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2007-02-02

「マスコミたらい回し」とは?(その40) 奈良県警、大淀病院産婦死亡事例を立件見送りへ

合掌。
極めてまれなで不幸な転帰を取った事例について、ようやく、奈良県警が結論を出しそうだ。報道の暴走に、警察が引きずられなかった。
毎日より。


奈良妊婦死亡:転送先探し難航の末、立件は見送り

 奈良県大淀町の町立大淀病院で昨年8月、意識不明となった妊婦の高崎実香さん(当時32歳)が転送先探しが難航した末、死亡した問題で、奈良県警は、業務上過失致死容疑での同病院医師らの立件を見送る方針を固めた。死因となった脳内出血と、担当医が診断した子癇(しかん)発作との判別は困難で、刑事責任を問えないと判断した。今月中に遺族に捜査の経緯を説明し、最終判断する。
 病院側は問題発覚直後の会見で、「脳内出血でなく、子癇発作の疑いとした点で判断ミスがあった」と発言。県警は任意で提出されたカルテなどを基に専門家約20人に意見を求めたが、脳内出血と子癇発作は、意識喪失やけいれんなどの症状が似ているため識別が困難との意見が大半を占めた。さらに、遺体が司法解剖されず、法医学的な証拠に乏しい点も捜査を難しくしたとみられる。
 高崎さんは昨年8月8日午前0時ごろ、分娩(ぶんべん)中に意識不明に陥った。19病院に受け入れ不能とされた。結局、約60キロ離れた国立循環器病センター(大阪府吹田市)に搬送され、男児を出産後、死亡した。【高瀬浩平】
毎日新聞 2007年2月2日 3時00分

ひょっとしたら、母子ともに助からない可能性もあった難しい事例だった。赤ちゃんが低酸素状態で生まれてくることだって十分考えられた。不幸中の幸いは、赤ちゃんが無事に育っていることである。
奈良県警が捜査を始めた段階で
 搬送を拒否した病院も罪に問えないか
という話が出たために、
 もし、そんなことで立件されたら、全国の救急医療が壊滅する
と現場は震撼した。報道が始まった当初、マスコミがはやし立てた
 ベッドがなくても搬送
が可能なのは野戦病院だけである。術後管理をしなくてはいけない患者さんを廊下に放り出すことは
 医療行為の放棄
に等しい。感染症で殺すことになる。それは医療ではない。

大淀病院産婦死亡事例の過熱した報道が、もたらした社会的影響はあまりにも大きい。事実、奈良県南部の産科は壊滅した。産科崩壊で、奈良県北部だけでなく、周辺の大阪などにも「産科ドミノ倒し」の余波は及んでいる。高リスク妊婦にとっては、しんどい状況が続くし、たとえ出産までは何もない場合でも
 お産では何が起こるかわからない
のである。最近は、急変したとき、搬送先が見つかるまでの時間が、明らかに長くなってきているという。

昨年10月17日から始まった報道の暴走は、大淀病院の産科を3月に閉鎖させるだけではない。奈良・大阪・京都・兵庫の妊産婦と新生児を、「産科ドミノ倒し」による危機に巻き込んでいるのである。
誤報とミスリードによる、大淀病院産婦死亡事例の「マル特」を抜いた毎日新聞奈良支局は、自分たちのペンが引き起こした惨状にどう責任を取るつもりなのか。

独り言。
そういや、こないだ高取町の現説で、たぶん毎日新聞奈良支局の考古担当の記者だと思われる人物にガンを飛ばされたような気がするな。まあ気のせいだとは思いますが、もしそんな暇があるんなら、もっと考古記事ちゃんと書いてね。中本記者が異動してから、記事のレベルがガタ落ちですよ、毎日新聞奈良支局。

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[シェアブログ504に投稿] ちょっと気になっていて、ずっと関連記事や関係ブログを読んでいたんだけど、結局は不起訴ということらしい。 [続きを読む]

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 結局、この地区からお産が出来なくなったこと…それだけとは言わないが、それに近い結果になりましたね。地元住民にとってはかけがえのない医療機関の大切な機能を失わせることになった毎日新聞さ...... [続きを読む]

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