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2007-06-18

日本産婦人科学会 体外受精で子宮に戻す受精卵の数を3個より削減の方向

不妊治療を受けているカップルの内
 女性が原因もしくは双方に原因があるカップルは60%を越える
という。だとすると不妊治療で
 受精卵を子宮に戻しても、着床しづらい
のは理解できる。そもそも、不妊治療カップルの女性側の6割が妊娠しにくい身体なのだから、女性には問題が無く男性が原因の不妊であるのとは異なり、
 複数の受精卵を子宮に戻すことは、もともと妊娠しにくい身体に余計負担がかかる
ことになるだろう。半分は他人である受精卵が、拒否されずに着床し、やがて人間に育っていくまでには、さまざまな生物学的な障壁を乗り越えていかなくてはならない。女性に問題がない場合は、こうした障壁は、やすやすと乗り越えられるのだが、何らかのトラブルがある場合は、なかなか着床・妊娠・出産とはいかない。どこかで躓いてしまう。
それでも
 多数の受精卵を戻せば、それだけ妊娠の確率は高まる
という確率論で、複数の受精卵が、妊娠しにくい子宮に戻されてきた。それが何をもたらすかというと
 着床したとしても、早流産の多発、かつ周産期の母子の命に関わる急変
である。
もともと妊娠しにくい母体が、いきなり双胎なんて、常軌を逸している。健康な人の自然妊娠であっても、多胎の管理は大変だし、出産後はもっと大変なのだ。それが、長期間のホルモンコントロールで痛めつけられている上での多胎妊娠となれば、誰が考えても、母子3人が無事なら、それは相当幸運だ。子どもを産んだら育てられるかどうか、そっちの方も心配だ。だって
 多胎の高齢出産は、母子共に無事であるとは限らない
からだ。いくら管理していても、早産で超低出生体重児が生まれ、未熟すぎて死ぬ場合もあれば、死ななかったとしても重い障碍を母子のどちらか、もしくは双方が負う場合もある。なんとかNICUを出られたとしても、超出生体重児は、発達の面で、普通の子ども達よりもゆっくりしている。
 2007-04-06 不妊治療で語られないこと 小さく産まれた赤ちゃんが学校に行くとき
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/04/post_8bc7.html
 2007-04-12 NICUの向こう側 長期入院している子どもはなぜ家に帰れないのか
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/04/nicu_4c56.html

単胎であれば、防げるいくつかの危機を、双胎を選んだ時点で、親が自ら呼び込んでしまっているのである。確かに、単胎でも超出生体重児は生まれるが、多胎の場合は、最初から
 早産になりしかも胎児の体重が軽い
のが分かっているのだ。子どもを健康に育てたいならば
 単胎を選択する
のが、親として子どもにしてやれる重要な選択だろう。わざわざ双胎にして
 双胎間輸血症候群の危険
にお腹の中の子どもをさらすこともない。
 2007-05-26 青森の産科崩壊か (その2) 河北新報も「双胎間輸血症候群で28週の双子の片方死亡を両親が提訴」を報じる→加筆あり
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/05/228_39be.html

それ以上に深刻なのは、こうした
 デザインされた多胎妊娠で生まれた子どもがNICUに長期入院する
ことで、双子なら2床、三つ子以上なら3床以上のベッドが使われる。ベッドに赤ちゃんがいるということは、そのための人手もいるということだ。1人の出産で、NICUの複数のベッドが塞がり、他の緊急治療を要する赤ちゃんが、NICUに入れなくなるのだ。場合によっては、NICUが塞がっていて搬送先が見つからず、命を落としている赤ちゃんがいるだろう。不妊治療で多胎妊娠を選ばなければ、その分のベッドは空いていて、別な赤ちゃんは助かっていたかも知れない。実にやりきれない話なのである。
NICUに長期入院すると「母子分離」の問題も起きる。母親が子どもと切り離されてしまって、自分の子どもに愛情を抱けなくなるのである。「母子分離」はたった1週間程度、帝王切開で母と子が切り離されてしまった場合でも起こるのだが、NICUの場合はもっと長期だ。病院と家が近ければいいが、もし遠くに搬送され、かつ子どもが健常児でない場合、親と子の絆が完全に断たれてしまう事例も出てくる。

