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2007-01-21

納豆ダイエットは虚偽データ (その6) 『週刊朝日』1/26号の記事を入手

今回の
 納豆ダイエット捏造問題を暴くきっかけとなった『週刊朝日』1/26号の記事
がJPEGファイルでネットに落ちていた。

以下は、画像から文字を起こしたもので、ひょっとしたら誤字脱字があるかも知れない。その点はご容赦ください。


週刊朝日 2007.1.26号 pp.128-129

「発掘! あるある大事典II」(フジテレビ系)が絶賛した
納豆ダイエットは本当に効くの?

納豆がいま、大変なことになっている。普段はスーパーなどで大量に安売りされているのに、ダイエット効果がある「最強の食材」としてテレビ番組に取り上げられ、各地で店頭から消える事態に。だが食べるだけでヤセるって本当なのか? あまり目くじらをたてるのもどうかと思うが、踊らされてはいませんか。

 納豆業界でトップのシェアを誇るタカノフーズ(本社・茨城県)の広報担当者は、電話口で申し訳なさそうに話した。
「ご迷惑をおかけして、大変申し訳ありません。こうした形でおわびを出すのは、会社始まって以来です」
 今月11日、同社は新聞各紙におわびを計算掲載した。生産能力をはるかに上回る注文が殺到したためで、国内七つの工場をフル稼働させているが追いついていないという。やはりおわびを掲載したというミツカン(本社・愛知県)の広報担当者も、
「例年比で3倍の受注で、これほど欠品が生じたのは初めて。たくさん売れるのはありがたいですが、安定して供給するのも仕事ですから……」
 業界を大混乱させた発端は、1月7日にフジテレビ系で包装された「発掘!あるある大事典II」。番組を見ていない読者のために、内容をおさらいしよう。
「食べるだけで、みるみるやせられる食材を、あるあるは大発掘しました!」
 まず進行役の堺正章が得意げに紹介する。女子アナの「明日の朝から誰でもすぐ始められます!」というセリフと同時に、画面に「食べてヤセる!!!食材Xの新事実」という文字がー。
 続いて、アメリカの最新の研究で「DHEA」というホルモンに、新たにヤセる効果が確認された事実が明らかにされる。
 56人の男女を二つのグループに分け、半年間、一方に普段どおりの食生活をしてもらい、もう一方には食生活に"ある成分"を取り入れたところ、後者は高いダイエット効果が得られたという。ここで「アメリカ生物学の権威」というテンプル大の教授が登場し、
「新発見に私自身、興奮していますよ」
 などとコメントした。
  DHEAハ大豆に含まれるイソフラボンが原料だ。
「大豆製品の中で、イソフラボンをもっとも効率よく摂取できるのは納豆です」
 という昭和女子大・中津川研一教授のコメントが紹介され、ここでようやく最強の「食材X」が納豆だと種明かしされる。
 納豆は、これまでダイエット食材としてはそれほど注目されたことはなかった。しかし番組は、こう説く。
「ただ食べてもダメで、食べ方に秘密がある」
 それが「納豆でヤセる黄金法則」。1.1日に2パック食べる 2. 朝晩食べる 3. よく混ぜて20分放置する、の三つだ。それぞれ根拠は、1. DHEAを増やすのに必要なイソフラボンは1日およそ70ミリグラムで、納豆2パックに相当する 2. 血液中のイソフラボンを一定に保つのに、朝と晩に分けたほうが効果的 3. よく混ぜることで発酵が進み、その過程で増えるポリアミンという物質が脂肪の燃焼を促す、というものだった。
「ポリアミンには若返り効果だけではなく、基礎代謝を高める効果があることが最近の研究でわかってきました」
 と、千葉大大学院薬学研究院の五十嵐一衛教授がコメント。ポリアミンは過去にも番組で「若返りホルモン」として紹介しているが、ダイエットにも効果がある、との新事実が強調された。
 この"黄金法則"を立証すべく、番組では20代から50代の男女8人に普段の食事量を変えずに2週間、納豆を食べ続けてもらった結果、8人全員に0.9キロから3.4キロの減量効果が表れた。さらに全員の血管年齢が若返るなど、「法則」の正しさが立証されたー。
 これがあらましである。
 一見もっともらしく思えるかもしれない。だが本当なのだろうか。
 近著に『ウソが9割 健康TV』(リヨン社)がある臨床環境医の三好基晴さんは、番組を見てとっさに「ねつ造では」と感じた。
 まず問題に思ったのは、実験のサンプル数だ。
「8人という数は少なすぎる。それに8人はどういう基準で選ばれたのか、ダイエットの企画ということで、やせなければという強迫観念や暗黙の了解があり、普段より運動したり、食事を控えたりした可能性も考えられます」

