現代医療を拒否して新生児死亡でも「幸せ」 2005年12月の出来事→問題の吉村医院の元助産師長の講演をあの毎日新聞が宣伝
すでにあちこちで取り上げられているので、詳しくコメントはしないが
1. 妊娠44週まで「医院」で「自然分娩」待機
2. しかも逆子(骨盤位)で赤ちゃんの頭が母体の骨盤を通り抜けられないほど大きい
3. 緊急帝王切開となり、近所の病院に搬送→無事出産
4. なぜか帝王切開した病院をわずか1日で退院、元の「医院」に母子が戻り、そこで新生児死亡
という謎の経過をたどった父親の書いたblogがある。
最初に取り上げたNATROM先生のblog「NATROMの日記」
信仰と狂気〜吉村医院での幸せなお産
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20070707#p1
最初のblogの内容の魚拓
http://megalodon.jp/?url=http://www.komeday.com/osan11.html&date=20070706124013
現在の該当箇所エントリ(移動した模様)
http://blogs.yahoo.co.jp/komeday_no1/48135683.html
http://blogs.yahoo.co.jp/komeday_no1/48199372.html
http://blogs.yahoo.co.jp/komeday_no1/48199343.html
http://blogs.yahoo.co.jp/komeday_no1/48199319.html
どうやら、問題のお産は2005年12月にあったことのようだ。つまりごく最近の出来事なのである。
現在、NATROM先生のblogのコメント欄に
A 当時吉村医院から搬送を受けて対応したかもしれない医師
B 上記で問題になったblogを書いた父親本人
が登場して、すごいことになっている。
「自然なお産」が洗脳の域に達すると、どういう悲劇が生まれ、その「被害者」である赤ちゃんはすでに亡くなっているために、永遠に語ることがない故に、どういう解釈ができていくかという過程を見ることが出来る。
現在の父親のblogから消されている
命を救ってもらった搬送先の病院に対する批判
の部分は以下だ。
大病院でゆきは、手首にバーコードをつけられ、工場のベルトコンベアーで流されるように手術室へ入っていった。マニュアルのように繰り返される看護婦さんの一見、やさしげな言葉もゆきの心には届かず、時間どおりに手術は終わった。
何もかもがピカピカであらゆる設備が整った最先端の病院のなかで、時間どおりに無表情な看護婦さんが忙しそうに診察をくり返していく。
目が死んでいる。心が死んでいる。
この世界をつつむ東洋の宇宙観(易ともいう)に比べれば、科学や医学といった形而下学的事象というのは、ほんのつめの先ほどの幼稚な認識でしかないのに。そんな世界でしか生きていない人たちは、きっと本当の幸せを知らないのであろう。
物質的な幸せを追求していたあのころ・・・行き着いた先に幸せはなかった。すべてを捨ててたどり着いた心の宇宙の果てに、この世界の幸せがすべてあったのだ。
人は旅人・・・この世の中をいつも心で感じながら、もくもくと生きている心の旅人。
人の心は宇宙・・・人とのつながりが心をはるか遠くへ連れて行く。人との出会いは、この広い宇宙で点と点が出会うようなもの。求める心が必然に魂の友を引き寄せる。
人との出会いにこそすべてのはじまりがある。人との真剣な関わりの中で、愛と真実がうまれて心の旅がはじまっていく・・・
心の宇宙を旅していたら、はずれのはずれへ行ってしまった・・・
そこには何も存在しなかった。時間も空間も生きている意味さえ何もなかった。しかし、すべてがあった。ただ、質量をもたない一瞬が、永遠につながっていた。
