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2007-04-24

Nスペ トリアージ 救命の優先順位@4/23 22:00-22:50 NHK総合

地方制作のNスペらしい好企画。NHK大阪と神戸の共同制作だ。


トリアージ 救命の優先順位〜JR福知山線事故から2年〜

107名の死者を出したJR福知山線脱線事故。
現場に駆けつけた医師や看護師たちは、これまで経験したことのない過酷な状況に立たされた。緊急度によってけが人を選別し、治療や搬送の優先順位を付ける「トリアージ」が行なわれたのだ。判断に許された時間はわずか30秒。一人でも多くの命を救うために、通常では考えられない厳しい決断が瞬時に求められた。
最優先に治療を施す必要があるけが人に付けられる「赤タッグ」。重傷だが数時間は待つことが出来ると判断される「黄色タッグ」。そして重篤で蘇生不可能を意味する「黒タッグ」を付けられたけが人には、何の治療も施されなかった。
事故から間もなく2年。当時現場の最前線にいた医師や看護師、そして遺族やけが人の証言からトリアージの実態を伝えるとともに、時を経て明らかになった様々な課題を検証、次の災害に備える災害医療の最前線を描く。

JR宝塚線の事故は、発生当初から中継をみていた。
当日の様子は以下に。
http://d.hatena.ne.jp/iori3/20050425
生々しい現場の様子をハイエナのように取材していたマスコミへの怒りが思い出された。このときも、ネットは有効だった。携帯電話から状況が伝えられたりした。

多数の死傷者が出、今なお傷の癒えない方もいらっしゃるJR宝塚線脱線事故。
その時、現場では、次々と運び出される負傷者にトリアージタッグをつける作業が行われていた。
 黒 0 死亡もしくは救命の見込みのない者
 赤 1 生命に関わる重篤な状態で緊急搬送が必要な者
 黄色 2 生命には関わらないが搬送が必要な者
 緑 3 救急搬送の必要ない軽傷者
尼崎の事故でトリアージタッグがつけられたのは、阪神淡路大震災での教訓が生きている。大量の負傷者が同時に発生した場合、どの負傷者を優先して救命するのか。そのことを瞬時に判定し、色分けして搬送を待つのがトリアージタッグの役割だ。冷静に、ある意味残酷な生命の選別が行われる。
画面は兵庫医大で震災時に行われた救急救命の様子を映し出す。
 その人は運ばれてからどのくらいたった?
 手を止めて、次の人にかかれ。
 救命できる人を助けないとダメだ。
日本の医療現場はウェットだ。
 なんとか助けたい
と、救命の望みがなくなった時間が過ぎても、懸命に心臓マッサージを続けることがある。しかし、大量の負傷者が発生している場合は、一人にかけられる時間は、平時とは違い、長くない。
 命を見極める必要性
が生まれる。
そのあたりを感情に押し流されないように、丁寧に画面を作っていく。
現場でトリアージ作業に当たった医療従事者は、おそらくそれが心理的な傷になっている。
自分の判断は正しかったのか。
タッグの色が違えば、搬送時間が異なる。
それは、判断を間違えれば、命が消えるかも知れないということなのだ。

番組は
 トリアージの空白地帯ができた
ことを映す。現場となったエフュージョン尼崎の玄関前。負傷者が溢れているのに、トリアージに当たる医療従事者がいない。全体を見渡して統括する指揮官がいなかった故のことだった。消防と警察と医療従事者の連携も取れていなかった。トリアージされずに多数の負傷者が運ばれると、今度は軽傷者も一緒に搬送される事態となる。生命の危機に瀕している重傷者から助けなくてはいけない。現場の手の数は決まっている。搬送先で、再度トリアージが行われ、現場の混乱は収拾された。

