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2007-01-09

NICUの光と影 朝日の連載はそこまでつっこめるか

朝日の生活欄
 患者を生きる
では、今日から
 ルポ NICU
が始まった。NICUは
 生まれてすぐ救命治療を行わなければならない新生児のための集中治療室
のことで、成人のICUとは異なり、
 クベース(保育器)
が設置されている。超低出生体重児(1000g以下)の子どもの場合、無事に生まれても、育つかどうかはわからない。

たまたまネットサーフィンしてみつけた
 24週(妊娠六ヶ月)600gほどで誕生、ほとんどNICUを出ることなく2歳で亡くなったお子さんの記録
http://www.asahi-net.or.jp/~FS6I-KMSK/yuka/iloveyuka.htm
がある。これを読むと、
 NICUがなぜ空かないのか
が理解できる。わたしたちは
 NICUから出て、普通に育つ
と思いこんでいるが、NICU入りした赤ちゃんの中には、上記のお子さんのように、厳重に管理されながら、短い一生をNICUの中で終える場合もあるのだ。

NICUが設置されているにもかかわらず、長期治療を要する患児のために、新生児が利用できない状況が多いことについては、昨年末に毎日が報じた。


新生児集中治療室:NICUに「寝たきり」赤ちゃん 満床の背景、厚労省が実態把握へ

 厚生労働省は、病床数不足が指摘されている「新生児集中治療室」(NICU)の実態を把握するため、全国調査を実施することを決めた。年内に調査項目を整理し、年明けにも都道府県に指示する。満床の背景とされる長期入院の重症児の現状も調べ、周産期医療体制が機能しているかを検証する。結果は早急にまとめ、体制整備に生かす方針だ。【玉木達也】

 ◇04年調査時「退院見込みなし76人」

 NICUは低体重や先天的な異常がある新生児を救命する施設。調査は今年8月、奈良県で意識不明の妊婦がNICUのベッド満床などを理由に19病院で受け入れられずに死亡したことなどをきっかけに行う。
 日本産婦人科医会や研究者が過去にNICUを対象に行った調査も参考にし、調査表を作成。NICUがある施設数やベッド数などの基本情報から、緊急性が高く要請があった妊婦をNICUで受け入れができなかった件数やその理由なども調査したい考えだ。
 厚労省によると、リスクの高い出産に対応できる医療施設「総合周産期母子医療センター」は今年7月現在、39都道府県に計61施設。同センターはNICUの病床数が原則9床以上で、一般の産科病院などと連携し、周産期医療ネットワークの中心を担う。国はネットワークを07年度中に全都道府県で整備するのを目指している。しかし、奈良など8県では現在、同センターに指定された医療施設がない状態だ。
 NICUを巡っては、同医会が04年に全国363施設を対象に、03年1年間の入院状況を調査。248施設が回答し、この結果、1年以上の長期入院児は130人。このうち、76人が退院の見込みがなく、さらに70人は呼吸管理が必要だった。
 同医会では、人工呼吸管理ベッドが1〜4床のNICUが全体の約3割のため、長期入院児が新規患者の受け入れを難しくしている原因の一つと分析している。05年7月、日本医師会などと連名で、厚労省に長期入院児が治療を受けられる後方支援施設の充実を要望していた。
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 ■解説
 ◇支援医療、体制整備急げ
 今回の厚生労働省の実態調査は、重篤な赤ちゃんの医療をどうするのかという問題を、正面から考えるきっかけにもなりそうだ。
 周産期医療の進歩で、従来は生存が難しかった重症の新生児の救命が可能になった。一方で、日本産婦人科医会の調査でも、呼吸管理が必要で「新生児集中治療室」(NICU)からの退院が難しい重症児の存在が浮上。1年以上の長期入院児130人のうち、13人は6年1カ月以上入院していた。厚労省の調査では、その深刻な状況がさらに浮き彫りになる可能性が高い。
 赤ちゃんの終末医療を巡っては、厚労省の研究班が「重篤な疾患を持つ新生児の医療をめぐる話し合いのガイドライン」を作成している。その中で、生命維持治療の差し控えや中止は、子どもの最善の利益を十分に話し合い、慎重に検討すべきだと提言している。
 厚労省は現在、「終末期医療に関するガイドライン」(たたき台)をホームページ上に公開し、一般から意見募集をしている。ただ、主に成人を想定しており、赤ちゃんについて議論が深まっているという状況ではない。自分で意思表示が出来ない赤ちゃんの終末医療をどうするのか。避けては通れないテーマだ。
 実態調査は、妊婦が安全で安心して赤ちゃんを出産できる周産期医療体制が、十分に確保できているかを検証する作業になる。その結果を踏まえて、医師不足の解消やNICU、後方支援施設の拡充などの整備はもちろん重要だ。
 NICUの現場を視察し、長期入院児の様子を見た厚労省のある幹部は「赤ちゃんの終末医療がどうあるべきかを真剣に考えなければならない」との感想をもらした。それも視野に入れた調査と対策をしなければ、周産期医療の抜本的な問題解決にはつながらないだろう。【玉木達也】
毎日新聞 2006年12月17日 東京朝刊