この世界は、人の心が作り出した幻のようなもの。人も街もあるようでない。
この世界で、本当に大切なものは、愛と真実だけだった。
人はやがて、物質社会にはない本当の幸せを知るだろう。そんなときがやがてくるだろう。世の中には、そんな真実の宇宙へとつづく魔法の扉がところどころにあるのだ。実は、ありふれた日々の暮らしの中のあらゆるところにあるのだ。その扉は、目では
見えない。心で感じるしかない。あらゆる心のこだわりと欲を捨て、心を空にするとその扉がみえる。心の宇宙を旅する魂の旅人だけが、その扉を開けることができるのだ。
一ヵ月を超える、僕たちの旅はおわった。
ここまで言われながら、44週の過期産の母子の救急救命に当たられた先生方、医療スタッフの皆様に対しては衷心より、感謝を申し上げる。
また、失われた赤ちゃんの命についても、お悔やみ申し上げる。
NATROM先生のblogのコメント欄に寄せられた、吉村医院から搬送を受けた医師の怒りの声。
おそらく貴方が 『送られた搬送先病院に昔勤務していた医師です。
あなたのブログには怒りを覚えます。
搬送元の病院に対しても。ただそれだけです。』
ひとつだけ 『大病院であろうとも、人力は無尽蔵ではありません。
搬送された病院の産科医師は5人程度だったはずです。
何人みかけましたか。麻酔に一人、手術をするのに2人。NICUから当直Drが一人。
呼ばれるたびに召集してきてやっています。
手慣れているから機械的にみえるかもしれませんが、私たちの努力と労力は無尽蔵ではありません。そのたびにキリキリと胃を痛めながらやっているんですよ。
あの病院からの搬送者はほぼ全員おなじことを退院後にいっていらっしゃるのは知っているので、ある程度慣れているはずですが、文章でみるのはさすがにちょっと吐き気がします。』
で。
この手の
「自然なお産」信仰の事例
は、宗教学系・社会学系学会でも発表され、おおむね
「自然なお産」プロパガンダ
に傾く。わたしの師匠(宗教学)の言では
宗教学なんてもう学問としては終わってる
ということなので
死んだ学問領域ではどんな「トンデモ言説」も「学会発表」として許される
ということなのであれば、納得は行くけれどもね。
この問題のblogの書き手は「マクロビオティック」信者だそうだが、この手の
自然食信者
には
「自然なお産」信者
が含まれる。
以前、「大地を考える会」の野菜を購入していた頃、農場便りかなにかで
「自然なお産」にあこがれ、自宅出産を目指したが、赤ちゃんは1週間で亡くなった。親は「産む気持ち」になっていたが「赤ちゃんを無事に産める身体にはまだなっていなかった」
というエッセイを読んだことがある。今から25年くらい前だと思う。その「自然なお産」第一世代の産んだ子どもが、出産適齢期に入りつつあるわけで、今後も
「自然なお産」医院から急変して周辺の病院に搬送
は続くだろう。なんせ、吉村医院では、ちょっと古いデータ(2001年)で、
外部からの搬送0
帝王切開率 0(他院に紹介)
24時間いつでも30分以内に緊急帝王切開が可能ですか。 NO
前回帝王切開した人の試験分娩 症例によりトライアルを行う 成功率ほぼ100%
逆子の試験分娩 症例によりトライアルを行う 成功100%
会陰切開率 全体で数%(あえておこなわない主義)
陣痛促進剤の使用 ほとんど0%
だ。
当然、
キラーパスに近い搬送
を受けるのは周辺医療機関だ。
他の産院との連携
母体搬送先 市立岡崎病院 安城更生病院 トヨタ記念病院
赤ちゃん搬送先 市立岡崎病院 安城更生病院 トヨタ記念病院
年間搬送率 約2%
ということで、この時点で
年間分娩件数 350件
だから、最低でも
7件の救急搬送があった
ということになる。
続き(17:17)。
うろうろドクター先生のblogの
自然分娩・・・、信じるものは救われる?・・・、母子の命より大事なものがあるのでしょうか?
