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2007-04-04

産科医療崩壊 看護師内診はダメと厚労省 助産師を揃えられない産科は閉鎖か? 少子化を促進するのは厚労省

年度末を挟んで
 看護師の内診が是か非か
で、厚労省・看護協会・産婦人科医会で通達の解釈を巡って一悶着あったようだ。
そのあたりの経過についてはYosyan先生が手短にまとめていらっしゃるので、そちらをごらんください。
 新小児科医のつぶやき 2007-04-04 看護師内診問題の迷走
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20070404

で、結局
 看護師の内診は禁止
という通達が再確認されてしまう結果に。
朝日より、二本の記事。


看護師の内診の禁止を明確化 厚労省が医療機関に通知
2007年04月02日15時41分

 横浜市の堀病院で助産師資格のない看護師に「内診」をさせていた事件などを受け、厚生労働省は2日、看護師は内診を含む分娩(ぶんべん)の進行管理をできないとする通知を都道府県を通じて全国の医療機関などに出した。堀病院の事件などで産科医や助産師などの間で解釈が分かれ、現場で混乱が深まっているため、厚労省としての姿勢を示す狙い。厚労省は過去にも看護師の内診を禁じる通知を出しており、「これまでの方針に変わりはなく、看護師による内診は認められない」としている。

 この問題をめぐっては、厚労省は02年と04年、内診について「医師や助産師しかできない助産行為に当たる」「医師の指示があっても看護師はしてはならない」とする見解を都道府県への通知の中で示した。しかし、いずれも自治体の質問に答える形だった。

 今回の通知では、「医師、助産師、看護師の適切な役割分担と連携が安全なお産には重要だ」と指摘。内診を含む出産の進行管理は看護師が行えないとの見解を明確化した上で、看護師は医師や助産師の指示・監督のもとで、妊婦の様子を見るなどの「診療または助産の補助、産婦の看護」を担うとした。

看護師「内診」のガイドライン削除 産婦人科医会HP
2007年04月03日20時48分

 厚生労働省は3日、日本産婦人科医会(寺尾俊彦会長)に対し、ホームページ(HP)で、看護師の内診が認められたと、誤った解釈もできるガイドラインを掲載しているとして抗議した。医会は「会員の疑問に答えるため掲載したが、厚労省との相談が不十分だった」として、ページを削除した。

 厚労省は2日、看護師の「内診」を禁じる通知を都道府県に出している。しかし、産婦人科医会は同日付で「産婦に対する看護師等の役割に関するガイドライン」をHPに掲載。医師の指示監督の下ならば分娩(ぶんべん)経過中の観察はできるとして、注意点を列挙していたほか、同省の了解のもとで作成したとしていた。

 この内容に、厚労省は「内容に関する相談を一切受けていない」としたうえで、「通知で禁止した看護師の『内診』に該当する可能性があり、現場を混乱させる」と、医会に削除を要請した。

 医会の木下勝之副会長は「掲載は取りやめたが、助産師不足は深刻化しており、お産が立ちゆかない現状に変わりはない。ガイドラインについては今後、慎重に協議していきたい」と話した。

 

で、いったい誰が損をするかというと
 助産師不足で産科の閉鎖が今後増加するのは確実
なので、
 これから子どもを産もうとする女性とその家族が最大の被害者
である。

厚労省と助産師の団体は、メンツにかけて、
 看護師の内診禁止通達
を守ったわけだけど、
 助産師の数が新年度から急に増えることはあり得ない
ので、
 助産師を確保できない産科は分娩中止に追い込まれるか、24時間医師が内診の都度立ち会わなくてはならない
ってことだ。今でも産科医の勤務は過重勤務だが、さらにそれが苛酷になるとすれば、産科をやめた方がいい、と判断される先生も出てくるだろう。
 産科を疲弊させ、お産難民を増加させることに、厚労省が荷担している
というのは
 少子化を邁進しているのが、実は厚労省
と同義じゃないのか。

