「マスコミたらい回し」とは? (その68) 奈良県の周産期医療センター、年度内に整備できず
大淀病院産婦死亡事例報道の直後の11/13、ご遺族は奈良県三郷町で、共産党主催のシンポジウムに出席し
周産期医療の充実
を訴えた。
その時の奈良県議会議員で共産党の宮本次郎議員のblogには次のようにある。
周産期医療の充実を求める緊急シンポジウム開催2006.11.13 Monday
周産期医療のシンポジウムには、180名の方からご参加いただき、その模様は夕方のニュースでも放映されました。↑実香さんの義父である高崎憲治さんは、報道後初めて公の場で発言
【遺族からの特別発言】
高崎憲治さん【パネリスト】
今井光子県議
元山美貴助産師(もとやま助産所)
上林美佐子助産師(産科医院勤務)
井戸芳樹医師
(奈良県に小児・母子保健センターの設立を求める会会長)【コーディネーター】
宮本次郎
故人への黙とうのあと、遺族からの特別発言にたった高崎さんは、勇気を出してマスコミ公表をした経過や、大切な人を失った無念な思いを語りました。また「私たちも産科の現状を知らなすぎた」「緊急を要する医療機関が万床で機能しないのはおかしい」と周産期医療の早急な改善・充実をもとめました。
今井光子県議は、分娩を取り扱う医療機関が北西部に集中し39市町村中26自治体で分娩医療機関施設が存在しないことや、NICU(新生児集中治療管理室)やMFICU(母体・胎児集中治療管理室)が必要数に満たないこと、後方病床が不足しており緊急搬送を他府県に頼っているなど、急速に弱まりつつある奈良県の産婦人科医療体制を指摘。今回の事態を直視し、�第三者調査機関の設置�総合周産期母子医療センターと地域周産期医療センターの整備�産科医師、助産師など医療スタッフの確保�今年からカットされた総合周産期母子医療センター施設整備への補助金を財政支援するよう国に求めるなど、日本共産党の緊急提言を報告しました。
医療の現場から、元山美貴助産師は「社会的環境の変化から出産時の危機は高まっているのに、助産師の数が少なすぎる」と発言。上林美佐子助産師は「母体搬送で和歌山まで付き添ったこともあるが、搬送先が決まるまでの時間が本当に不安で、一刻も早く整備してほしい」と現場の実情を訴えました。井戸芳樹医師は、“小児・母子保健センターの設立を求める会”が運動してきた経緯をふまえ、「この間2回の申し入れを通じて、来年度中に精美に踏み出すという積極的な回答を引き出したものの、県の担当者の認識はまだまだ不十分。これから世論を盛り上げてほしい」と訴えました。
会場からは「今回の事態、医療機関の責任はどの程度問えるのか」「奈良県の整備が遅れているのはなぜか」「地方自治体でできることは何か」など質問が出され、パネリストがそれぞれ答えました。最後に発言にたった高崎さんは「19の病院にたらい回しにされた事実は消せない。二度と繰り返してほしくない。」と声を詰まらせました。
(以下略)
このシンポは以下で取り上げており、毎日新聞奈良版では、青木絵美記者が記事を書いていた。
2006-11-17 今週の青木絵美記者@毎日新聞奈良支局
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2006/11/post_4dbc.html
この時の義父の方の発言は、上記に引用した毎日の記事によると、次の通りだ。
実香さんの義父憲治さん(52)も参加し「県民が安心できる妊婦の受け入れ体制を築いてほしい」と話した。
さて、国会などでも取り上げられた奈良県の周産期医療センター設置だが
今年度中には無理
というのが判明して、荒井知事が謝っている。
クレジットがないので、産経の独自取材なのか、共同通信の配信記事なのか不明。
周産期医療施設の整備遅れ 県のずさん対応浮き彫り他府県に比べて整備の立ち遅れが指摘される「総合周産期母子医療センター」について、荒井正吾知事は14日、開設時期が当初予定の来年1月からさらに4カ月ずれ込む見通しを明らかにした。補正予算の編成過程で、無停電の電源装置や排気口などの計画に不備があることが次々と判明し、出費は4100万円増えることに。記者会見で荒井知事は「正直に言えば、見逃していた」と陳謝したが、県のずさんな対応ぶりが改めて浮き彫りとなった。
同センターは、大淀町立大淀病院で昨年8月、分娩(ぶんべん)中に意識不明となった妊婦が次々と転院を断られ、死亡した問題をきっかけに、整備が急がれていた。
周産期医療の施設としては、現在は県立医大付属病院(橿原市)の病棟内に、妊婦を対象にした「母体・胎児集中治療管理室」(MFICU)が3床、新生児を対象にした「新生児集中治療管理室」(NICU)が21床ある。
しかし、同センターに関する厚生労働省の基準では、MFICUは6床以上、NICUは12床以上とされており、MFICUは基準を満たしていない。県によると、基準を満たしていない都道府県は、奈良を含めて8県だけだという。
