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2007-04-06

不妊治療で語られないこと 小さく産まれた赤ちゃんが学校に行くとき

朝日の健康面では、周産期医療を扱っているのだが、今日は
 超低出生体重児の就学時期
について、読者の声が掲載されていた。
 発達が遅いので、1年遅らせたいのだが、なかなか行政に認めてもらえない
というものだ。
この問題は、ずいぶん前から取り上げられていて、就学猶予をどうすべきかという点については、1999年に、次のような論文がある。
 平成11 年度厚生科学研究費補助金(こども家庭総合研究事業)
分担研究報告書 周産期医療体制に関する研究「超低出生体重児の就学に関する研究」
分担研究者 三科 潤 東京女子医科大学母子総合医療センター
http://www.niph.go.jp/wadai/mhlw/1999/h1113005.pdf
ここでは、


新生児医療の進歩により超低出生体重児の生存率は飛躍的に改善し、生存例に於いても脳性麻痺や知的障害などの障害合併の増加は認められていない。しかし、長期生存例が増加するにつれ、これらの児の就学後の問題が生じてきた。そこで、超低出生体重児の就学に関する問題の現状を把握するために、新生児医療担当者および就学後の超低出生体重児を持つ両親に対し、郵送アンケートにより、就学に関する問題の現状を調査した。この結果、学習障害、いじめ、不登校などが就学後の問題として挙げられた。最近10 年間で、就学猶予を行った超低出生体重児17 例の症例が挙げられた。また、超早産児の就学時期について、新生児科医は予定日が翌年度になる場合(63%)、および、体格が小さい場合(50%)には猶予を考慮した方がよいとし、保護者では就学については保護者の判断を最重視するべきであるとの意見が多かったが、両者ともに、個々の児の状態に合わせ、就学時期等の決定はフレキシブルにするべきとの意見が多数を占めた。

と結論づけている。この論文から8年経っているのだが、学齢に達した超低出生体重児に対応したことがない自治体だと、なかなか理解が得られないというのが、今朝の朝日の投書の主旨だった。

超低出生体重児、つまりは
 うんと小さく産まれた赤ちゃん
は、早産で生まれている。赤ちゃんは母胎で、外界で十分生存可能なまで成熟してから生まれてくるのが生物学的には望ましい。しかし、多胎や胎内での病気が原因で、早期に生まれてくる赤ちゃんがいる。昔なら助からなかった、かなりの早産児でも、医学の発達で、就学する例が増えた。(残念ながら助からない場合もある)
超低出生体重児は、本来母胎でもっと育たなくてはいけなかった部分を外界で取り戻さなくてはならない。子宮の中なら容易な発達も、外界に出てきてからだと時間が掛かる。時間が掛かるということは
 生活年齢に比して、発達が遅れる
ことと同義だ。
どうせ大学入学で浪人したりするのだから、大人になってからの1年2年の違いはあまり気にされないのだが、子どもの世界では1年の違いは大きい。親がそのあたりを受け止められるか否かが鍵になる。

不妊治療では、妊娠率を高めるために受精卵を複数子宮に戻す治療が広く行われている。そうなると多胎妊娠になって、早産の危険が高まる。母体の年齢が高いと、早産しやすくなる。
両親が比較的年齢が高く、子どもが長期のNICU入院をしなくてはいけない超低出産体重児だった場合、果たして、親は子どもに向き合えるのだろうか。
上記の論文は、超低出産体重児はハンディを負うことが多いことを示している。気になるのは、この論文で調査した超低出生体重児には高率で学習障害が見られることだ。
やっと生まれた。NICUの長期入院もなんとか卒業した。しかし、学校に行くときに、また壁がある。親は子どものこうしたトラブルに、根気よくつきあって行かなくてはいけない。
2005年に発表された論文でも、超低出生体重児の発達心理学的な問題が取り上げられている。


児童発達心理の立場から見た超低出生体重児の予後 Psychological outcomes for extremely-low-birthweight children.
著者名 金澤 忠博(KANAZAWA Tadahiro)
共著者名 安田 純・北村真知子・鎌田次郎・糸魚川直祐・南 徹弘・日野林俊彦・北島博之・藤村正哲
出版社/掲載誌名 日本周産期・新生児学会雑誌
巻号 41(4)
頁 779-787.
年/月 2005/12
キーワード 超低出生体重児・認知発達・行動問題・学齢期・予測因子
概要 平均年齢8歳の超低出生体重児(出生体重<1000g)271名を対象に,IQと行動問題の出現について調べた。WISCーⅢ(R)と児童評定尺度により対象児を分類した結果,知的障害(MR)が35名(12.9%),境界知能が24名(8.9%),学習障害(LD)が70名(25.8%),定型発達が139名(51.3%)であった。家では「行為問題」「衝動・多動傾向」「不安」,学校では「多動性」「不安・消極傾向」「注意の問題」が見られた。重回帰分岐の結果,IQの予測因子には,入院日数,親の年収,出生体重,があり,行動問題の予測因子としては,兄姉や弟妹の人数が多いほど問題は軽減され,出生体重SDが低い(子宮内発育遅延の程度が重い)ほど不注意,多動性,衝動性,などADHDの中核症状が強く表れる傾向が示された。

半数以上の子どもは問題ないが、生まれたときの体重が軽い子どもほど、発達上の問題が起きやすいという結果になっている。

不妊治療では
 赤ちゃんを産むこと
がゴールになっている。
しかし、実際は
 生まれてから、育てるのが勝負
なのだ。
もし、やっと授かった我が子が、発達のゆっくりな子どもだった場合、親は漠然と思っていたはずの「理想の子ども」と「実際の我が子」とのギャップをきちんと埋められるのかどうか。不妊治療成功のゴールが遠ければ遠いほど、子どもは理想化される傾向がある。しかし、子どもはどんな形で産まれるにせよ、一人一人みな違う。
医療によって、救われる子どもたちが、ひとたび病院を離れると、実生活ではさまざまな問題に直面する。メディアは、超低出生体重児がNICUを離れるときは報道するが、その後の人生がどうなるのかについては、フォローしない。
不妊治療だけに光が当たる現状は、「育てる」というファクターを取りこぼしているのであり、不妊治療成功こそが人生の勝利であるようなミスリードを招いている。

時々起こる、比較的年齢の高い親による乳幼児殺しの裏には、こうした問題が横たわってるのではないかと憂慮する。

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コメント

 そしてその不妊治療クリニックは、一ヶ月一床1000万円以上といわれるNICU維持費は一銭も支払わず、自分たちの治療成功率向上のために双胎、品胎を作り続けるわけです(複数の卵子を戻すことで着床率はやや向上する)。
 医師同士で内紛している場合ではないのであまり叩くつもりはありませんが、有名クリニックは東京やら大阪やら福岡やら(あ、長野の某先生もね、もちろん)にあって、妊婦の地元にはもうけの還元や謝礼どころか、税金すら払ってはくれません。自費診療が「勝ち組」であることが別に悪いとは言いませんが、そのアンバランスの結果、超不採算部門のNICUや救急を取れる産科が早期に崩壊しても、誰も文句は言えないでしょう。

投稿: 産科医 | 2007-04-06 17:13

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