医籍の杜撰な管理もそうだけど、碌なことをしませんな、厚労省は。

産科の「無資格助産(=看護師内診)」問題に火がついたのは、昨年の堀病院事件だったが、その堀病院事件の元はといえば、共同通信記者の妻が堀病院で産褥死したことが発端である。医療ミスを疑ったのだが、刑事立件できず、無資格助産で堀病院に捜査が入ったのが昨年夏のことだった。「無資格助産」では堀病院は処分を受けなかった。
2007-03-20 お産の250件に1件は命に関わる危険なお産 命を救ってきたのは産科医
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/03/2501_b485.html
2007-02-01 「看護師の内診で警察介入」は何だったのか
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/02/post_98e6.html

ちなみに助産師不足について、柳沢厚労相は3/20の参議院厚生労働委員会で、次のように答弁している。


第6号 平成19年3月20日(火曜日)

○国務大臣(柳澤伯夫君) 看護師さんによる内診の行為を明確に厚生労働省が否定をしたわけです。それに対して、今それがゆえに、長く言わば黙認されてきたのかどうか、その事実は私は知りませんけれども、そういうようなことが行われてきた、その看護師さんによる介助というものが、お産への介助がもう全然できなくなったことにより、助産師さんの不足というものが顕在化して、そういう助産師さんというか看護師さんの助力を必要とする、している産科のお医者さんまで辞めてしまうということの中で、産科のお医者さんがどんどん減ってしまっていると、こういう状況になっているんじゃないかと、こういう御指摘だと思います。
 私は、今、助産師さん不足というものを、看護師さんを養成コースに入っていただいて、一定の履修をした後、助産師さんになってもらうと、こういうようなこととか、潜在助産師さんみたいな方をまた掘り起こして、その方々に復帰してもらうというようなことをやって、今の現実、不足が起こっている部分に補充をしていこうというようなことでやらせていただいているわけですけれども、率直に言って、それで本当に今の、間に合うのかという気持ちも私もかなりの程度持っておりまして、気をもんでいるというのが実態です。
 しかし、さればといって、今度はこの内診を認めるという場合に、私は先般もこの産科で死亡事故を起こした父親の方にもお会いしているわけですが、その人によれば、これはもう明らかに看護師さんの内診等、要するに内診だけじゃなくて分娩の進行管理ということの一環なんですよと、それができないんですと、そういうことを言わば看護師さんの手でやられたことによって自分の子供は命をなくしてしまったんだというもう悲痛なお話も聞くわけでございます。
 つまり、アクセスと安全という、先ほど医政局長の指摘した二つの点のどの辺に一体均衡点を見いだしていくかという問題だと思うんですけれども、今はもうとにかく安全の方にぐっと偏ったことをやっているわけですけれども、この問題、非常に場合によっては命にかかわるような話でございますので、私も、何というか、ここで簡単にいろいろなことを言うことは差し控えたいと思いますけれども、いずれにしても、医政局を中心として、識者の方々にもう一度早急に検討をしてもらう機会があるのかどうか、また帰庁をして医政局長とまた話をしてみたいと、このように思います。
○櫻井充君 私が申し上げたい点はそういうことではありません。私は、今僕は大臣が今の発言の中で一番重要だと思ったのは、黙認していたかどうか分かりませんがという発言をされた。ですから、そこが僕は一番大きな問題だと思っているわけです。つまり、行政として本来対応すべき点を対応してこなかったことに対して問題があるんじゃないかということを申し上げているんです。
 そして、それはこの問題だけではなくて、様々多くの問題がこういうことをはらんでいるわけですよ。最近少しは整理されたんでしょうが、医行為とは一体何なのかという定義が全くなされてなかったですよね。そのために、たんの吸引そのもの自体が現場の看護の方々がやられていいのかどうかとか、あの当時決められた医行為と今の医行為というのはもう、医行為といいますか、その処置というのが全然違うわけですよね。在宅を進めるという点でいったときには、それを現実的に、毎回来て、看護師さんがたんの吸引をしなきゃいけないんだとか、家族であれば多分訴えられないからなんでしょうけれども、それは家族だったら何となくやっていいとか、そういうすごくあいまいにしている行為が一杯あり過ぎて、実はこれを本当に原理原則に戻してしまったときには、その論だけを論じてしまうと現実で全く対応できなくなっているということは多々あるということなんですよ、問題は。
 ですから、私は、改めて、厚生労働省として今まできちんと対策を取ってこられたのかどうか、そのことを知っていたのかどうか。知っていたとしてやらなかったら、これは行政としてのまた問題点はあると思うし、それから知らなかったということであれば、それはそれでまた私は問題だと思うので、今後、今後これはこれとして前向きに議論をするとしても、こういう問題を生まないような体制をきちんとつくっていただきたいなと、そう思っているんです。その点について大臣、いかがですか。
○国務大臣(柳澤伯夫君) まず、私も、これはこれで前向きに検討してくれるということを櫻井委員がおっしゃられたんですが、前向きか後ろ向きかは分かりません、これ私は。
 とにかく、もう一度本当に助産師の不足に、一つは養成コースで早急に看護師さんにその資格を得ていただくということであるとか、あるいは、これは主として看護師さんですけれども、とにかく助産師さんにも、リタイアした助産師さんにもう一度復活をして、復帰していただくということが可能かどうかと、もうありとあらゆることをやらなきゃいけないと、こう思うんですけれども、それで間に合うのかという問題がやっぱりありますので、その一環として私はこの問題について、進行管理というか、そういうことができるとは、全体的にできるということではないんだけれども、先ほど西島先生おっしゃったように、今の医療というのはみんなチーム医療になっているんだから、もう万般にわたって全部を一から十まで一人の人の責任ということじゃない。お医者さんの監督の目もある、同僚のまた目もあるというようなそういうことの中で医療行為というのが行われている中で、少しでも看護師さんに力をかりる余地がないのかどうか、これを医政局長と話をして、専門の人に検討していただくというような可能性があるのかないのか、それはやらせていただきますということを、駄目ですよという答えも十分あり得るわけでございまして、そこは全くニュートラルなことだということで御理解いただきたいと思います。
 その他、万般にわたりましていろんな、厚生労働省、あるいは医療行為というものについてあいまいにしてきた面があるぞと、こういう御指摘をいただきましたけれども、これは、聞いている医政局長の方が私よりはるかにいろんな例をそういうお言葉から思い浮かべることが多いと思いますので、それはそういうものとしてまたこちらは受け止めさせていただいて、より勉強をするように私としては促してまいりたいと、このように思います。

