医師不足なのに「確保」って何? 「招聘」じゃないの?
産科医不足、小児科不足、救急閉鎖と世間では
医師が不足しているので、「確保」したい
などという答弁が地方議会でなされたり、報道されたりしている。
確保といえば
身柄を確保
だ。
ググってみると
コンビニ連続強盗 身柄確保の男を逮捕へ<3/3 11:52>東京・文京区などのコンビニエンスストアで連続強盗事件が起き、警視庁は現在、現場近くで身柄を確保した男の逮捕状を請求している。
3日午前5時ごろ、文京区と千代田区のコンビニエンスストアに刃物を持った男が押し入り、現金計21万円が奪われた。男は約10分の間に2件の店を襲って逃走したが、3日午前6時ごろ、警視庁の警察官が身長約185センチ、25歳くらいという犯人の特徴に似た男を発見し、身柄を確保した。男は黙秘しているが、警視庁は強盗容疑でまもなく逮捕する方針。
とか
渋谷のマンションに発砲 男2人の身柄を確保
02/06 08:596日午前6時20分ごろ、東京都渋谷区道玄坂、マンション「ヴェラハイツ」で発砲音が3回あったと、通行人が110番した。警視庁渋谷署が調べたところ、5階の一室の玄関ドアに3つの弾痕があり、近くに薬莢(やっきょう)3つが落ちていた。けが人はなかった。警視庁は男2人の身柄を確保し、事情を聴いている。
調べでは、同室は空室だが、以前、指定暴力団国粋会系落合会の組事務所が入居していた。現在は同マンションの4階に移っているという。国粋会は平成17年9月に山口組の傘下に入っている。現場はJR渋谷駅近くの繁華街。
午前5時40分ごろにも、豊島区高田のマンションで発砲音がしたとの情報があり、目白署が確認を急いでいる。
港区西麻布の路上で5日、指定暴力団住吉会系組幹部(43)が射殺され、指定暴力団山口組関係者が出入りする事務所がある同区麻布十番のマンションでも発砲事件があった。警視庁は抗争事件に発展した可能性が高いとみて、関連を調べている。
とか
犯罪者を捕まえる場合に使われる
のだが、
人を癒す仕事の医師を、病院に呼ぶ
場合に使われるとは知らなかった。普通、
何か自分の都合で、他人にある責任ある地位に就いてもらう場合
は、
招聘
という言葉を使うのではないのか。
で、更にググってみたら、国がこんなことを言ってるのね。
医師確保総合対策(概要) 平成17年8月11日、地域医療に関する関係省庁連絡会議(厚生労働省、総務
省及び文部科学省)において、「医師確保総合対策」をとりまとめた。
r医師確保総合対策」に盛り込んだ内容は、できるものはすぐに着手するととも
に、平成18年度予算概算要求やく来年の通常国会に提出予定の医療制度改革案
に盛り込み、具体化を図ることとしている。
【医師確保総合対策の事項一覧】
(1)地域の実情に応じた具体的な取組の推進
○ 医療対策協議会の制度化
(2)医療計画制度の見直しを通じた医療連携体制の構築等
○ 医療計画による実効性ある地域医療の確保・医療連携体制の構築
○ 医療資源の集約化・重点化の推進と地域内協力体制の整備
(3)へき地医療や小児救急医療等に対する関係者の責務の明確化と積極的評価
’(4)養成・研修過程における医師確保対策
O 医学部定員の地域枠の拡大(地域による奨学金の有効活用)、自治
医大の定員枠の見直し等
(5)へき地医療等に対する支援策の強化
○ へき地医療支援機構の診療支援機能の向上(代診医の派遣等)
○ 都道府県による医師派遣
○ 情報通信技術(iT)による診療支援等
(6)診療報酬における適切な評価
(7)需給調整機能の強化と働き方の多様化への対応
○ マッチングの推進、仕事と育児を両立できる就労環境の整備
○ 女性医師バンク(仮称)事業の創設等
(8)医師の業務の効率化
○ 医療関係職種や事務職員との役割分担と連携等
(9)その他
○ へき地等における人員配置標準の特例等
(以下略)
あ〜、国が率先して「確保」なんて言うもんだから、右へならえ、ですか。
医師はそこにいるのが当然
という、感謝のかけらもない今の惨憺たる医療現場を象徴するのが
医師の確保
という言葉遣いだと思う。少なくとも
医師不足で、欠員を補充したい
と思っている自治体や病院は、医師がいないと困る立場なのだから
招聘
という言葉を使うべきじゃないのか。
実際
確保
という言葉は医師には大変評判が悪い。
その一例。
南砺市で、産科が再開された。KNBニュースより。
