めた い」
と話しています。
県外搬送4割ですよ。一体、県内の病院は何をやってるんだか。
平城遷都1300年記念事業
どころじゃないでしょ。そんなもんに税金投入する前に
県民を増やす努力、県民の健康を守る体制の整備
を先にして欲しい。
奈良県県議会厚生委員会での以下の議論を読めば、
いかに奈良県の周産期医療がダメか
は明白だ。今年の2/23の議事録より。
厚 生 委 員 会 記 録開催日時 平成18年2月23日(木) 13:34〜16:01
開催場所 第1委員会室
出席委員 9名
高柳 忠夫 委員長
今井 光子 副委員長
井岡 正徳 委員
森山 賀文 委員
田中 惟允 委員
辻本 黎士 委員
吉川 隆志 委員
国中 憲治 委員
秋本登志嗣 委員
欠席委員 なし
出席理事者 上森 健廣 福祉部長兼こども家庭局長
三上 貞昭 健康安全局長
松永 久典 生活環境部長 ほか、関係職員(略)
○今井副委員長 1つは、周産期医療の関係で質問させていただきたいと思います。
今、産婦人科が県下でどんどん閉鎖をされてきている。済生会奈良病院とか、榛原町立総合病院とか、もう既になくなっておりますし、最近では五條病院も危ないのではないかというような報道もされております。私も、過疎地・水資源等対策特別委員会のときにいろいろ調べましたら、吉野郡とか、宇陀郡とか、広大な地域で出産できる施設がないということがわかりまして、これはもう大変な問題だと思っているわけですけれども、平野部で出産すると言われておりますが、実際には里帰りで出産することも大変難しいと。ふだんから検診で診てもらっていなければ、出産もさせてもらえないような事態だということも聞いております。
以前は奈良県で、高リスクの出産とか未熟児などの問題で対応できないということで、たらい回しになりまして、他府県に運ばれたりしたということが問題になりまして、子ども専門病院をの運動が起こりましたし、私も議会でも再三取り上げたりしたんですけれども、その結果、小児の救急輪番とか医大の周産期センターなどが実現をされてきたと思っております。今の時点でこうした施設が十分機能して生かされているのかどうか。今の奈良県の周産期医療の実態は一体どうなっているのか。県としてこの問題をどう考えているのか。そのことをお尋ねしたいと思います。
(略)○三上健康安全局長 本県の周産期医療、この実態がどうかというご質問でございましたけれども、今後の取り組み、こういったことも含めてお返事したいと思います。
母体や胎児が非常に危険な妊婦、胎児がおなかにいる状態ですね、それともう1つ、低出生体重児、これは早く生まれた未熟児ですが、こういった人や子どもに産科や小児科の双方からの一貫した適切な治療を提供する周産期医療、これに関しましては、少子化対策として非常に重要であると考えます。
現状は、NICU、すなわち新生児の集中治療管理室、未熟児を主に入れる部屋ですが、これが県立医科大学に21床、県立奈良病院に9床、近畿大学医学部の奈良病院に10床、また、MFICU、これは母体・胎児集中管理室といいまして、母体を受け入れるところです。例えば早期破水で産まれそうとか、そういった人を受け入れるところですけれども、これが県立医大に3床、奈良病院に1床設置されておりまして、低出生体重児や母体を受け入れているという状態でございます。
また、県では、医大病院や県立奈良病院、近畿大学奈良病院、それから天理よろづ相談所病院、こういった県内の周産期医療機関の協力を得まして、周産期医療情報システム、こういうのをつくりましてネットワークを図って、周産期医療の必要な情報の収集、提供を行い、ハイリスク妊婦、低出生体重児受入れの迅速化、こういう点を図っているところでございます。
しかし、本県におきましては、NICUで集中治療を終えた新生児、これを受け入れる後方病床が、全国的に見ても極端に不足しているという状態でございます。このため、新たに受け入れることができるNICU、これが限定されてまいりますので、現在、新生児、未熟児ですが、産まれた子に関しては県内でほぼ100%受入れ可能という状態でございますが、救急搬送される母体、先ほどのハイリスクの妊婦でございますが、これにつきましては平成16年で207件中77件、約37%が大阪府等の県外の医療施設に搬送されているという現状でございます。
それから、また、周産期医療を担う小児科、産科の医師は全国的にも不足してございます。ただいまのご質問のとおりでございます。本県においても同様でございます。このような医師不足の解消を図るために、厚生労働省、総務省、それから文部科学省ですが、地域医療に関する関係省庁の連絡会議をつくりまして、平成17年8月に医師確保総合対策を策定いたしました。その中に小児科、産科医の配置が少ない病院が多く存在している地域では、病院相互の連携体制を構築することを前提としまして、少ない医療資源の集約化、重点化を推進するということが示されたところでございます。
県におきましても、このような周産期医療をめぐる課題についても検討を行いまして、県内で発生した周産期患者については、県内での医療の提供が可能な体制づくり、これを目指しまして、平成17年3月に、奈良県医療審議会の救急医療部会の中に周産期医療対策に係る専門的な事項を協議する周産期医療対策ワーキンググループを設置いたしました。このワーキンググループは、この平成17年度中に提言をまとめる予定でございまして、県としましては、この提言を受けて、安心して子どもが産めるよう、さらに周産期医療が充実するように体制整備を図っていきたいと考えております。
以上でございます。
というわけで、今回の事例は
県立医大病院の3床・県立奈良病院の1床のMFICUがふさがっていて、救急搬送を受け入れられなかった
ところから始まっていると見られる。てか、
高リスク妊婦
は
出産予定日のかなり前から病院で管理している状態
な訳で、そうした
出産予約のある妊婦以外が、緊急搬送されても、ベッドに空きがないのが現実
ではないのか。
まったくもって
奈良県の周産期医療の壊滅と行政の無策
が
大淀病院の産婦死亡の真の原因
なのだ。
そのことをマスコミが取り上げない理由をわたしは問いたい。
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