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2007-06-22

平城宮跡付近にホテル誘致?

国から金をいかに引き出すか。
官僚の優秀さは、予算をどれくらい分捕れたかで決まるという。
官僚が自治体の長になると、次にやるのは
 地元の懐を痛めず、いかに国から金を分捕れるか
だ。

奈良県の荒井正吾知事は、運輸省出身。その後自民党から参議院に出ていたが、今年、前知事引退に伴い、知事選出馬、初当選となった。ま〜、このヒトが出るまでの間に、誰が出るか、奈良県の官庁周辺はかまびすしかった。
2010年の平城遷都1300年記念事業では、荒井知事は
 平城宮跡に恒久的施設を建設して、国営公園化し、観光客を呼び込む
というのが方針のようだ。当然
 お財布は国の税金
である。国営公園なら、国に作ってもらえばイイわけね。

5/30の定例記者会見ではこんなことを言っている。


平成19年5月30日(水)
(略)

平城遷都1300年記念事業について
記者: 平城遷都1300年記念事業についてですけれども、文化庁に対して使用許可の申し出がまだないとお聞きしてるのですが、いつごろに出される?
知事: 今まで使用許可の内容として、パビリオンをいくつもつくってという内容の内々の詰めがありました。今度は、大極殿の復原を主として国営公園の方式でしてもらおうと。そして、平城遷都1300年記念事業に今の天皇陛下の行幸を仰ぐということになれば、国の国営公園事業として、大極殿の周りの大極殿院や朝堂院を整備してもらうようにお願いできないかと考えています。国営公園化の同意と、その上での祭事をどのようにするかという2つの仕組みが要ると思います。まずハードをどうするかということで、文化庁に同意してもらえるような内容にならないと。そして、その上でやる祭事、お祭りも宙の上でするわけではないので、文化庁の許可は遅くなると思います。
記者: そうですか。
知事: 内容が固まった上で、国営公園の中で何をするかということもすり合わせながら、使用許可の申し出をしたいと思っています。
記者: 大極殿院と朝堂院の整備をまずお願いして、同意を得た上で、その上で何をやるかについてまた許可を仰ぎたいと?
知事: そうですね。この前の要望で、文化庁は「平城宮跡の復原を国営公園の方式でやるのは総論的には賛成です」というところまで言っていただいて、ではどのような復原だと賛成なのか、それはいつどのあたりまでするのかということを、これから事務的に詰めなければいけません。それを国土交通省の予算要求までに、基本的な絵柄を書かなければいけませんので、そのためにはこちらからこういう形にしてほしいということを要望に行き、その案が固まってくれば発表しようかと思うのです。
 けれども、まだ絵をかきつつある段階ですので、その絵が出来てお願いした段階で、ではその場所でどのような催し事をするのかという仮のアイデアを発表していきたいと思っています。
記者: そうすると文化庁の許可はかなり遅くなるということですか?
知事: そうなりますね。
記者: 最速のスケジュールでいってもかなりずれ込む?
知事: そう思いますけどね。
記者: どのぐらいを予測しているんですか?
知事: 国営公園の同意をしてもらうということは、予算要求のときに文化庁のある程度の同意や協力がないと「人の土地で勝手に予算要求をして」ということになりますから。
 概算要求のときに国土交通省へ要望書を持ち込んだときに「文化庁はこれでいいと言っているんですね」と必ず聞かれると思いますので「はい、そうです」ということができればと思うんですね。予算要求までにそのすり合わせの過程で、国営公園の上で祭事をしますということならば、実質的にはその時点で何らかの形で了解となると思うんです。ただ、その許可申請と許可に何かの形が要るならもっと遅くなるのかもしれませんが、実質的に国土交通省の予算要求に「文化庁の同意を得て予算要求にまいりました」ということになれば、それは実質的に同意というようになると思います。
記者: 予算のスケジュールと絡めて、やっぱり夏、秋頃になると?
知事: 予算の概算要求は8月末ですが、それまでに普通は与党の調整というか報告があります。議連と政調にかけるというと、議連は予算要求前の夏に参議院議員選挙があるから、今年の議連や政調の自民党と与党との調整は、おおよそ8月の末ぐらいに「要求はそれでいいよ」というのを報告します。あとは編成過程で「応援してやるぞ」ということを各部会でお墨つきをもらうのが常ですので、そこにかけるということは与党の了解をもらったということになります。「頑張ってきます」といって予算編成過程に事務的に入りますので、秋以降ですね。内示は12月に出ます。この内示がとても重要で、予算要求を宙に浮いたようなものもできません。
 先日要望に行ったときも財務省の主計官も、既に予算要求前から勉強してくれていました。こんなことはめったに査定官庁ではないのですが、事急ぐということで査定官庁の方が随分勉強してくれていまして、それはありがたいことだと思っています。
 国土交通省も平城遷都1300年記念事業をどのように助けられるのかということを、事務的にもいろいろと、総合政策局が各部局に照会をしてくれていまして、これもとても異例のことでありがたいと思っています。心して要求していかなければいけないと思っています。
記者: そうすると許可の方向性については、今おっしゃったように早ければ夏ぐらいにめどがつけれたらいいなという?
知事:実質的な意味としては、そういうことですね。要求の内容が固まれば大きなめどはつくと思います。許可行為というのは、後になると思います。許可となると、要求が確定していないとなかなか出ないと思いますので、予算内示が出るまでには許可は出ないと思うんですよね。
記者: もう一度繰り返しますが、大極殿院や朝堂院の整備をしてもらうお願いも、この6月4日の宮内庁のときの陳情とは別ですか?別ですよね?
知事: 宮内庁は平城宮跡に関係していませんので、別ですね。
記者: そうですね。
知事: 要求するのは国の官庁だから事務的に会議を積み重ね、折衝が進んだ段階で、すり合わせのもとに地元でも発表しないといけないと思っています。もう少し遅くなると思うんですが、段取り的には、遅くとも議連と同じぐらいに発表しないといけないと思っています。議連がいつ開かれるのかは、選挙や先生の日程とかあるので、それと内閣がどうなってるかとか、いろいろあると思います。
記者: 今の話で夏ぐらいに方向性にめどをつければ、2010年のスケジュールには?
知事: 急がないといけないですが、間に合うような内容にしていかなければいけないと思います。正式に予算が固まるのは、内示のある年末になるのですが、その過程で折衝していますと、政治的なバックアップも含めて感触は出てくると思います。平城遷都1300年記念事業が成功がするかどうかの大変大きな要求と結果なので、今年1年は大変緊張した年になると思っています。