2007 年 03 月 01 日 17:24 現在
南砺中央病院で産科が再開南砺市の「南砺中央病院」では、スタッフ不足で休診していた産科の診療が1日から、再開されました。
これにより、南砺市内では、およそ2年ぶりに出産できる医療体制が整った事になります。
南砺市、旧福光町にある南砺中央病院は、南砺市内で唯一、出産できる医療施設でしたが、常勤の産婦人科の医師が病院を離れたため、おととし4月から産科を休診していました。
それ以降、出産をする人は砺波市や高岡市の病院に足を運んでいました。
しかし、去年7月に常勤の産婦人科の医師を確保した他、スタッフの体制も整い、1日からおよそ2年ぶりに産科の診察が再開されました。
(以下略)
さて、この「確保」された産科の先生について、こんな議論がある。産科医絶滅史30巻〜過失がないなら何で亡くなる〜スレッドより。
48 :卵の名無しさん :2007/03/01(木) 20:41:06 ID:EQGggfdB0
>>46
>http://www.nanto-hp.jp/docter2/tantouihyouH19.2.htmどう見ても一人医長です。本当にありがとうございました。
上記リンク先は、南砺中央病院の担当医師表で、産科医は一人しか名前がない。つまり、再開した産科は一人医長なのだ。
一人医長の産科は、妊産婦が急変した場合、十分な医療を行うことができない危険が常につきまとう。特に福島県立大野病院事件で、一人医長だったK医師が、片岡検事の「活躍」により逮捕され、大淀病院産婦死亡事例で、30年にわたる長きにわたって一人医長で奈良県南部の産科を支えてきた産科医師が、3月で産科を休止せざるを得なくなった(婦人科は開いている)現在、全国では産科は集約、一人医長体制は休止の方向に行ってるのだが、なぜか南砺中央病院は時流に逆行して、一人医長で産科を再開したのだった。
シニカルに批判する医師の声。
50 :卵の名無しさん :2007/03/01(木) 20:43:15 ID:+9CGJ/em0
>>48
数少ない獲物だ。片岡一派にたれ込んむんだ。
富山県警も表彰状ものの仕事ができるな。95 :卵の名無しさん :2007/03/02(金) 15:34:50 ID:IOl8q7qh0
>>50
なるほど、獲物だから「確保」なのかw >>46の元記事
先日の横浜地裁の判決では
1時間以内に緊急の帝王切開ができない場合は、民事全面敗訴
だった。そんな病院がどこにあるのか、なのだが、南砺中央病院で妊産婦の急変が起きたとき、果たして、司法が示した
1時間以内の帝王切開(しかも子どもの頭が1時間以内に出てないとダメ)
ができるのだろうか。非常に心配である。で、もし、南砺中央病院のような
一人医長体制
の病院で、
欠員をようやく「確保」された医師
は、苛酷な勤務を強いられることは、常識だ。更にこの手薄な人員で、胎盤早期剥離・子癇・脳内出血・羊水塞栓症などの致命的で重篤な急変が起きて、不幸にして母子のどちらか、あるいは双方が助からなかったor重大な障碍が残った場合は
「確保」された医師
は、どうなるのか。今の風潮で行くと
刑事告発や告訴・民事提訴
は避けられないだろう。
これが
「確保」された医師の予想されるシナリオ
なのであり、
「医師を確保」と明言する病院や自治体には医師が集まらない
理由でもある。
感謝されず、犯人並の「確保」という言葉で病院に配置され、勤務は激務、もし何か医療上のトラブルが発生した場合は告訴・告発を免れない
のだから、よほど
犠牲的精神を持った医師
でないと、そんな
火中の栗を拾いに行く
ような行為は無理だろう。医師にも人生があるし、家族もいるだろう。
ともかくも
医師の「確保」
と言って平然としている医師不足の自治体・病院は、まず
招聘
と言い換えて、その意味をじっくり考えてみてはどうか。招聘という言葉なら
余人を以て代え難い
というニュアンスが出るが
確保
と言い続けるならば
いつまでも交代可能な「医師という名の部品」
に過ぎない。そこまで医師に敬意を払えないのならば、決して必要な人員は、いくら金をはずんでもやってこないだろう。
医療を施すのは、人間であり、人間には感情がある。「確保」できるのは、機械だけだろう。
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