「流すのは都合いい情報だけ」
 食品の安全の問題に詳しい千葉大大学院自然科学研究科の松田友義教授も、実験の結果に疑問を抱いた。
「納豆は賞味期限を2、3日過ぎたものが一番おいしいというぐらいですし、いつ食べるかで結果が違う可能性もある。20分置いた場合とそうでない場合に差があるとか、もっと傍証を提示しない限り、データの信憑性を疑われても仕方ないでしょう」
 そもそも、ポリアミンが増えるまで待つ時間がなぜ20分なのか、20分たつとどれだけポリアミンが増えるのかといったデータも、番組を見ただけでは皆目わからない。
 さらに番組では、アメリカでの研究を引き合いに納豆の有効性につなげる構成だったが、これは"トリック"の可能性がある、と前出の三好さんは指摘する。
「まるで被験者が納豆を食べたかのように放送していますが、実際にはDHEAの錠剤を飲んだのでは。ポリアミンにダイエット効果があるとうたっていますが、それもトリックでしょう。やせるほどの量を納豆でとれるはずがありません」
『食品の裏側』(東洋経済新報社)の著者、安倍司さんは、もともと「あるある」に批判的だ。
「彼らが罪作りなのは、金融商品と同じで都合のいい情報のみを流すこと。今回のケースなら納豆2パックを食べさえすれば、後はバランスを考えなくていいという誤解を与えかねない。
 センセーショナルに紹介するたびに、欠品を生じさせないために流通が混乱する。業界はいい迷惑です」
 全国の約300社の納豆業者が加盟する「全国納豆協同組合連合会」納豆PRセンターの緒方則行さんも、
「納豆は薬ではないから、もちろん納豆を食べるだけでヤセることはありません。ただ、納豆が健康にいいことは確かなので、複合的な要因が重なって効果が得られるのだと思います」
 との答え。
 納豆好きが高じて『納豆の快楽』(講談社)という本まで書いた東京農業大教授の小泉武夫さんは、
「納豆のダイエット効果? 初めて聞いた。僕は20年以上、毎日2パック納豆食ってるけど、おいしくてごはんを何杯も食べちゃうから全然やせないよ。カラダにいいからじゃなくて、心からおいしいと思うから食べている。でないと飽きて続かないよ」
 本誌は番組を制作した関西テレビにダイエット効果の詳しい根拠を聞いたが、
「番組は信頼できる情報・学説をもとに構成・放送しております。番組内での実験についても、条件や結果などを開示しており、番組全体を通じて、必要十分な情報を提供していると考えております」
 と"具体性"に乏しい、まさに番組に似つかわしくない答えだった。

本誌・佐藤秀男、神田知子

確かに
 アメリカで納豆を食べさせて実験
って、
 それはあり得なさそう
と疑問に思うよね。

もう一つ、昨日のエントリーにSMEさんからいただいたコメントで、上記記事にある
 『ウソが9割 健康TV』の著者 三好基晴氏
が昨年末に書いた
 「納豆で血液サラサラ」は嘘 「あるある大事典」とNHKのトリック
三好基晴 15:08 12/27 2006
http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=563
をご教示いただいた。ありがとうございました。
三好氏は、


「あるある大事典」は納豆の血液効果、「ためしてガッテン」は納豆の血栓防御効果があるかのように視聴者に思い込ませてきた。NHK「生活ほっとモーニング」も納豆効果を9月に放映したので、私が医師の立場から疑問をぶつけたところ、「ナットウキナーゼ(納豆菌がつくる酵素)が血液中に吸収されないことは認識している。血栓を溶かしているとは言っていない」と放送内容とは矛盾することを言い出し、さらに「否定の論文がないから肯定した」とあきれる回答をしてきた。

という出だしで、
 納豆で血液サラサラ
に反論している。わたしはMy News Japanの会員ではないので、この三好氏の記事をすべて読むことはできないのだが、公開されている部分では
 「納豆が血液をサラサラにする」という巷間の俗説
をばっさり斬っている。
三好氏の反論の妥当性は専門家に任せるとして、三好氏が危惧を抱いているこうした
 物事を単純化してテレビの電波に乗せる行為がまかり通っている
現状については、やはりおかしいと思う。しかも
 天下の公共放送 NHK
まで
 根拠不十分な「健康情報」の垂れ流し
に荷担しているのであれば、これはあかんのと違うか?

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コメント

私は人力検索かけました
http://q.hatena.ne.jp/1169313009

sup-komiの小内亨先生の連載「怪しい健康情報の見抜き方」は良いですよ。
リンクが切れてるので、URLの最後の番号を変えて直打ちする必要がありますけど。
確か本になってたはず。

投稿: biaslook | 2007-01-21 22:01

今回の騒ぎには本当にあきれますよね。納豆だけ食べてやせるなんて、ありえないでしょう。
あるあるの情報が怪しいなんて、少し実験をかじればわかるようなもの。
テレビで言っているとか、大学教授が言っているとかですぐ信じるのもどうかと思いますよ。
昭和女子大栄養科学系講座の中津川研一教授が、「私は番組内容を知らなかった」と言ってますが、本当ですかね。
ググると以前にもあるあるに協力しているのですが。

投稿: yumipapa | 2007-01-22 00:31

「今月11日、同社は新聞各紙におわびを計算した。」×計算○掲載

投稿: 誤字報告 | 2007-01-22 09:29

以下のような作用があるから、坑血栓作用があると思われているのかもしれませんね
http://www.okusuri110.com/dwm/sen/sen33/sen3332001.html

投稿: tune | 2007-01-22 20:28

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