Nスペ 介護の人材が逃げていく@3/11 21:00-21:50 NHK総合
この番組があと2年早く作られていたら、意味があっただろう。
しかし
介護の現場は低賃金で使い捨て
という事実がこれだけ周知されている現在、
経済的な問題を数値抜きに情緒的に切り取るだけ
の手法では、まったく賛同できない。
淡々と訴えかけるドキュメンタリー
のつもりだろうが
実際の介護職員の経済的困窮や身体的苦痛
についてはオミットし、ただ
景気が良くなったから、職員が集まらない
介護報酬の引き下げ(それも具体的にわかる形でなくイメージだけの提示)が経営を圧迫してる
とかいうのでは
もともと介護士資格が「やらずぶったくり」で「人の役に立ちたい」という青少年、とくに女性の純粋な動機を踏みにじり、高い学費で資格を取らせる介護教育ビジネスを肥え太らせ、資格を取った後は介護労働市場が安く買い叩く構造的な「若者潰し」政策で運営されている
あたりを全く考えてないのだ。
このあたりについては、以前書いた。
2005-05-22 介護のヘルパーは簡易デリヘルじゃない
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/05/post_465e.html
2005-05-24 介護のヘルパーは簡易デリヘルじゃない (その2) 介助者の人権は無視? ある人の妹が受けたセクハラの実情
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/05/_2__49ec.html
2005-05-25 介護のヘルパーは簡易デリヘルじゃない (その3) これが本当なら、ほぼ犯罪に近いセクハラ
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/05/_3__aea6.html
おい、制作者、
きちんと金額を挙げて、カネの話をしろ
よ。「みなさまの受信料」で番組を制作して、給料を貰っている立場なんだから、そのあたりははっきりさせてくれないとな。全然説得力がないぞ。
以前、知っている範囲で、ホームヘルパー二級の資格取得講座がらみで、ちょっとしたことがあった。
資格取得を目指す人は、
余った時間を福祉に役立てたいと考える主婦層
や
人間愛に燃える若い女子大生
など善良な市民なのだが、運営側は、最後は
資格講座のために雇った事務担当者が辞める
という凄いことになった。結局
金儲けのために、講座を開く体制
に事務担当者が耐えきれなくなったからだ。
こんなやり方で、資格を取らせていいんですか
と、事務担当者が悲鳴を上げていたのを覚えている。資格取得講座の受講料は結構な金額だったと思ったけどな。その後、だんだん講座には人が集まらなくなったと聞くが、どうなったことやら。結局、
講座を開く要件さえ満たしていれば、内容を問われない
わけで、
こんなんでホームヘルパー二級です、いわれても、わたし困ります
と辞めた事務担当者は嘆いていた。あの当時、あちこちでこの手の講座が開かれていたが、まさに
玉石混淆
で、きちんとした講座もあれば、
ちょっとした金儲けの種
にしか考えてなかったところもあるだろう。間違って儲け主義の講座に行ってしまった受講生にははなはだお気の毒だと思う。
その当時から
福祉の分野では、大学や短大、専門学校へ行って、金を掛けて資格を取っても、生涯賃金がその掛けた金額に見合わないのではないか
と言われているのである。5年以上前の話だ。
今日のNスペは、そのあたりを全くオミットしてしまい、
単に低賃金の「ワーキングプア」としての福祉職
を、かなり端折って描くだけだった。
今日出てきたグループホームでも
一体、入居者の利用料はいくらなのか
というあたりは分からない。例えば
最初に何千万円か払って、月々さらに数十万円を払う高齢者施設
というのも世の中には存在し、最近は東京の私鉄沿線で盛んに開所を宣伝している。こうした次々オープンする施設と
介護職員が集まらない施設
の間にはどんな違いがあるのか。それすら分からないのだ。
視聴者が知りたいのは
一体いくら払えば、応分のサービスが受けられるのか
ではないのか。
グループホームではかかるお金はいくらで、施設で使うお金はいくらで、受けられるサービスはこういう水準
ということを打ち出さないで
人員が足りない
では、誰も納得しないだろう。単なる
高齢者の経済的な格差が、老後のサービスの格差を生んでいる
のか、それとも本当に
どの高齢者向け施設にも満遍なく人が集まらなくなっているのか
がわからないのだ。
介護報酬
の話をするなら、
漠然とした話ではなく、きちんとした金額を明示しろ
と言いたい。そうでないと
ああ大変ね、じゃ、辞めたら? 結婚もしたいだろうし、そんな仕事なら続けられないでしょ?
という雑駁な印象しか残らないだろう。
結局
綺麗事で話をまとめようとしているだけ
の
制作者が傷つかない、まったく踏み込んでいないドキュメンタリー
で、よくこんな企画に
日曜のNスペ枠を割り当てたものだ
と、わたしは呆れているのである。もう、NHKの福祉系番組は
綺麗事を並べて、嘘で塗り固めるのがデフォルト
ですか。
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コメント
まぁ、元:NHK解説委員→現:福祉「ジャーナリスト」って肩書きの
村○幸子さんもよく出てますから(特にラジオ第一の深夜)
先進的な介護施設の紹介はするけれど、この番組で本来踏み込むべき事案や問題点は
殆ど突っ込まないし話さない。
これでよく「ジャーナリスト」名乗れるよなぁ、と呆れかえってますw
投稿: おばQ | 2007-03-12 15:10
フィリピンの介護士の間でも不人気でしたね、日本。
まあ、わざわざ日本語を覚えて奴隷扱いの日本に来なくても
英語圏のよその国に行ったほうが投資も少なく、
よほどいい待遇だからなぁ。
「お前らが辞めたら、海外の医師が安い賃金で来るんだよ!」
という捨て台詞を患者「様」に吐かれたことがありますが
んなわけねーじゃん、って思ってたのは妄想ではなかったようです。
投稿: ナルコレプ死 | 2007-03-13 00:21