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2007-05-25

青森の産科壊滅か 「双胎間輸血症候群」で28週の双子の片方死亡で両親が提訴を「陸奥新報」が報道

そうでなくても
 産科医が足りなくて困っている青森県
で、
 双胎間輸血症候群のため、28週で帝王切開した片方の子どもが胎児水腫で死亡したのは病院のミス
と両親が提訴した。ご両親が納得できないのは致し方ないにしても
 提訴の段階で報道する陸奥新報の態度には疑問
がある。

はっきり言って
 双胎間輸血症候群が分かって、妊娠28週かつ双胎という悪条件で、極めて小さい赤ちゃんが一人助かっただけでも、すごい
と思うんだが、こういう提訴を一々取り上げる陸奥日報は
 青森県から産科医を駆逐したい
のか。
 双子の片方が助からないのは、多胎妊娠故の問題
であり、
 双胎間輸血症候群が分かっていたからといって、全員助かるわけではない
だろう。その辺の
 医学的知識を無視して、単に「赤ん坊が死んだ」からかわいそう
とばかりに地元の新聞が報道するのでは
 青森から産科医はいなくなる
だろう。それとも、陸奥日報は
 青森の現在の悲惨な産科崩壊状況を更に推進して、青森県内の周産期死亡率をもっと上げたい
のか。

陸奥新報より。


国立弘前病院を新生児死亡で提訴
黒石の両親「適切な処置怠る」

 国立病院機構弘前病院で、妊娠中に産科治療を受けたのに、産まれた双子のうち1人がすぐに死亡したのは病院が適切な治療を怠ったため—として、黒石市に住む母親と父親が病院を管理・運営する独立行政法人国立病院機構(東京)を相手取り、約4600万円の損害賠償を求め、青森地裁弘前支部に提訴したことが24日までに分かった。

 訴状によると、母親は2005年12月16日に切迫流産の恐れがあると診断を受け、妊娠21週で弘前病院に入院。経過観察を受け、06年1月30日に一方の胎児に循環不全の「胎児水腫」が認められ羊水量が過多となる双胎間輸血症候群との診断を受けた母親は同日青森市の県立中央病院に搬送され、帝王切開手術で翌31日に出産したが、胎児水腫の新生児は死亡した。
 母親らは、弘前病院が同月23日(妊娠27週)時点で、死亡した胎児の羊水量が、もう一方の胎児に比べ多く過多であることを認識しながら原因を精査せず、羊水除去や早期に帝王切開するなどの適切な処置を怠った—と主張している。
 弘前病院は「訴状が届いていないのでコメントできない」と話している

これは非常に難しい症例だと思う。
双子だから、胎児は小さい。
双胎間輸血症候群を妊娠27週で発見できたのか、それとも、その時点では、まだ
 お腹の中で経過を見る方がよい
と判断されたのか、主治医の経験にもよるし、エコーの画像の精度にもよるし、結論は一つではないだろう。

司法は、
 医療の最高水準に照らして判断する傾向
があるが、
 地方の医療機関でできることは限られている
のだ。現場のマンパワーが不足で、手を尽くせなかったとしたら、責められるべきは、そうした医療現場を放置している行政であろう。
まだ、判決が出たわけでもなく、単なる提訴の段階で、現場の士気を挫き、前線の医師の心を折る報道をする陸奥新報は、青森県でこれから子どもを生もうとしている人たちの敵である。
報道は、判決が出てからでいい。

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コメント

iori3さまの書かれている感覚が正しいと思います。

地方紙とはいえ、取材をきちんとする、抑制の効いた内容を出してくるところはあります。私は産科ではないですが、医学を行なうものとして妊娠27週、しかも双胎間輸血症候群でなんの問題があったというのでしょうか。そこまでの検証の材料が出てからでないと十分な意味はない。

直感だが、大淀以来スクープ狙いの勇み足が目立つ。
キンタマの小さい手柄を狙うんじゃないよ、増すゴミたち。(品無し、ですな)

投稿: 雪の夜道 | 2007-05-25 21:59

青森県民ですが、「陸奥新報」という新聞が存在することを今回初めて知りました。
会社の所在地から察するに津軽の極一部でしか読まれてない新聞かと思います。

恐らく一般の家庭では「東奥日報」を購読するのが普通でしょう。

ネットでは読めますが、直接紙面を読む機会のある人間はそう多くないかと。
本題とは関係ありませんが参考までに。

投稿: 蝦夷王 | 2007-05-26 01:30

雪の夜道先生、蝦夷王さん、コメントありがとうございます。
蝦夷王さん、「陸奥新報」の誤りでしたので、訂正いたしました。
陸奥新報は、蝦夷王さんのおっしゃるとおり、津軽の地方紙のようです。

このニュース、河北新報も取り上げました。

投稿: iori3 | 2007-05-26 05:38

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