おお〜、すげー。元の出身官庁(現国交省)に
 お願い
に行ってるのね。
しかし、文化庁がそうそう簡単に首を縦に振るものかどうか。
 奈良を儲けさせるために、ここは一発、税金を投入してください
というのをお願いするのに
 天皇行幸をダシに使っている
わけで、政治手法としては普通なのかも知れないけど、あまりいい感じはしませんね。それとも、これが
 国交省の予算分捕りの伝統的手法
ですか。確かに
 行幸・行啓があると道が整備される
のではあるけど、今度は
 大極殿だけでなく、他の施設も整備してもらっちゃおう
という、すごい合わせ技だ。国の借金がいくら、一世帯当たりにするとどのくらいの額というのを、毎日カウントしてくれる「財部誠一 借金時計」
http://www.takarabe-hrj.co.jp/clock.htm
を見ると、そんな暢気なことを言ってられない訳なのだが。
そもそも
 平城宮跡を整備すれば観光客が来る
というのは幻想に過ぎない。
奈良に来ないで、なぜみんな京都に宿泊するのか。
理由は簡単。
 奈良には、文化財以外に魅力的なコンテンツもサービスもない
からだ。たとえば
 京料理はあっても奈良料理はないに等しい

 京の職人技は有名でも、奈良の職人技は地味
だ。都としても
 京は1000年の都、平城京は8世紀に70年ちょっと(740年代には聖武天皇がうろうろするから奈良は都ではない期間がある)だけ都
だったわけで、地力が全然違う。
 奈良の寝倒れ
という言葉があるごとく、夜の楽しみについては、京都の足下にも及ばない。
そんなプアな環境に今度は
 国賓を呼べるホテルを平城宮跡付近に誘致する
んですと。
毎日新聞奈良版より。一連の大淀病院産婦死亡事例報道でもおなじみの中村記者の記事。


県:平城宮跡周辺にホテル 知事が誘致の意向表明 /奈良

 荒井正吾知事は20日の定例会見で、国営公園化を目指している奈良市の平城宮跡周辺に、大型のホテルの誘致を検討することを明らかにした。外資系を含めて誘致先を探したいという。
 荒井知事は「セントラルパーク(米・ニューヨーク)、ハイドパーク(ロンドン)など街の中の公園のそばはホテルの好立地。都市計画など手続きの問題はあるが、大きな売りものになる」と説明。「宿泊数の増加を観光面で最大のターゲットにしたい。国際会議で元首級が泊まれるホテルがないのは情けない」などと必要性を語った。【中村敦茂】
毎日新聞 2007年6月21日

