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2007-04-29

「マスコミたらい回し」とは? (その45) ネットにカルテ流出ってホント?読売新聞は奈良県の産科を完全に崩壊させ、近畿の「産科ドミノ倒し」を推進するつもりか→追記あり

極めてまれで、不幸な転帰をたどった大淀病院産婦死亡事例のカルテがネットに流出、と今朝読売が報じた。
このカルテはマスコミが持っている資料と同じもので、ニュース映像としても使用されてきたものだ。
ネットに流出なのではなく、
 コピーがあちこちに出回っている
というのが真相に近いと思うのだが、読売の記事では
 関係者が勝手に流した
ことになっている。
わたしが拙blogで引用したのは、当該記事でもその都度断っているように、直接見ることができない医師専用掲示板からのコピペであり、今回の報道で
 掲示板に引用されたカルテが本物だった
ということがわかった。ちなみに、この件に関する医師達の議論は基本的に
 症例研究
の立場であり、果たして大淀病院の処置が正しかったのか否かを真面目に検討しているのが本筋である。一部報道では、掲示板の書き込みに散見される
 ノイズ
の部分を針小棒大に報じているが、それは言いがかりに近い。

読売より。


転院断られ死亡の妊婦、詳細な診療情報がネットに流出

 奈良県大淀町の町立大淀病院で昨年8月、高崎実香さん(当時32歳)が出産時に脳内出血を起こし、19病院に転院受け入れを断られた後、死亡した問題で、高崎さんの診療経過など極めて詳細な個人情報がインターネット上に流出していることがわかった。

 情報は医師専用の掲示板に、関係者らしい人物が書き込んだとみられ、「転載して結構です」としていたため、同じ内容が、医師や弁護士など、かなりの数のブログに転載されている。

 遺族側の石川寛俊弁護士が28日、大阪市内で開かれた産科医療をめぐる市民団体のシンポジウムで明らかにした。石川弁護士は、個人情報保護条例に基づく対処を町に要請した。遺族は条例違反(秘密漏示)などでの刑事告訴も検討している。

 書き込みは、昨年10月に問題が報道された翌日から始まった。仮名で「ソース(情報源)が確実なきょう聞いた話」「この文章はカルテのコピーを見ながらまとめました」などとして、最終月経の日付から妊娠中の経過、8月7日に入院して意識不明になるまでの身体状況や検査値、会話など、カルテや看護記録とほぼ同じ内容を複数回に分けて克明に書き込んでいた。

 この中には、入院前の記録など、当時、遺族が入手していなかった内容や、医師の勤務状況など病院関係者しか知らない内容も含まれていた。

 石川弁護士は「主治医と家族のやりとりを近くで聞いていた人物としか思えない書き込みもある。許しがたい」と批判している。

 遺族は「あまりに個人的な内容で驚いた。患者の情報が断りもなく第三者に伝わるなら、診察室で何も言えない」と話している。

 大淀病院の横沢一二三事務局長は「高崎さんが入院した日に病院にいた職員を対象に聞き取りをした。全員が『情報を漏らしたことはない』と答えたので調査を終えたが、遺族の弁護士には伝えていない。掲示板の運営事業者への照会などは思いつかなかった。再度検討する」と話している。

(2007年4月29日3時6分 読売新聞)

最初に断っておくが、わたしはご遺族については、実にお気の毒だと思っている。子どもを持つ喜びが、その母の死亡という悲しい事実と一緒になってしまった。感情を持って行く場所がない。そうした状況は理解できる。
従ってこの事例については、一貫して
 報道側の問題
を主張してきた。

報道側の態度でもっともおかしかったのは
 看護記録を前面に押し出して、カルテの分析をせず、出産中の脳内出血という極めてまれでかつ残念ながら予後の大変によくない(最良でも植物状態)病態を、あたかも「手を尽くしていれば死なずに済んだ」と感情的に煽った点
である。看護記録もカルテも、取材する側は持っており、当初の報道では看護記録の記述のアップが映像資料として多用されていた。
ご遺族が
 最善を尽くされていれば、助かった
と主張するのと、マスコミが
 助かったはずだ
というのは、まったく立場が異なる。
報道機関に求められるのは、
 医学的事実に対する冷静な判断
の筈だ。

カルテ開示の後、そのカルテのコピーがどこに出回ったのか、わたしは現物をみたことがないので知らない。
少なくともマスコミには渡っている。おそらくどういうルートか分からないが、マスコミ以外にも多数のコピーが出回っているのではないか。

もう一つ、この件で不思議なのは
 遺族が訴訟を準備していると発表したのと同時に「カルテ流出」と読売が報じ、他社が追随している点
である。
テレ朝の報道が扇情的だと、指摘されている。
*ベタ基礎一体打ち の、 山崎土建 です* 詳細な診療情報がネットに流出 2007/4/29(日) 午後 5:55
http://blogs.yahoo.co.jp/yamado2005emata2000/46581226.html

どうもマスコミは
 医師側を悪者にしたいだけ
なのではないか。
大淀病院産婦死亡事例では、結果的に大淀病院の産科は新年度から診療を休止し、奈良県南部の産科は絶滅したと言っていい。
こうした叫びがあっても、尚、マスコミは
 医師がカルテを勝手に持ち出した
と主張するのか。そんなに
 産科から医師を駆逐したい
のだろうか。
産科医絶滅史33巻〜看護師内診NONO元法務大臣〜スレッドより。


