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2007-04-15

不妊クリニックの「製造者責任」 体外受精では自然妊娠より高率で妊娠異常発生 妊婦の異常に対応する産科医は転帰によっては訴訟を起こされるのだが、原因を作った不妊クリニックは責任を取っているのか?

不妊治療は、母子にとって安全とは言えない。妊娠に至るまでの治療が、身体に大きな負担をかけ、精神的なダメージも大きいことは、不妊治療経験者の間で共通して語られる。
妊娠しても、まだ安心できない。
不妊治療では、複数の受精卵を子宮に戻すことが多いため、妊娠すると多胎妊娠となり、早産が起きやすいだけでなく、多胎妊娠によるさまざまなトラブルが母体や胎児を危険にさらすということは、これまでも指摘されてきた。また、不妊治療は比較的年齢の高い女性が行うから、高齢妊産婦は、自然妊娠であっても、リスクが高い。

こうしたことは漠然と語られてきたのだが、聖路加病院が
 人工授精では、自然妊娠より高率で妊娠に異常が発生する
という研究成果を発表した。
問題は
 不妊クリニックは妊娠させるだけで、担当した妊婦の妊娠の異常は他の産科医に丸投げされる
ことだ。もし、不妊クリニックが妊娠させた妊産婦や赤ちゃんが、妊娠の異常が元で死んだり、重い障碍を負った場合、
 訴訟を起こされるのは、最後に母体搬送された産科医
なのだ。これはおかしいのではないか。

毎日より。


体外受精:自然妊娠より高率の妊娠異常 聖路加病院調査 

 体外受精を受けた妊婦に、自然妊娠と比べて妊娠の異常が高率で発生していることが、聖路加国際病院の研究チームの調査で明らかになった。京都市で開かれる日本産科婦人科学会で16日に発表する。妊娠の継続に重要な胎盤などの異常と体外受精の関係が明らかになるのは、おそらく国内で初めてという。妊娠異常は、大量出血など母体や胎児を危険な状態にさらす可能性があり、研究チームは「体外受精を受けようとするカップルに、異常を起こしやすいことを理解してもらうことが必要だ」と話している。
 同病院で03年8月〜06年7月に出産した女性2844人について調べた。このうち自然に妊娠した人が2454人、過去に不妊外来へ行った経験がある人が195人、体外受精を受けた人が195人だった。
 年齢や妊娠経験の違いを考慮したうえで▽胎盤が子宮口を覆う「前置胎盤」▽胎盤が出産前に突然はがれる「常位胎盤早期はく離」▽さい帯(へその緒)の付着位置がずれる「卵膜付着」−−になる可能性を比較体外受精を受けた人は、さい帯の卵膜付着が起こる確率が自然妊娠の人の9倍、胎盤の早期はく離は5.5倍、前置胎盤は5.4倍だった。一方、不妊外来へ行った経験があるだけの人は自然妊娠と差がなかった
 研究チームの酒見智子医師(女性総合診療部)は「受精卵を人工的に操作すること、子宮への着床時期が自然妊娠より早めになることなど、自然妊娠との違いが妊娠の異常につながっているようだ。体外受精は危険なお産になりやすいという認識を、妊婦も医師も持つ必要がある」と話している。【永山悦子】

毎日新聞 2007年4月15日 3時00分

こうした疫学的調査が初めて行われたことは、今後の
 不妊治療の妊婦受け入れ
に影響を与えると思う。
これまで
 不妊クリニックは、妊婦管理は他の産科に丸投げ
すればよかった。しかし、上記のように、妊産婦と胎児が死に至る可能性の高い異常が体外受精で高率に起きるのであれば、
 不妊クリニックの責任
は問われなければならないだろう。
前置胎盤は、超音波診断である程度把握できるが、常位胎盤早期剥離は予測不可能、卵膜付着も超音波で診断できるとは限らない。前置胎盤では、早い時期に妊婦を管理入院させるが、事前に予測できない常位胎盤早期剥離は、大出血を伴い、母子共に危険だ。卵膜付着は、臍帯のついている場所が問題で、胎児に血液がうまく行かず、死産になることが多いだろう。しかし、その責任は
 現場の産科医が負ってきた
のが現状だ。

人工授精でこれだけ高率に妊娠異常が起きることがわかったのだが、現在は
 危険なお産を最後に取り上げた産科医だけに責任が行き、あたかもお腹にいたときは100%健康だったのに、産科医のせいで母子にトラブルが起きた
と、家族に非難され、場合によっては訴訟を起こされている。
司法の無理解によって、産科医に不利な判決が出、それを見て、前線で働く熟達した年代の産科医が逃散している。一方、不妊クリニックは自由診療で、しかも
 感謝される医療
なのだ。
本当は逆じゃないのか。
 妊娠させるだけで大もうけ
の不妊クリニックが、自分の担当した妊産婦の予後に全く責任を取らない以上、今後
 人工授精による妊産婦の受け入れ制限
が起きることは目に見えている。妊娠は喜ばしいことなのだが、
 危険な妊婦を押しつけて、しらん振りしている不妊クリニックの産科医
には、現場の産科医は、煮え湯を飲まされている場合もあるだろう。
妊娠の確率を上げたいあまりに、多数の受精卵を子宮に戻し、双胎・品胎の妊婦を産科に丸投げする現在のやり方が、現場の産科医を疲弊させ、立ち去らせているのは異常だ。NICUにかかる医療費は金額にして一床一ヶ月1000万円と聞く。双子なら倍、三つ子なら三倍だ。小さく産まれた赤ちゃんがNICUを出るまでにはかなりの時間を要するのだが、もし1年入っていたとしたら、不妊クリニックで多胎妊娠させて出産した赤ちゃんを、小児科が受け取って外に出られるまでに、いったいいくら医療費が使われるのか、そのことも不妊クリニックは認識しているのだろうか。もちろん、家族が毎月1000万円を支払うわけではなく、大部分は税金でまかなわれるのである。つまり、国民は
 濃厚な医療を受けている超低出生体重児の医療費も分担している
ということなのだ。超低出生体重児が、NICUをなかなか出られなかったり、NICUを出た後にも問題を抱えていることは以前書いたが、「不妊治療によって作られた多胎」の場合、医療と親の倫理的な問題がクローズアップされる。自然妊娠による多胎はしょうがないが、妊娠確率を高めるための「作られた多胎」の管理については、不妊クリニックにも、医療費を負担させる必要があるのではないか。このあたりがどうも割り切れないのだ。

不妊クリニックは周産期まで責任を持つ体制を整える必要があるのではないか。
同じ産科医同士で、現場と不妊クリニックでは、あまりにもその待遇も、社会的責任の取り方にも差がありすぎるのは、実に不幸なことではないのか。
ともかくも
 不妊クリニックの母子異常への無責任体制
は、早期に解決しなくてはならないだろう。

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コメント

駐車場の空き待ちのように、NICUやMFICUの余裕ができた時にのみ、登録された施設で
ARTを行なうという方向にはなってもいいと思います。
とりあえず、現在の産科事情を考えると地域によっては、不妊治療のモラトリアム(一時停止)さえ
考慮してもよい状態です。
現在のやり方は「クライアント」の要望を満たすと称して、人間の無限な欲望の肯定に
過ぎないように思います。産まれてくる子供の福祉は余り考慮されていないのが実態でしょう。

投稿: gemba | 2007-04-17 00:19

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