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2006-12-11

日唐律令制比較研究の新段階〜天聖令をめぐって〜@12/8お茶の水女子大学

時々小雨がぱらつく中を、二度道に迷ったり、携帯電話を東京駅で落としたり、とトラブルに巻き込まれ、17:30開始の講演会についたのは約40分遲れだった。黄正建氏の話は佳境に入っていて、ちょうど
 日唐令比較
のあたりに差し掛かっていた。
黄正建 天一閣藏《天聖令(附唐令)》的発現与整理(中文/簡体字) 2006/11/20
http://www.chinanbsk.com/index.php?categoryid=38&p51_articleid=1096

お茶の水女子大の院生諸君はさすがにしつけが行き届いていて、遅れてくる参加者(新潟や滋賀など、ほかにも遠地からの参加者あり)一人一人をチェック、レジュメを手渡し、出たばかりの
 天一閣蔵明鈔本天聖令校証(附唐令復原研究)(全2册)
を見せてくれる。最近いろんな外部のシンポジウムとか講演会に行くけれども、その中でもお茶大の院生諸君の対応はピカイチだった。てか、他がひどすぎるのではないかと思うが。他大学の院生は、お茶大の諸君に比べると、腰が重いし、目配りが効かないしな。単に学力的な水準の違いだけでなく、普段の先生方のご指導の賜物かつ東京という土地の特殊性によるものだろう。女子大では、女子であることがアドバンテージにならないし、男子学生の手を借りるという抜け道はないから、一般に女子大の学生諸君は、共学の女子学生と比較すると、大変よく働く。
下冊を手に取ったが、釈文と復元と考証の部分で、ざっとみただけでもこれからいろいろと楽しめそうだと確信する。
天聖令は宋の令だから、唐令に準ずる部分もあるが、一部は宋代に改変されている。見つかっているのは全部ではなく
 田令・厩牧令・賦役令・倉庫令・関市令・捕亡令・医疾令・假寧令・獄官令・営繕令・喪葬令・雜令
の十二令で十巻四万字ほど。このうち、医疾令は35条中、唐代の他の資料に見えない条文が17条見えるという。
 程錦 唐代女醫選取之制考釋 以唐《醫疾令》“女醫”條為中心(中文/繁体字) 2006/11/10
http://theory.people.com.cn/BIG5/49157/49163/5023500.html

裏話としては
 昨年、北京のパワーランチで、東大の大津透先生が「天聖令はどうなりましたか?」と聞いたら、そのときの参加者がほぼ全員『天聖令』整理組の人たちで、今回の天聖令整理・出版を、これだけはやく日中で研究する契機になった
というのがおもしろかった。大津先生のチェックによると
 つぶさにみると誤字などもあるけれども、これだけの短期間でこんなに立派な本を出したのは敬服に値する
そうだ。誤字はしょうがないからな〜。
黄正建氏の講演でも
 文字の比定
について、多々言及されていたが、実際に写本をあつかった経験があれば
 盡と畫
などの「揺れ」はよく目にするところである。

天聖令明鈔本の謎は
 写本でしかも誤字・誤写が多い
ことで、
 おそらく元となったものが稿本ではないか
というあたりだな〜。一行の文字数を揃えるための衍字があるということからは、
 明鈔本の雑さ
を示すにしても、もとの写本も
 稿本にしても、かなり私的な性格で早い段階のものではないか
という推測が成り立つ。刊行直前の段階のものだったら、もっと整理されているはずだしなぁ。

ところで、黄正建氏のレジュメには
 新発見された吐魯番文書の僧尼籍文書
について、ちらっと書かれていたのだが、
 来年整理・出版予定
だそうだ。こちらも楽しみである。なんせ
 唐代の僧尼籍の現物
らしいからな〜。

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