6/20の定例会見は、まだサイトに載ってない。
ああ、さすが元運輸官僚。
 金をかけて、ハコモノを作れば、人が来る
と思ってますね? ひょっとして
 ウインザー洞爺のマネ
でもしたい?
奈良は都市としての魅力に欠けるから、宿泊客が増えないのだぞ。問題はハコモノじゃなくて、
 ソフトウェア
の方だ。
で、平城宮跡付近って、当然
 緊急発掘をやって、「遺跡は破壊してホテル建設」
ってことですね? 今度
 長屋王邸宅跡級の遺跡
が出ても、
 破壊してホテルを建てる
って、
 そごう誘致の時と同じ轍(てつ)を踏む
ってことで、よろしいですか?
これが
 荒井知事の考える「文化・歴史の活用」
らしいぞ。

続き。wiskijiさんから次のようなコメントを頂いた。


荒井知事のサイトの公約を見ても坊さん風体の下に開発主義という鎧が丸見えですね、近鉄西大寺や平城京跡区間を地下化とか、山辺の道付近に「高速道路をもう1本?」ですし。
平安京へ遷都することになった原因が仏教勢力だそうですが、偶然ですかねえ…

外資系だと国際的な保険会社の多面的な評価も加わるので厳しくなるんじゃないかな。
宿泊の「稼働率」なら、JRと自治体が共同作戦を行うDestination
Campaignといった地域活用という意識を定着させないでは、いくら箱を作っても元の木阿弥でしょうに。

荒井知事って、見た目は、いいおじさん風なんだけどね。。。

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コメント

平城遷都1300年記念事業については柿本前知事は、愛・地球博のような博覧会方式で総事業費350億円(財源は公費145億円、民間から寄付105億円、入場料収入100億円)平城旧跡に建設するパビリオンへの入場者数500万人という明らかに実現不可能な計画を推進していました。
全国でも最悪の医療状況でありながら、一過性のイベントに公費145億円も県財政から捻出できるでしょうか?
これを荒井新知事はパビリオン建設中止など事業費の大幅削減とともに事業計画を白紙にしたうえ、国営公園化(国財政は痛むが県財政は痛まない)により観光振興を図るということです。
平城旧跡については、1978年策定の「特別史跡平城宮跡保存整備基本構想」http://www.nabunken.go.jp/site/daigoku.html
という文化庁の構想が元々あり、現在行われている大極殿の復原はその一環(文化庁の事業で県費は投入していない)です。つまり、大極殿院と朝堂院の整備もその延長線上で、ということでの要望です。

宿泊客数に関しては、まず県内宿泊施設の客室数が全国最下位であることをご存じでしょうか?故に宿泊者客数の増加策として宿泊施設誘致は有効です。平城旧跡の真横というわけにはいきませんが、「国営公園 平城旧跡」近隣のホテルは魅力的であることは間違いありません。

投稿: 県庁職員 | 2007-06-23 22:37

コメント連発ですみません。

>奈良には、文化財以外に魅力的なコンテンツもサービスもないからだ。

天然記念物「奈良のシカ」、あきません?
大型の野生?天然記念動物が多数うろちょろしている所なんて京都にはないとは思いますが(笑)

投稿: 県庁職員 | 2007-06-24 00:20

逆ギレのような印象がするのは私だけ?
将来は自治体に返還する考えがあると、このblogで書かれていましたが…
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/02/post_3948.html

また、稼働率が悪いのを放置する体質を改善するのが先のように思います。
そうしないと折角の箱を作っても思った通りの収益が上がらない恐れも出てくるでしょう。

復元事業にしても、外形を大きく変更するようなら、それが相応しい内容かどうかをユネスコが第三者に調査させることになるのでは無いでしょうか。
大和北道路の件では、国の対応は問題が多いとNGOから指摘されています。
また、2006/11/4に来奈し講演されたユネスコのボッカルディ氏は
「遺産の保全と利害が対立する人々とも交渉し、意志決定をする必要がある」
と述べたそうです(2006/12/2日経p31)。
今の状況は、対立する人々を遠さげているように感じられます。

投稿: miskij | 2007-06-25 02:39

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