宝塚線の事故のように、多数の赤タッグのついた重傷者がいる場合、重傷者間の優先順位を決めなくてはいけない。番組では肺が潰れた若い女性の例が紹介された。臨時のヘリポートとなった中学校の校庭に運ばれてから、やっと彼女はトリアージタッグにかかれた症状を読み取ってもらえて、最初にヘリで運ばれ助かった。幸運だった。もし、あと40分ほど遅れていたら助からなかったと聞いた彼女は、ぞっとしたという。
しかし、搬送先で亡くなった人もいる。死者は語らない。報告書では
 避けられる死はなかった
となっているが、本当に
 タッグは正しかったのか
と問いたいのは、遺族共通の気持ちだろう。
まだ若い息子を亡くした父親は、黒タッグのつけられた我が子が、酸素マスクをつけて搬送される写真を新聞社から提供され、
 我が子は、2時間くらいは生きていたのではないか
という疑いが消えない。我が子に黒タッグをつけたかも知れない医師を訪問し質すが、医師は顔までは覚えていない、と答える。
修羅場にあって、医療従事者ができることは
 生存の可能性を1%でも引き上げること
だ。トリアージ作業においては
 見込みのない負傷者を手早く判断し、少しでも見込みのある負傷者を捜し、できるだけ早く搬送できるように手配する
ことだ。黒タッグと決まれば、それ以上何かに時間をかけることは、時間が惜しい。
しかし、遺族にしてみれば
 自分の家族がどうやって死んだのか
は、その場にいなかっただけに、いつまでも気に掛かることなのだ。
これまでは黒タッグにはなにも書かず、すぐに次の負傷者のトリアージに取りかかっていたのだが、今後は、黒タッグにもなにか一言書かれるようになるかもしれない、と番組では示唆していた。

取材では、生命の選別をした医師や看護師が罪悪感を感じないように、気を配ってはいたと思う。構成もそのあたりを抑えめにしている。ただ、こうして大きく顔と名前が出ることで、医療従事者が二次的な被害を受けないか、それが心配である。人間は理不尽なことが起きた場合、解決を外に求めることがある。誰か悪者を作るのは、その一番安易な解決策である。取材に協力した医療従事者がそうした
 仮想敵
とされないか、憂慮している。直接の遺族でなくても、そうした人はいる。

番組ではあまり触れてなかったが、トリアージで一番躊躇するのは
 子どもに黒タッグをつける
ことだ。トリアージの訓練では、子どもに黒タッグをつけられるかどうかも訓練すると聞いている。
そうしたある意味冷酷な判断は、実は医療現場では日々行われている。トリアージは、それを瞬時に行うから、
 生命の選別が見えやすくなっている
だけなのだ。

今日のNスペは、限界はあったが、ともすると
 生命礼賛
に走り、まるで
 医療さえあれば人間は死なない
と思いこんでいる昨今の風潮に一石を投じる好企画だった。医療従事者は無限に存在するわけではない。医療も無限に施されるわけではない。医療を注がれる人間の身体は有限であり、その寿命も有限だ。そのことを改めて考えさせられた。

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コメント

トリアージとは直接関係ないですが、知り合いに聞いた話によると、とある一般病院では、死んでいるのがわかっていても、家族がくるまで人工呼吸や心臓マッサージを続ける場合があるそうです。
あるいは、家族が来る直前に蘇生処置をはじめて、家族が来て病院側の対応を見てもらってから、家族と一緒に死亡確認することもあるとか。

病院がここまでちゃんと手を尽くしましたよという姿をみせて、死亡の確認も家族自身にやってもらった方が、後で訴訟沙汰が起き難いというのがあるそうが、救急指定病院じゃないからできるサービスかもしれません。

投稿: かぼちゃ魔法師 | 2007-04-24 10:43

かぼちゃ魔法師様:

>とある一般病院では、死んでいるのがわかっていても、家族がくるまで人工呼吸や心臓マッサージを続ける場合があるそうです。
あるいは、家族が来る直前に蘇生処置をはじめて、家族が来て病院側の対応を見てもらってから、家族と一緒に死亡確認することもあるとか。