368 :卵の名無しさん :2007/04/29(日) 12:23:22 ID:OOiof9sN0
もうすでに奈良県南部の医療は焼け野原と化している。
おれ、大阪勤務だけど、当直の度に大和高田や吉野の救急隊から
搬送受け入れ要請がある。あんまり哀れなんで、たまに
「いーよ。」って言うけど、救急隊員いわく「もう奈良の南には
病院はありません。」だってよ。

産科だけではなく、奈良県南部の医療はすべての診療科において、厳しい状況に置かれている。
報道は、
 何を取り上げるか
という方向を見誤っているのではないか。今必要なのは
 これ以上、地方医療を崩壊させない方向でのバックアップ
であって、
 医師をバッシングする一方的な報道
ではないだろう。それとも
 自分たちの保険でかかれる医療機関があるから、一般庶民がかかる病院がいくつ潰れてもかまわない
のか?

カルテ流出を言うならば
 そのコピーがどうやって流出したのか
を検証してほしい。少なくとも
 記者会見資料と違うものが流出しているのか
どうかは、はっきりさせてほしいものだ。
そして、読売新聞は、この報道によって
 奈良県内の他の地域の産科医も立ち去る危険がある
ことを認識してほしい。なぜなら読売新聞が非難している「病院関係者しか知らない内容」の出所は
 奈良県内の中心的な産科関係者の可能性がある
からだ。もし、このまま
 魔女狩り
が続くようなら、奈良県内からほとんどの産科医は撤退するだろう。その結果、泣くことになるのは、奈良県民であり、「お産難民」が押し寄せてドミノ倒しとなり、閉鎖される近隣自治体の産科であり、その結果増大する近畿の「お産難民」である。今回の読売の報道は
 近畿圈全体の産科崩壊を決定的にする可能性がある
ことを指摘しておく。つまり
 読売の報道が引き金になって、近畿圏では母子の周産期死亡率が上昇する危険が高くなる
のだ。

続き。(20:32)
今回の読売の報道に対する医師側の反応。
Dr.I先生の「健康、病気なし、医者いらず」より。
 医師の秘密漏示
http://kenkoubyoukinashi.blog36.fc2.com/blog-date-20070429.html
Sky Team先生の「東京日和@元勤務医の日々 」より。
 マスコミに反省を求む:たらい回し事件
http://blog.m3.com/TL/20070429/1
「ある町医者」先生の「ある町医者の診療日記」より。
 大淀病院事件>ネット言論の圧殺
http://blog.hashimoto-clinic.jp/200704/article_9.html
 がみ先生の「ポンコツ研究日記〜悩める産婦人科医のブログ〜」より。
 ネットに流された情報の真実
http://ameblo.jp/y-gami/entry-10032114896.html
(追記 4/30 11:00)
 Yosyan先生の「新小児科医のつぶやき」より。
 2007-04-30 真実はどこに
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20070430

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コメント

こんにちは:産科医療が壊滅したのは「佐賀県の面積に等しい奈良県の60%を占める南部」だけではありません。大淀病院のあおりを受け、新宮市立医療センターも奈良医大からの派遣医が引き揚げられ廃止です。奈良県、三重県、和歌山県にまたがる紀伊半島南部の産科が壊滅しかかっています。

投稿: tera2005 | 2007-04-30 14:22

カルテは家族がマスコミに公開→マスコミが医師に内容に対する意見を聞いた→そこから広まった、と言う可能性が高いと思います。理由、1)8月に死亡して家族が病院に抗議?に来て、病院は弁護士を立てている、そのカルテは誰もが見える状態で置かれるとは思えない、2)m3掲示板への投稿はカルテの記載通りに、副院長・産科部長のM医師に対する表現をなど(実際、主治医は奈良医大から週1回だけ来る助手だった)1人の医師を3通りに書いている→2日後訂正した、3)病院の産科当直体制を理解していず(M医師が金曜から水曜の朝まで連続して対応しているのに)間違って記載している→同様に後日、訂正している、などから解ります。私はインターネットの検索を使い、上記の内容をすぐに把握できました、大淀病院に勤務している者ならば、こういう間違いはしないでしょう。私が大淀病院に直接電話して確かめた際には「産婦人科の常勤は3人です」と嘘を言いました。病院の体質も問題があるのでしょうね。

投稿: tera2005 | 2007-04-30 15:37

まさに言いがかりですよね。
自分たちに都合の悪い事実が出てきたら、違法だ、って騒ぐ。
医療に関しては、マスコミの言い分よりも、医師のブログの方が真実に近いって事がわかって、潰しに来たって事なのでしょう。

投稿: Dr. I | 2007-04-30 21:40

Dr.I様、おはようございます。警察は「m3」は見ることができなくても「病院・医者@2ちゃんねる」は見ることができるわけですから、m3の内容がコピペされ、普通の人が読めば「田舎の病院でよくやったんだな、子供も死んでいた可能性が高かったのを助けたんだな」と言う大部分の医師の論理が理解できます。遺族にとってはそれが意外だったのでしょう。それから遺族が「マスコミに公開したのは看護記録だけで《カルテ》は公開していない」と言っていますが、看護記録は《カルテ=診療録》そのものですので、カルテの看護記録のみを公開したとしても、『カルテを公開した』ことになると思います。

投稿: tera2005 | 2007-05-01 09:51

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