え〜、とりあえず、柳沢厚労相は
 医政局長に「ダメといわれた」
ってことでFA? たった十日で簡単に国会答弁の
 大臣の前向きに見える姿勢
ってひっくり返せるくらい
 厚労省医政局長って、大臣よりエライ
んですね。

ちなみに、日本看護協会は4/2付で
 内診は拒否
という声明を出している。


「分娩時の内診行為を、看護師は明確に拒否すべき」日本看護協会が、県協会と全国の看護師等学校養成所に文書で緊急周知を呼びかけ
(略)

本会は、妊産婦とその家族のニーズに応じた安全かつ快適なお産を保証し、自らの資格・身分を守るためにも、以下の事項の徹底が重要と考え、4 月2 日付で、都道府県看護協会および全国の看護師等学校養成所すべてに対して、厚労省の回答とともに本会の基本的な考え方を緊急配信し、周知徹底するように呼びかけた(資料1)。
【日本看護協会の基本的な考え方】
1.看護師および准看護師は、自己の免許に伴う法的責任を正しく認識し、これを超える業務の実施を求められた場合には、明確に拒否すべきである。
2.産科医療提供施設の管理者および看護管理者は、施設内の看護職員が法令を遵守しつつ助産に関る業務を行うために、分娩の取り扱いに関する基準・手順等の整備をはじめ、必要な教育・研修や人材確保、施設間連携体制の構築等、適切な対策を講じるべきである。
(以下略)

看護協会は統制取れてるな〜。

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