このため県は、MFICUを3床増やすほか、新たにMFICUの予備的な病床「後方病床」を12床、NICUの後方病床を10床、それぞれ導入することを決定。改修費として、今年度の一般会計当初予算に約1億9000万円を計上した。
ところが、6月の補正予算の編成段階で改めて精査したところ、現在あるNICU用の無停電の電源装置では、改修後に容量オーバーとなることが判明。新たな装置を購入し、入れ替える必要に迫られた。
さらにNICUの後方病床の増設に対応し、圧縮空気の供給や吸引などに使う排気口が必要になるが、予算編成過程では、現在は実際には使用していないNICU8床分の排気口を転用できると想定していた。
しかし、その後現場で確認したところ、改修すればフロアの配置も換わり、実際には転用できないことが判明。その分の増設費が新たに1900万円増えた。
こうした計画の甘さについて、会見で荒井知事は「点検や目が行き届かず、その点ではミスがあった。多少整備が遅れる点はおわびしたい」と謝った。
厚生労働省では全国の都道府県に来年3月末までの整備を指示しているが、奈良では間に合わないことになる。これについて、同省母子保健課は「奈良県は全国的にみて整備が遅れており、以前から早急な整備をお願いしてきた。技術的な問題はあるかもしれないが、工期を前倒しするなどして何とか間に合わせられないか、事実関係も含めて奈良県側と協議したい」としている。
(2007/06/15 03:16)
他紙もほとんど
奈良県の対応に批判的
なのだが、なぜか
毎日新聞だけが変な記事
だ。
総合周産期母子医療センター:本格整備に評価の声 課題は医師・看護師の確保 /奈良高度な母子医療を提供する総合周産期母子医療センターの新規建設構想策定費などが県の補正予算案に盛り込まれたことが明らかになった14日、医療体制の充実を求めてきた関係者らから、本格整備を評価する声が上がった。一方で、医師や看護師の確保など、ハード面以外の課題も残されている。【中村敦茂】
大淀町立大淀病院で昨年8月、分娩(ぶんべん)中に意識不明となり、その後死亡した高崎実香さん(当時32歳)の義父憲治さん(53)は「改善の動きは喜ばしい」と評価しつつも、「箱モノだけでなく、そこで働く人の量と質も高めてほしい。県南部に産科のない状況も、1日も早く改善してほしい」と注文した。
県医師会産婦人科医会の平岡克忠理事は「安全なお産のため立派な施設をつくってほしいが、相当数の医師がいないと医師の側が疲弊してしまう」と指摘する。県医大・病院課によると、センター整備に伴い、医師6人、看護師も約30人の増員が必要。同課は「確保に努めている」としているが、全国的な医師不足の中、状況は厳しい。
県の構想では、橿原市の県立医大病院に新病棟を建設。後方病床を含め母体・胎児の集中治療管理室(MFICU)18床、新生児集中治療室(NICU)51床を設け、開設は2011年度以降の見込み。現在、既存病棟の改修で進めているセンター整備は、新病棟完成までの暫定的な利用とする。
総額59億6000万円の補正予算案は、20日開会の6月議会に提案される。ほかに盛り込まれた主な新規事業は、▽平城宮跡などの歴史公園構想策定8000万円▽奈良公園整備構想策定1550万円▽西名阪道へのインターチェンジ設置活用検討費(450万円)−−など。
毎日新聞 2007年6月15日
ね、すご〜くヘンでしょ?
ところで、最初のシンポジウムが
何故三郷町で開かれたか
大変気になっていた。
そういえば、こんなキャプションも見た。
【医療を問う 第5部】(1)真実が知りたい
(略)実香さんの忘れ形見となった奏太ちゃんを抱く高崎晋輔さん。「真実を知りたい」と語った=1月下旬、奈良県三郷町
これも三郷町だ。
どうも実家は三郷町のようですね。
ちなみにこれは奈良県が公開している建設業者名。
中を検索すると、ちょっとびっくりする。
建設業許可業者名簿
グーグルさんに義父の方の氏名でお伺いを立てたら、この書類がヒットした。たまたま同姓同名の建設業者が、三郷町に在住しているのでなかったら、ご本人だろう。
まあ、実家というか義父の方が三郷町で営んでいる建設業が、今回の
奈良県の周産期医療センター建設指定業者
になるような、大きな建設業者かどうか不明ですが。
大淀病院とご遺族の第一回の交渉で何が起きたか、それはおそらく今後民事裁判で明らかにされると思うのだが、少なくとも、ご遺族にとっては、交渉ごとは初めてではなかったのだろう。そこが一番分からなかったのだが、この奈良県の名簿を見て、ようやく得心した。
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コメント
遅レスですが、三郷町は元々某革新政党の勢力が強く、町議会が定数13ですが毎回3~4議席を確保しています。これは周囲の町村とくらべても突出しています。ですからこの手のシンポや「9条を~」の類の会合がほぼ毎月のように持たれています。
投稿: ただの(ry | 2007-06-26 16:11