なおかつ、不妊治療の多胎が問題なのは
 不妊治療クリニックは妊娠と出産の管理はしない
点である。
 妊娠したら、はいさようなら。紹介状もって、産科で産んでくださいね
なのだ。
今は、産科の数自体が減っているのに、
 明らかに高リスク妊娠の不妊治療クリニックから回ってくる妊婦
を、受け入れて、なおかつ
 もし、出産でなにか起きたら、全責任を取らされる産科
は、とてもじゃないけど、やっていけないだろう。こういってはなんだが
 不妊治療クリニックは「製造者責任」を負うべき
なのだ。不妊治療による多胎妊娠で、何らかのトラブルが起きた場合は、不妊治療クリニックは責任を負うシステムを作らなくては、現場の産科医は疲弊し、逃散するだけだろう。
しかも
 不妊治療は自由診療で、治療費は高額
なのだが、
 お産は自由診療なのにもかかわらず、分娩料は低く抑えられているのが現状
なのだ。ここまで産科の状況がひどくなっているのだから
 分娩料の大幅値上げ
をしてもいいと思う。その代わり
 少子化対策で分娩料を補助するとか、企業が補助するとか
の別な道を考えるべきだ。
 人間の命をこの世にもたらす産科の手技の評価が低く抑えられている
のだとすれば、産科を続けるモチベーションは低くなる。少子化なのだから
 現場に厚く施す
ようにしないと、本当に日本の産科は全面崩壊する。産科は特殊技術だから、技術を継承できる指導者層の産科医が現場を立ち去るのが続くと、技術伝承が断絶し、
 産科医の技術水準が一気に低下する
のだ。いくら若手を産科に配置しても
 教えてくれる先輩医師がいなければ意味がない
のである。

不妊治療による多胎妊娠に話を戻すと、日本産婦人科学会も、
 子宮に戻す受精卵の数を2個以下にする方向
のようだ。
6/16付の読売より。


体外受精で子宮に戻す受精卵の上限、3個をさらに削減へ

 日本産科婦人科学会(吉村泰典理事長)は16日の理事会で、体外受精で子宮に戻す受精卵の上限を、現在の原則3個からさらに少なくすることを決めた。

 母子への危険が大きい多胎妊娠を防ぐのが狙いで、今年12月までに上限数を決めて、来春の同学会総会で正式に会告(指針)として公表する。

 一方、日本生殖補助医療標準化機関は、友人や姉妹の卵子を使った体外受精を計画し、国や日産婦などに実施を認めるのか照会している。日産婦の星合昊倫理委員長は「個人的な見解だが(不妊治療のルール作りを検討している)日本学術会議の結論が出る1月まで待ってほしい」と話した。

(2007年6月16日23時17分 読売新聞)

多胎は母子ともに危険になる。
アメリカでは恐らく宗教的理由で、六つ子の減胎手術を拒んだ母親が産んだ六つ子が、次々と亡くなり、残った赤ちゃんも生命の危機に瀕している。
CNNより。


ミネソタの六つ子、3人目が死亡 残りも重体
2007.06.17
Web posted at: 16:08 JST
- CNN/AP

ミネソタ州ミネアポリス──米ミネソタ州ミネアポリスで10日深夜に生まれた六つ子のうち、15日に新たに男の赤ちゃんが死亡した。死者はこれで3人目。病院関係者が16日に明らかにした。

これまでに死亡した3人は全て男児で、残る男児1人と女児2人も深刻な容体が続いている。

医師は六つ子の両親であるライアン・モリソン氏とブリアンナ・モリソンさん夫妻に対し、出産する子どもの人数を2人に抑えるよう助言していたが、両親はこれを拒否した。夫妻は、残った3人の子どもの容体回復に望みをつないでいる。

日本でも極端な多胎が減っているのは、減胎手術が行われているからだ。
五つ子、六つ子はニュースとしては面白いかも知れないが、母子ともに危険である上に、全員をつつがなく育てるのは大変だ。

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