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2006-10-25

熊本県では高リスク妊婦は出産できない? 「搬送お断り」も 周産期医療の整備難しく 医療が薄い地域では「高リスク出産を淘汰したい」のが政府の方針か?

大淀病院産婦死亡事例を受けて、奈良県は
 大阪府に協力を依頼
したそうだが、それって
 大阪府民の税金で整備された周産期医療環境に「ただ乗り」してる
ってことじゃないですか?奈良県。ちゃんと
 大阪府に相応の分担金を支払う
のでしょうか。それに大阪のシステムは
 あくまで府内の妊産婦の実態に合わせて作られたモノ
だ。そこへ
 想定していなかった奈良県からの搬送を上乗せ
すれば
 本来、助かっていた大阪府内の母子が、奈良県からの搬送にはじき出されて死にいたるケースが出る可能性
があるのだ。

実際に
 熊本県からの搬送を受けて、福岡市で福岡市内の高リスク出産に支障が出ている
という。
読売より。


集中治療室や人手足りず、危険な妊婦断るケース相次ぐ

危険な状態の妊婦の受け入れを要請されながら、地域の中核病院がNICU(新生児集中治療室)の満床や人手不足のため、受け入れを断らざるを得ないケースが相次いでいる。

 熊本市民病院は昨年1年間で、地域の医療機関からの要請件数の4割強の受け入れができず、県外の病院まで搬送された妊婦もいた。福岡都市圏でも昨年、主要3病院が要請の3〜5割の搬送を断った。周産期医療を取り巻く厳しい状況が浮き彫りになっているが、地域間の格差も目立っており、厚生労働省はNICUの整備状況などを全国調査する方針。

 NICUは人工呼吸器、微量輸血・輸液ポンプなどを備え、低出生体重児や重い病気の新生児を24時間体制で治療する。

 熊本県で唯一、総合周産期母子医療センターに指定されている熊本市民病院(NICU15床)によると、昨年は131人の受け入れを打診され、うち58人は別の受け入れ先を探した。断った58人のうち24人は県内での受け入れができず、福岡大病院(福岡市)や鹿児島市立病院(鹿児島市)などに運ばれた九州内で受け入れ先が見つからず、山口大病院(山口県宇部市)に搬送されたケースもあった。

 熊本県は2002年の新生児死亡率が出生数1000人あたり3・0人で、全国平均1・7人を大きく上回り全国ワースト1になった。このため重症患者の多くを受け入れてきた市民病院は、翌03年から受け入れ数を抑制。スタッフを集中させて救命率のアップに取り組んでいる。

 この結果、超低出生体重児の救命率も02年の69%から昨年は91%に改善。市民病院の近藤裕一・新生児科部長は「一人ひとりを確実に助けるためには、県外の医療機関の手を借りざるを得ない。解消するには県内のNICU増床が必要だが、医師や看護師が不足するなか、実現が難しいのが現状」と苦渋をにじませる。

 熊本県から搬送が増加したこともあって、福岡都市圏でも受け入れを断らざるを得ないケースが増えている福岡県の総合周産期母子医療センターの一つに指定されている福岡大病院(NICU9床)には昨年1年間で167件の依頼があり、52件を断った。うち37件が満床、2件は産科や小児科スタッフの不足のためだった。

 九州医療センター(福岡市、3床)では88件のうち46件を断った。理由は29件が満床、9件がスタッフ不足九州大病院(同、12床)でも155件中、49件を断っていた

 瓦林達比古・福岡大病院長の話「患者が重なった時は『たらい回し』になっているのが現実だが、医療機関の連携と熱意で、いずれかの病院が受け入れている。これまでのところ搬送の遅れで死亡したケースはないが、この現状を解消するためには行政を交えて議論する必要がある」

要するに
 玉突き現象でベッドも人手も足りなくなる
のだ。
 高リスク出産
の場合、普通分娩に較べて、
 掛かる人手は何倍にもなる場合がある
わけで、一人搬送すると、現場の負担は倍増する。

しかし、熊本あたりでお産をするのは大変ですね。

bewaadさんは、
 助産師でまかなえるお産がナショナルミニマムと政府が考えている
と仰っているが
 お産には急変する場合がある
ので、
 出産途中までは普通分娩でも、急に大出血など大事に至る
のだ。だから
 普通分娩しか扱わない助産院から病院へ搬送される事例
があるわけなのだ。助産師さんから見て
 高リスクではない、普通の妊婦
であっても、油断は出来ないのだ。だから
 助産師が扱える普通のお産がナショナルミニマム
というが政府の方針だとすると
 普通の妊婦の急変が、医療サービスの薄いところで起きたら、「救命第一」ではなく「事故となってもやむを得ない」と政府が考えてる
ってことだ。
高市早苗少子化対策大臣を置いてるように、
 少子化対策
という言葉だけは一人歩きしているようだが、現実には
 周産期医療を担う人材も場も減ってしまっている
のでは、まったく意味がない。また
 周産期医療センターを建てた
だけでは、機能しないのだ。果たして
 自治体が周産期医療センターを作っても、そこで働いてくれる医師や看護師などのスタッフが集められるのか
は疑問だ。もし、大淀病院産婦死亡事例のように
 出来る限りの手を尽くしても、「医療ミス」とあげつらわれる
のであれば、周産期医療に携わる医療スタッフは、別な職場を求めるだろう。

