首都圏医療崩壊 二次医療圈の人口10万人当たりの医師数が全国平均を割り込む地域
昨日の続き。
どうもよくわからないのだが
厚労省は全国平均より医師数が少なければ「格差がある」
という
数値万能主義
なんだろうか? 二次医療圈の広さ(その医療圈で一番遠いところから求められている高度医療を受けられる場所までの時間で示す)と、各二次医療圈の人口構成(高齢者が多いのか、子どものいる世帯が多いのかなどのファクターによって、必要な診療科の医師数は変わる)、各診療科の医師の数を出してくれないと、意味無いだろうに。
眼科医が10万人当たりたくさんいるけど、産科や内科や小児科は少ない
なんて地域だってあるかもしれない。
そういう問題はあるのだが、前にも引用した読売の記事で、次のように書いてある訳で、
医学部に地域勤務枠、卒業後へき地で10年…政府・与党(略)
厚労省によると、人口10万人当たりの医師数は、全国平均の211・7人(2004年)に対し、青森(173・7人)、岩手(179・1人)、岐阜(171・3人)などと東北を中心に平均を大きく下回る。東京(278・4人)など大都市との格差が大きい。また、02年度の立ち入り検査では、全国の4分の1の病院で医師数が医療法の基準を下回った。
(以下略)
とりあえず「全国平均」を錦の御旗
にして、考えてみることにしよう。
まず、
首都圏以外で、全国平均の211.7人を上回っている二次医療圈
を上げる。()内は(平均を上回った二次医療圈数/各都道府県の二次医療件数)である。1/6)
■北海道・東北
北海道(1/21) 札幌・245.7人
青森(1/6) 津軽地域・246.1人
岩手(1/9) 盛岡・247.4人
宮城(1/10) 仙台・296.1人
秋田(1/8) 秋田周辺・250.4人
山形(1/4) 村山・225.6人
福島(1/7) 県北・223.4人
■首都圏
茨城(1/9) つくば・322.2人
栃木(2/5) 県東・央・229.4人/県南・235.7人
群馬(1/10) 前橋・368.6人
埼玉(1/9) 西部第二・222.3人
千葉(2/9) 千葉・236.2人/安房・253.4人
東京(6/13) 区中央部・1190.6人/区南部・268.4人/区西南部・285.8人/区西部・451.7人/区西北部・216.9人/北多摩南部・251.0人
神奈川(3/11) 横浜南部・217.0人/川崎南部・232.8人/湘南西部・217.0人
■上信越・北陸
新潟(1/13) 新潟・311.2人
富山(1/4) 富山・257.7人
石川(1/4) 石川中央・303.0人
福井(1/4) 福井・坂井・276.2人
山梨(1/8) 甲府地区・311.5人
長野(1/10) 北信・295.5人
■東海
岐阜(1/5) 岐阜・213.7人
静岡(1/9) 西遠・219.8人
愛知(2/11) 名古屋・257.6人/尾張東部・317.1人
三重(1/4) 中勢伊賀・228.5人
■近畿
滋賀(1/7) 大津・307.4人
京都(1/6) 京都・乙訓・341.4人
大阪(4/8) 豊能・300.3人/三島・213.3人/南河内・212.3人/大阪市・315.2人
兵庫(2/10) 神戸・254.9人/阪神南・232.0人
奈良(2/5) 東和・223.7人/中和・236.5人
和歌山(1/7) 和歌山・313.3人
■中国
鳥取(1/3) 西部・351.9人
島根(2/7) 松江・229.7人/出雲・360.1人
岡山(2/5) 県南東部・282.6人/県南西部・241.3人
広島(3/7) 広島・247.6人/呉・276.3人/尾三・212.4人
山口(2/9) 宇部・小野田・364.9人/下関・214.1人
■四国
徳島(2/6) 東部I・302.0人/南部I・222.5人
香川(1/5) 高松・301.8人
愛媛(1/6) 松山・267.9人
高知(1/4) 中央・293.8人
■九州・沖縄
福岡(5/13) 福岡・糸島・315.4人/久留米・385.9人/有明・224.8人/飯塚・233.5人/北九州・270.3人
佐賀(1/5) 中部・277.8人
長崎(3/9) 長崎・318.4人/佐世保・253.4人/県央・254.3人
熊本(2/11) 熊本・352.8人/芦北・240.8人
大分(2/10) 別杵速見・295.0人/大分・270.3人
宮崎(1/7) 宮崎東諸県・283.3人
鹿児島県(1/12) 鹿児島・319.9人
沖縄県(1/5) 南部・235.2人
というわけで、全国で都道府県所在地を中心に、最低一つの二次医療圈で、
全国平均の医師がいる
ことになる。この傾向は、全国的にあまり変わらない。
目を引くのは
九州北部の医師の数
だろうな〜。なんで統計上は医師密度が高いのか。
さて、問題の首都圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)は赤で、また、柳澤厚労相の地元静岡、安倍ちゃんの地元山口も赤で、また、柳澤厚労相が
医師が余っている地域と国会で明言した「徳島」
は青で示した。
さすがですね、静岡。人口の割に、医師の数は多くない。柳澤厚労相は、足下の医療崩壊には気がついてないみたいだしな。
徳島は、全然医師が余ってるようには見えませんが。東部I地域で、やや医師数が多いものの、
全地域が全国平均以上の医師がいるどころか、平均の医師数がいるのはたった二つの地域だけ
だ。これは
徳島の全人口が少ないために起こる統計上の「みかけの平均値上昇」
のせいである。
徳島/人口/医師数/人口10万人当たりの医師数
徳島東部I/460,313/1390/302.0人
その他の地域/362,991/743/205.2人
徳島全体/823,304/2133/259.2人
要するに柳澤厚労相が国会で口にした
徳島に医師が余っている発言
は、
単なる統計的数字の杜撰な取り扱いによるもの
だ。徳島の人口の56%を占める東部I地域の医師数が突出しているから、
平均値が押し上げられている
だけである。県内では医師の足りない地域があり、現在医師の招聘に頭を悩ませている。
では、首都圏。
昨日の表を簡略にしたものを改めて貼る。(クリックすると拡大します)赤で示したのが
厚労省のいう「全国平均より医師数が少ない二次医療圈」
だ。改めて
埼玉と神奈川の惨状
がわかる。
埼玉で救急搬送しようとしても、なかなか受け入れ先が見つからない
とはよく聞く話だが、これだけ人口の多い場所にしては医師が少ない。
小泉前首相の地元である横須賀も人口10万人当たりの医師数は161.9人
で、211.7人という平均値から見ると、50人近くも足りないことになる。
医療崩壊の立役者小泉前首相の地元は、先進的
ってことですかね?
首都東京は、島嶼部はもちろんのこと、
二十三区の東側と北多摩南部を除く三多摩地域で医師が少ない
のがわかる。要するに
東京では多摩と二十三区東部で医療崩壊が進みつつある
のが、伺える。この統計は2004年のものだが、その後事態は改善したとは思えない。
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