NICUに6年以上いる、ってことは、社会的生存状態が保証されてない、ということではないのか。しかも、1年以上の長期にわたってNICUに入っている130人のうち13人が6年以上治療を受けている、というのは、長期治療を要する重症の子どもの10人に1人は、学齢に達してもNICUを出られない、ということではないのか。1年以上NICUを出られない130人のうち、76人に退院の見込みがない、ということは、
 その子どもが使っているNICUは、その子が死ぬまで空かない
という意味ではないのか?
普通の子どもだったら、とっくに保育園や幼稚園に通っている年齢で、NICUにいるという状況は、家族にとっても、医療関係者にとっても、凄絶なものがある。かつ、その年齢であれば、
 NICUではない、生命維持のための病床が別に必要
なのではないか? 1年以上NICUにいること自体、NICUが本来目指していた機能とは違った様相を呈しているのではないか。

果たして朝日の連載がこうした
 高度医療によって「死なないけれども、社会的生存と認められるかどうかグレーな状態の子ども達」
の問題にどこまで迫れるのか、注目したい。

一昔前であれば、子どもはよく死んだ。一歳を迎えられない子どもが多かった記憶が残るハワイでは、今でも
 一歳の祝い
を盛大に行う。子どもが死ななくなった一方で、
 死んではいないが、「子ども」として社会的に生きているとは言い難い重態の乳幼児

 新たに出現
しているのだ。
 低体重のわずか500gで生まれた赤ちゃんが助かった
というのはニュースになるが
 その赤ちゃんが誕生日を迎えてもNICUから出られない
という話は、報道されることがない。先ほど、引用した600gほどで生まれた赤ちゃんも、一歳で3700gとようやく新生児並の体重になり、亡くなる直前には、低酸素状態から脳障害を引き起こし、最後は力尽きて亡くなっている。この間、2年余り。

不妊治療で多胎妊娠すると、低体重児が生まれる確率が高まる。多胎であれば、人数分NICUのベッドが必要になる。一人の赤ちゃんの管理でも大変なのだが、それが一気に複数になるわけで、受け入れる病院の負担も大きくなる。場合によっては、別々な病院の空いているNICUに運ばれることもあるだろう。
NICUに運ばれた後、無事にNICUを出たとしても、低体重児には、生まれながらに様々なリスクがあり、不運な場合は、未熟児網膜症など障碍を負うこともあるのだ。
 2006-11-20 未熟児網膜症による失明を防げ 新手術で8割防げる しかし失敗する2割が訴訟に持ち込むならば、普及には暗雲
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2006/11/82_d330.html
厚労省は全国で年間8万人が不妊治療を受けていると発表していたが、その内、いったい、健常な赤ちゃんが授かる率はどのくらいなのかは発表していない。多胎妊娠でなくても、母親が高齢の場合は、早・流産の危険性が高まるから、早産であれば、やはりNICUのお世話になるだろう。子どもの負うリスクを検証せず、いたずらに不妊治療を煽れば、今後もNICUの必要数は減ることはないだろうし、NICUを長期にわたって使用する傾向も変わらないだろう。
生むよりも、育てる方が大変なのだ。自然妊娠であれば、妊娠中には「今が一番楽なんだよ〜。これからが大変だからね。」と周りは声を掛けるし、そのつもりで準備するだろう。しかし、不妊治療は妊娠がゴールだ。
「育てる」ファクターを切り捨てている不妊治療を煽る風潮は、「生まれた子どもは思い通りの子ども」という錯覚を助長する。せっかく授かった子どもに、何か問題があった場合、それが夜泣きであれ、双子・三つ子であれ、低体重で生まれたために負ったハンディであれ、絶望して、子どもを殺してしまったり、母親が自殺したり、するのではないか。最近、高齢の母親が幼い我が子を手に掛ける事件が報じられるたびに、背後に不妊治療があるのでは、と想像してしまうのだ。育児ノイローゼは、普通の妊娠・出産でもあることだが、不妊治療が原因となりがちな低体重児をめぐるトラブルについては、もっと周知徹底しないと、出産後の悲劇は増える一方なのではないか。

新生児医療に関しては、抜本的な体制の見直しが必要になっている。

子供が生まれるのはめでたいことなのだが、予後が極めて難しい場合、家族が支えきれるかどうか。6年もNICUに入っていて、退院の見通しが立たないお子さんの場合、家族の精神的・肉体的・経済的負担は極限に達してるのではないか。NICUの影の部分は、表に出ることが少ない。

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コメント

 某役所の担当課にいますが、うちは周産期医療センターが無いということで奈良の事件以降、マスコミが寄ってたかってあら探し?の取材に来ましたが、あいにくと周産期死亡率がトップクラスに低かったので、しょんぼりして帰っていきますし、いい話なのにそんなのは記事にしてもらえません
 うちの地域でトップクラスのDr.曰く「昔は死産だったのが、今は死産でなくなっただけ。 乳幼児期まで持つ子供さんは少ない」とぼそっと言ってました
 確かに医療は進歩したけど、万能ではないと言うことを理解してほしいとあちこちで耳にします
 また、NICUという言葉に騙されがちですが、NICUを名乗るには確か3:1の看護体制が必要だったと思うのですが、患者さんがいないかもしれない という状況で、医療機関はそのような看護体制は採算上も取れないので、NICUを設置できるのは 大きい(患者さんの多い)病院に限られてくると思います
 が、小さいところでもNICUを名乗らずに、それに準じた体制のところはありますので、医療技術と出生数と周辺の産婦人科の体制で、(医療点数は低くなりますが)NICUという名称にはこだわらずにやっているところも多いようです

投稿: tune | 2007-01-10 01:30

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