この様な事はどの病院でも行われていると考えたほうがいいです。

投稿: 暇人28号 | 2007-04-24 12:53

黒タッグをつけるのに、いちいち一言書く時間があったら、その時間で助かる命があるかもしれないので。
気持ちはわからんでもないですけど、もっと緊急の現場の事も考えて欲しいかなって思います。

時間との勝負ですから。

投稿: Dr. I | 2007-04-24 21:06

みなさま、コメントありがとうございます。

Dr.I先生、おっしゃる通りだと思います。
ただ、NHKの芸風としては泣きを出さなかった分、「遺族の思いをくみ取る」という演出を構成上入れないとダメなんですよね、たぶん。Nスペだし。
普通、この手の番組では、泣きの場面が入ることが多いですが、今回の番組は珍しく入れませんでした。ただし、「黒タッグ」の物語を最後に持ってきてるわけです。
わたしが現場にいたら、黒タッグをつけたら、できるだけ早く次の負傷者の判断に回るでしょうし、それがベストの判断だと思います。今回は100のオーダーで亡くなられた方が出ました。これが500のオーダーだったら?黒タッグにメモをする時間で、もっとたくさんの人を助けられるのは自明です。
ただ、NHKは公共放送である以上、そこまでえぐり出すことはできません。それが「この番組の限界」だと思います。

投稿: iori3 | 2007-04-24 21:30

黒タッグと遺族についての話ですが、「この番組の限界」ではなく、番組制作上の依って立つ位置を考えれば当然のことだと思いました。

実際に現場で黒タッグと一度判定した以上、救える命のためにわずかな時間も惜しいのは当然です。医療側にとって最善は「黒タッグには一切記入せず、一秒でも早く次の判定を行う」ことです。患者が100でも500でも答えは同じです。

でも、医療側と違った側からはまた違う最善があると思うのです。その代表として「黒タッグ」の遺族という、一番反対側の立場を例として映し込んだのだと思います。

医療側からすれば、わずかな記入時間も無駄にしたくない。
遺族側からすれば、わずかでいいから記載が欲しい。
どちらかが正しいというものではないと思います。

投稿: ほたる | 2007-04-26 00:26

ほたるさん、コメントありがとうございます。
たしかに「正しい」ということはないでしょう。
しかし、災害時のトリアージは、時間との戦いであり、人手は限られています。ご遺族のお気持ちは十分分かりますが、実際問題としては、今後も黒タッグにメモをする医療従事者がいるかどうかは疑問です。
医療は生きている人、生きる可能性が高い人に施されるものだ、というのが医療の原点だからです。災害時の医療は戦場の医療に似ています。感情を差し挟むことは、作業のペースを落としてしまいます。もし作業のペースが落ちたら、救える人が救えなくなります。
極限状況では、平時の状況から見ると残酷に感じられる一面がある、と思います。
今回の取材は、長期にわたったものであり、もっとご遺族の側に立った形での構成も可能でしたが、そのあたりはかなり抑制されています。恐らく、阪神淡路大震災を経験している地域での制作であることとは無関係ではないと思っています。

投稿: iori3 | 2007-04-26 00:54

>医療側からすれば、わずかな記入時間も無駄にしたくない。
>遺族側からすれば、わずかでいいから記載が欲しい。
>どちらかが正しいというものではないと思います。

今後被災者になりうるものとしては、生還率の高いシステムを作ってもらいたい。
今後被災者の家族になりうる者としては、生還率の高いシステムを作ってもらいたい。
 
医療者だって遺族だって、私を含む第3者だって、今後被災者になりうるという点では利害が完全に一致すると思うのですが。
 
そもそもNHKに取り上げられる遺族は、タグに何かが書いてあればあったで不服を言っていたのです。当該遺族本人が不服を言わなくても、NHKが取り上げる遺族は不服を言う遺族に限られていたのですから。

投稿: 脱福者@第2次産業 | 2007-05-01 08:02

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