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2007-06-11

国際シンポジウム 伝統中国の庭園と生活空間 6/9-6/10@みやこめっせ 第二日目

北京の景山公園は、故宮の北側にそびえる、人工の山である。頂上には万春亭があり、ここからは、南側に広がる瑠璃瓦の葺かれた故宮の黄色い屋根を見渡すことができる。

藤井有鄰館は凄かった。
有鄰館の屋根には
 清・乾隆年製の本物の故宮の瑠璃瓦
が葺かれている。そして、屋根の四方の隅棟には
 走獣
とよばれる、瓦と同じ色の魔除けの動物などが置かれているが、これも故宮のものと同じだ。
去年、瀋陽の故宮で割合近くで見たのとほぼ同じ走獣で驚いた。
藤井有鄰館の屋上に、わたしたちは特別に上がらせていただいたのだが、故宮の瑠璃瓦は、屋上で、実際に目近に見たり、触れることができた。
 皇帝のみに許された黄色い瑠璃釉がかかり、軒丸瓦には皇帝のみが使用できた五爪の龍が踊る、本物の故宮の瓦
だ。皇帝のために焼かれた瑠璃瓦は、堅牢で、今なお風雪に耐えている。
 故宮
http://www.allchina.info/heritages/2007/02/post_7.html

かつて、中国が清末民国初の混乱にあった時期に、中国の文物の散逸を恐れて、蒐集し、公開したのが、藤井有鄰館の創始者藤井善助だった。今でも、定例の開館日は月2回第1・第3日曜(1月と8月は閉館)の正午から午後三時半までの三時間半のみ。その代わり
 私財を傾けて、蒐集した高水準のコレクション
を、
 当代随一の建築家武田吾一プロデュースの元、「コレクションに合わせた展示スペース」から設計した博物館
で、惜しみなく公開している。書画は、照明を落とすことなく、明々とした光の中で、その美を詳細にわたり見ることができるのだ。たぶん、ホンモノをこれだけ明るいところで公開しているのは、世界中でここだけだろう。
その気前の良さには、驚くしかない。

まずは、藤井有鄰館のサイトから。


有鄰館の沿革と概要
京都・東山連峰にほど近く清らかな疎水に面し、乾隆年製の黄釉瓦36,000をのせ、中国古材の朱塗りの八角堂をいただく有鄰館は、大正15年(1926年)に、滋賀県五個荘出身の藤井善助翁によって設立されました。翁は近江商人の血をひき17歳で上海の後の東亞同文書院大学に学び、33歳では数十社の経営に当り、満34歳で衆議院議員となり、この時出会った犬養毅翁の薫陶が中国文化への認識を深めさせ、古印などの収集をはじめることとなりました。有鄰館という名前は、「徳は孤ならず必ず鄰有り」と中国との善隣と友好を願って「論語」より名付けられました。

「美術は一国文明の象徴にして文化の尺度たり。古来、東洋文物の世界に貢献するところ極めて深く、わが国文化の開発は、往昔中国に負うところ更に深し。しかるに近時、東洋文化の誇りとすべき宝器名品海外に流出し、欧米に去るを防がんと欲し、自ら微力を顧みずこれを蒐集す。しかるに美術の人心に及ぼす影響大なるを考え、蒐集家の深蔵を改め、公衆に公開して人心を美化し、美術の学術研究に資する。」という設立者の精神は今日まで脈々と流れ、大正15年以来の定日一般公開をつづけています。

殷代より清代に至る約4000年間に生み出された芸術性の高い中国文化の結晶である、青銅器、仏像彫刻、陶磁器、磚石、印璽、書蹟、絵画などは、私達との血のつながりを肌で感じさせます。 又、文字の発達、変遷を甲骨文や青銅器の銘文にはじまり、多くの資料を通じて学ぶことが出来るのも有鄰館の特徴であります。「精神的に豊かな社会づくり」はビジョンであり、人間性の維持と復活という永遠のテーマに対し、鑑賞者が何らかのヒントを見出していただけると共に、やすらぎのひとときを与えられる美術館でありたいと念じています。(有鄰館館長)

雲崗石窟の仏頭、敦煌出土の絵画や文書、殷墟出土の甲骨など、いまの中華人民共和国に言わせれば
 劫略
と呼ぶに違いない、第一級の文物が所狭しと並んでいる。


蔵品略目
国宝、重要文化財をはじめ、絵画、書蹟、古印等常設展示されていないものもありますのでご了承ください。

一階陳列室  
  佛像・彫刻  
    婦人木彫 エジプト
    マトウラー帝釈窟説法図 インド
    仏伝図・石仏 ガンダーラ
    雲岡石窟仏頭 北魏
    太安元年仏座像 北魏
    天平二年弥勒三尊仏立像 東魏
    元象元年交脚菩薩像 東魏
    河清三年三尊菩薩立像 北斉
    開皇四年金剛力士像
    黄玉観音立像 隋
    仁寿四年鉄観音立像 隋
    貞観十三年仏坐像 唐
    響堂山石窟羅漢像 唐
    五台山胡僧礼拝図 唐
       
