のだめカンタービレ Lesson10 フジ系 12/18 21:00-21:54
さて、
マラドーナ・ピアノコンクール本選
が中心の回。のだめも残すところあと2回で
どうやってドラマを終わらせるか
という方向を決めるのが今回だ。
今日は前の回と重なる8巻のLesson 45から、コンクール一次予選のところは一部飛ばして、9巻のLesson49までだ。ドラマの時間の流れは、原作の1/8の長さに圧縮されているので、エピソードの前後関係を改変している部分が多々ある。
いつものごとく
原作通りの部分とドラマオリジナルの部分が渾然としている回
で、原作ではわかりにくい
千秋がのだめに傾斜していく様子を示すシーン
は、視聴者にわかる形できちんと用意されている。ここへ来て日の目を見た
のだめの天才ぶり
は、
桃ヶ丘音大の掲示板に「マラドーナ・ピアノコンクール」本選出場者の名前を掲示
することで示した。のだめの仲間たちが
いつのまに!
と驚く様子で
のだめの豹変
を端的に示していて、このあたりの脚本のうまさには唸る。
本気で音楽と向き合って、ピアノを弾くのだめ
は、それまでだれも見たことがなかったわけだからな。
掲示を見た彩子が、のだめの分のチケットを持って、千秋のもとにやってくるシーンも、原作にはないのだが(原作では、のだめはコンクール後、完全な引きこもりになり、R☆Sオケの最終公演の時は実家に帰っていて、見に行かない)、ドラマ世界の流れをつくるためには、いい変更だったと思う。彩子が、千秋との別れを通して、声楽家として一皮むけるシーンをやらないのは、ちょっと残念だけど。
今回の役得は
ハリセン
だな〜。ここへ来て
のだめを思う教師像
が、実に丁寧に描かれていて、それをまた豊原功補が見事に演じている。原作ではここまで
学生思いのキャラクター
ではないのだが、脚本と
「楽しい現場」といわれている、幸福な現場では起きることがある「ケミストリー」
で、
入魂の演技
と言っていいと思う。若い上野樹里、玉木宏の熱演に、ベテランの豊原功補が応えた形で、
それまで「弟子のコンクール入賞」を勲章代わりにしていた熱血教師ハリセンが、のだめの「開花」とそれを支えているのだめの純情にほだされて、真実、学生思いの教師に変わっていく様子
が見て取れるのだ。原作通りのハリセンでは、好感度はここまで高くない。
白石美帆のかおりさん
も、好演。いかにも
元声楽家の音大教師妻
らしく、かつ
本気でのだめのことを心配し、世話している、のだめの一番のファン
に見えるのだ。単に演出の力なのではなく
現場の力
なのだと思う。その意味では
連続ドラマとして成功
している。本選当日、会場前で、のだめに
一曲目が終わったら挨拶せな
と諭すハリセンには、ちょっとほろっと来た。あのシーンは原作にはなく、ドラマで台詞を入れて、実によかったシーンだ。(原作では「神への冒涜や」と会場で譜読みをするのだめを前にハリセンが独白する)
問題の
ペトルーシュカに「今日の料理」が混じるシーン
は、やや疑問。
わかりやすい演出を手がける
のはわかるけど
繰り返し「今日の料理」のテーマが出てくる
のは、
作曲してる
訳ではないだろう。あまりにも
ペトルーシュカと「今日の料理」の部分の演奏タッチが違いすぎる
ので、あれでは
オクレール先生がのだめの才能を見いだす契機
としては、あまりに唐突だ。本当は
ペトルーシュカの曲調とタッチで「今日の料理」が混じる
のでないとね。
結局、
シューマンの後に会場をざわつかせる→「今日の料理」のテーマで会場が爆笑する
という流れにしたから、ああいう処理しかできないのだと思うのだが、それこそ
観客のコメントやモノローグで処理
すべきシーンだったように思う。てか、
あれがコンクール本選なら、かなり滅茶苦茶
だし、
才能の描き方としては失敗
だと思うな。ま、所詮ドラマといえばドラマなんだけど、
のだめの突き抜けた天才
が遺憾なく発揮されなければ意味のないシーンだから、演出家の限界が出てしまったというべきだろうか。たぶん川村ディレクターは
天才の恐ろしさに実人生で触れたことがない
んじゃないか、と思う。
のだめが、コンクールに失敗し、千秋が去っていった後に
それでもダメだったじゃないですか
と涙をこぼすシーンは、上野樹里の凄さが出ていた。ああ、この解釈でくるのか。
今日の最後のシーン、
ベートーベンの交響曲第7番
を振ろうとする千秋が、
今までは、のだめが座って、練習を見学していた椅子に誰もいないのを確かめる
ところで、
千秋の、のだめに対する感情
をうまく表していた。そして
関係ない
と突き放すモノローグは、原作では
かなり冷酷なイメージ
なのだが、ドラマでは、椅子のショットを入れたことで
救いのある、次につながる台詞
として生きていた。
今回ほど
原作のあるものが、実写版で実際に台詞が乗ったときの凄さ、楽しみ
を感じたことはない。原作だと幾通りにも解釈できる台詞を、
一つの方向に向けて収束させるために、ニュアンスを与えていく作業
が、
演出だけではなく、俳優の力によって、台詞の意味が引き出され、奥行きが生まれている
のは、すごい。ハリセン一人だけでなく
主役の二人と竹中直人に引きずられる形で、現場全体で個々の俳優の力が出ている(その分、力のない俳優はしんどいことになっているのだが)
のではないか。久々に
本当のドラマの現場
が醸成されたんだな、と思う。それこそ、
人間としても、時間的にも、ぎりぎりのスケジュール
で、制作されている民放のドラマで、これは奇蹟に近いかもしれない。
あと一回しかないのか。
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コメント
>hikarusさま
僕はこのドラマ、所謂「月9ドラマ」の最高傑作だと思います。
投稿: おでっさ | 2006-12-19 11:38
おでっささん、コメントありがとうございます。
いや〜、本当にすばらしい出来ですよね。はやくDVDに編集されたものがみたいです。
一応、1と5-10は録画が手元にあるのですけど、やっつけ編集になってる部分が修正されると、さらにすばらしいかと、期待してるのです。
しかし、来週でおしまいか〜。
のだめ見るから、その後で横浜帰る
と言ったら、
うちでも録画はできるよ〜
となだめられ、最終回は横浜で見ます。
投稿: iori3 | 2006-12-19 12:13