しかし、bewaadさんの仰るのが
 政府の方針
だとすれば、
 医療が整備されてない地域に居住する「高リスク妊婦」予備軍を政府は切り捨てたい
ということになるな。つまり
1. 高リスク妊婦からは何らかのトラブルをかかえた子どもが生まれる比率が高い
2. 高リスク妊婦も出産によって何らかのトラブルをかかえる場合がある
3. 1と2にかかる医療費を抑制するためには、そもそもそうした「高リスク妊婦」が出産しやすい環境を、税収が不十分な、人口の少ない地域には作らない
っていう極めて
 悪魔的な算段を政府がめぐらせている
ってことになりますが、厚労省、そこまで考えてますか? 早い話
 高度医療によって助けられるようになった「これまでは救うことが出来なかった重症例」を、人口の少ない地域では「医療サービスの質を下げる」ことによって「再び淘汰する」政策
ってことですが。厚労省がどこまで考えてるか分からないけど
4. 出産時のトラブルによって、労働人口として日本に寄与できない状態になった母子を、これ以上増やさないように、人口の少ない地域から手をつける「優生選民政策」
ってことになりませんか?要するに
5. 十分な医療が受けられる地域に住んでいる妊婦以外は、なるべく「面倒なお産」で子供を産むな。金があるなら都会に住め
という政策じゃないかと。
どういうソロバンか分からないけど、お産って、
 一生にせいぜい1,2回のヒトが殆ど
だから、
 普段ほとんどかかることのなく、批判を受けにくい産科を狙い撃ちにした、ナショナルミニマム策定
だとすると、考えついた官僚は、地獄に堕ちるなあ。

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コメント

> 助産師でまかなえるお産がナショナルミニマムと政府が考えている

これはそのとおりでしょう。コストの関係で、日本の全地域で周産期
医療センターへのアクセスを増やすことはできないでしょう。

医療を受けたい妊婦には、各自治体の責任で妊婦/産褥婦に
周産期医療センターの近隣地区への滞在費を出すという方策を
とると考えればいいのではないでしょうか。

投稿: rigarash | 2006-10-25 16:50

rigarashさん、コメントありがとうございます。
どうもこういう施策だとすれば、まったく妊産婦に対する認識が欠如している事になると思いますね。たぶん、男性官僚主導の考えで、確率論で立てたプランではないかと。
前もって「周産期医療センター」に行ける産婦であれば、問題ありませんが、果たしてそんな恵まれた産婦はどのくらいいるのでしょうか。
妊娠時には、さまざまな不安が生じます。健康な妊婦であってもそうですし、健康な妊婦が何らかのトラブルをかかえる場合もありますし、出産時に急変することもあります。周産期医療センターが近隣にない急変の場合、今回の大淀病院のケースと同様のことが繰り返されます。
結局、そうした部分は「医療の薄い地域では我慢しろ」というのが政府の施策だとすると、「出生率を下げる」圧力にはならないかと心配します。結果的に母子どちらかもしくは双方に問題があった場合、訴訟になりますから、間違いなく、その地域の産科医がいなくなります。そうすると、ますます地域の医療は薄くなり、地域によって周産期死亡率が上がるかも知れません。今は、現場の先生たちがそれこそ犠牲的精神で前線を支えていますが、それも限界に近づいています。
以前は、たくさんの子供を産んでいた日本の女性も、今の60代ならせいぜい2-3人でしょう。一人と言うこともあります。助産師さんが取り上げていた時代は、家庭内に「経験豊富な経産婦がいた」おかげで、家族の協力でお産ができていたわけですが、たぶん60代くらいは病院出産に変わっていった世代でしょう。そうなると、お産のあり方が異なっています。
どうも厚労省は「50年前の日本」が好きなようで、その頃を基準としてこうした「お産の管理」を「家庭と地縁の知恵に丸投げ」して、ダメなら「経験豊富な経産婦や助産師の助言あるいは1次救急を受ける病院からの指示」でより高次の手当が受けられる病院へ搬送する、と考えてるのではないか、と感じています。しかし、そんな前提は崩壊してるのではないでしょうか。確かにネットにはさまざまな助言が満ちてますが、たとえば、いまだに原因不明で予測不能かつ重大な結果をもたらす胎盤早期剥離で大出血を起こし始めてるときに、ネットを参照している暇はないでしょう。つまりは「少数の死亡が避けられないお産は諦めろ」という断を下したのではないかと思っています。
家庭にすべてを押しつけて、介護もお産も管理せよ、というのなら、それは無理無体というものでしょう。赤ん坊をお腹にかかえ、かつ老齢の家族も介護せよというのが、この施策の行き着く先ではないかと思います。そうなると、妊娠管理が適切に行えるかどうか。家庭内の労働力を過大に見積もっているツケは、そのうち出てくると思っています。

投稿: iori3 | 2006-10-25 17:25

iori3さんの問題意識には賛同します。
その後私が考えた内容については、長くなったので、自らのblogで記事にしてみました。

投稿: rigarash | 2006-10-25 20:25

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