  画像磚石・瓦当  
    東王父・西王母画像石 漢
              画像空心磚・狩猟画像磚柱 漢
    十二字磚・長楽未央磚等 漢
    双馬画像磚 唐
    瓦当「羽陽千歳」・「羽陽臨渭」等 漢
       
  石経・経石  
    熹平石経 漢
    正始石経 魏
    統和二十八年陀羅尼石幢 契丹
       
二階陳列室  
  青銅器・權量  
    饕餮文卵形容器(有銘)
    善夫克竊曲文鼎(銘七十二字) 西周後期
    饕餮帶文鼎(銘六字) 西周
    龍文鐘(有銘) 西周
    犧首饕餮巴状尊(有銘)
西周

    男女鈕銅匣 戦国
    犠牛 戦国
    銅象嵌獸文壷 戦国
    鉄権・銅権・銅量等 秦
    鳳鈕蓋薫炉(建平四年銘) 漢
    燭台(建初八年銘) 漢
    獸環銅洗(綏和元年銘) 漢
    塗金獸鐶方壷(長沙元年銘) 漢
    重圏清白鏡 漢
    八稜雲龍鏡 唐
    海獸葡萄鏡 唐
       
  銅仏  
    古式金銅菩薩立像 五胡十六国
    青銅三尊仏立像 北魏正光三年
    金銅仏立像 北魏孝昌二年
       
  玉器  
    玉璧・玉�・含玉 周
    渦文玉 周
    緑色玻瑠環 周
       
  漆器  
    鳥獣雲気文漆奩 漢
    塗漆木肘付弩 漢
       
  璽印・封泥・印譜(常設展示ではありません)  
    周玉璽・古印(官私印)  
    「日庚都萃車馬」 戦国
    「彭城丞印」・「和仁都尉」 漢
   
純金印「崇徳侯印」「関中侯印」


    流金龍鈕「内府図書」 南宋
    乾隆帝玉璽「十全老人之宝」 清
  文房具  
    瀞上人端渓詩硯 宋
    桃河緑石蛟龍硯 宋
  衣裳  
    夾帯衣裳 清
       
三階陳列室  
  陶磁器・玉器  
    緑釉・望楼・犬・鷲・梟 漢
    鎭墓獣及び神将俑 唐
    三彩馬及び胡人 唐
    万暦赤絵薫炉
    梅花碗古月軒 清
    翡翠水瓶・香炉 清
    白玉香炉 清
       
  寝台・衣裳  
    螺鈿朱漆寝台 明
    乾隆帝龍袍
       
  書蹟・古文書・碑版法帖(常設展示ではありません)  
    華厳経巻第三十七(開皇三年) 隋
    顕揚聖教論巻第五(貞観二十二年) 唐
    西域出土文書・勧善文  
    天発神讖碑・爭座位帖  
    春秋経伝集解 唐
    黄庭堅 李太白憶旧遊詩 北宋
    范純仁告身(元佑三年) 北宋
    蘇軾 尺牘 北宋
    呉説 遊絲書(紹興十五年) 南宋
    張即之 李伯嘉墓誌 南宋
    鮮干枢 杜甫詩草書(大徳二年) 元
    宣宗帝勅書(僧道淵に下賜) 明
    董其昌 謝希逸月賦(万暦三十九年) 明
    王鐸 香山寺詩(崇禎十三年) 明
    朝鮮通信使関係資料   
       
  絵画(常設展示ではありません)  
   
            南詔国観音応化図

五代
    王庭筠 幽竹枯槎図 金
    許道寧 秋山蕭寺図 北宋
    馬和之 毛詩大雅蕩之什図 南宋
    陸治 白岳紀遊図(嘉靖三十三年) 明
    陳洪綬 花鳥図 明
    王時敏 菖蒲石寿図(順治十年) 清
    郎世寧 春郊閲駿図(乾隆九年) 清
    楊柳観音像 高麗
    聖徳太子孝養図(鎌倉) 日本
       
貴賓室  
    堆朱衝立・大埼子 清
    鳳凰立像薫炉 清
    乾隆飾付時計 清

もし、これらがここになかったら
 日中戦争や国共内戦や文化大革命で永遠に失われていたかも知れない
と思うのだ。

屋上には、北京の役人だか金持ちだかの東屋が移築されている。外の彩色などは、塗り替えられているが、内部には、四隅に巨大な四天王の板彫があつらえたように配置されている。もともと四天王がこの東屋のものだったのか、そうでなかったのかはわからないが。
ちょうど、藤井家の方がおいでになって説明してくださったところによると、有鄰館を作ろうとしているときに、たまたま北京で道路の拡張工事があって、この東屋が取り壊されそうになったので、買わないか、というオファーがあったとのこと。二つ返事で引き取ってみると、最初からそうであったように、屋上に配置するのにぴったりの東屋だったそうだ。
往時の岡崎一帯には、今のように高い建物は少なく、屋上の東屋からは、東山一帯が我が庭のように眺められたであろう。
誠に贅沢な空間なのである。

中央大の妹尾先生が
 京都にはすごいものがありますね
と嘆息されていた。空襲で焼け野原にならなかった京都ならではの文物管理ではある。

館内で一部4000円の図録を求めた。これまた気前のよい図録だった。

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