http://blogs.yahoo.co.jp/taddy442000/14178369.html
という記事経由。
問題の吉村医院で助産師長をしていたという助産師さんの講演活動を
毎日新聞が宣伝
だってさ。
講演会:自然分娩で親子の絆 甲府で7日に /山梨医療行為を極力行わない自然分娩(ぶんべん)で知られる愛知県岡崎市の吉村医院で助産師長だった岡野真規代さん(55)が7日午後2時から、甲府市の県立文学館で講演する。「いのちとの出会い」と題して話す岡野さんは「家族に見守られながら自然に任せて出産することで得られる親子の絆(きずな)を体験してほしい」と話している。
岡野さんは99年から5年間、古民家を利用して自然分娩を行う同医院の「お産の家」で助産師として勤務。これまでに約3000人の赤ちゃんを自然分娩で取り上げた。現在は、札幌市にある天使大大学院の助産指導員として働く一方、自然分娩できる「お産の家」の設立を目指している。
岡野さんによると、生まれてくる赤ちゃんの健康は母親の健康と密接に関係しているため、日常から体を動かすことを求める自然分娩は、母子の健康を保つのに有効という。長くて苦しい出産も個性ととらえ、「早い方が良い」という認識で医療行為を行う現代の出産に異論を唱える岡野さんは「病院に産ませてもらうのではなく、『自分で産む』という意識で出産に臨んでほしい」と呼び掛ける。
前売り1500円、当日1800円。問い合わせは主催の「やまなし自然育児ネットワーク」(電話0556・22・2650)。【沢田勇】
げ〜、
天使大学の助産指導員
ってホントかよ? いま天使大学のサイトを確認したら、教員というわけではないみたい。
ま〜
お産の家
をどちらにおつくりになるつもりか知りませんが、北海道はやめてね。そうでなくても産科医が多いというわけでもないのに
緊急搬送の原因となりそうな「お産の家」
を作られたら、北海道の周産期医療はパンクしてしまう。冬は札幌だって、道路事情によっては、簡単に緊急搬送できないこともあるのだ。どうしても作るなら
雪の積もらない暖かい地域
にしてください。
しかし、毎日新聞
今度は「自然なお産」プロパガンダに荷担
ですか。「大淀病院産婦死亡事例」報道以来、
そんなに現代医療によるお産が憎い
んですかね? もう、今後
毎日新聞社員とその家族が出産するときは全員「吉村医院」で出産
したらいかがですか?
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コメント
反吐が出る話です。
投稿: Nebula202 | 2007-07-13 18:43
>どうしても作るなら
> 雪の積もらない暖かい地域
>にしてください。
返上。\(^o^;)/
投稿: BUNTEN | 2007-07-13 20:18
札幌の隣町:江別に住む者です。
市内にある産科ですが、我が家の小学生の娘達の出産の頃に比べ△4の+1で差引△3です。その一つにあの市立病院が含まれるます。
で、札幌のベットタウンな街なので比較的若い人が多いのですが、今は産科が1つしかないので、お母さん達は大変なようです。
聞いた話でしかないので実感は無いのですが、もう周産期医療はパンクしているかもしれません。なにしろ人口12万な市なのですから…
投稿: まる | 2007-07-13 21:19
件のブログ、HPなども行って来ました。確かに字面でみると吐き気すら覚えますな。
雪の夜道はAmishを連想したのだけれども、彼らも現代の産科医療は拒むのかどうか、浅学にして知らない。
また天使大学。HP見たけれども、Angel setにつながる助産教育をするなら、日本には要らない。
投稿: 雪の夜道 | 2007-07-13 21:26
日本の出産数を減らして得をする国の工作機関と言われるだけありますね>侮日新聞は
投稿: sakimi | 2007-07-13 22:17
両親に信仰の自由はあるけど、子供には生きる権利がありますからねえ。
自然なお産を絶賛するのはいいんですけどね。
「帝王切開では子供を愛せない」みたいに自分の信じる道以外を認めないから困ったものです。
投稿: aa | 2007-07-13 22:26
たぶん、連携先の中の人からと思われますが(↓
http://society6.2ch.net/test/read.cgi/hosp/1176886948/l50
484 :卵の名無しさん :2007/04/30(月) 19:28:19 ID:tkAkbHOu0
>476
吉村病院は近くの基幹病院(3つある)では有名な病院だ。
NICUのDrに「吉村からの搬送です」とさえいえば、詳細な説明一つしなくても蘇生セット用意して飛んでくる。
いままでに何度、ものすごくいやな目にあった事か。
ここで帝王切開例がゼロなのは、全部搬送しているから。
胸張って宣伝するんじゃないよ、と記事をみるたびに辞めたい気持ちでいっぱいになる。
投稿: t_f(ROM専門) | 2007-07-14 10:07
追加で拾い物ですが(↓
【奈良】 妊婦がほかの病院への受け入れを次々に断られた末に死亡した大淀病院が産科医を募集
http://news22.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1184228896/l50
231名無しさん@八周年2007/07/13(金) 22:45:51 ID:iN8ncWiq0
関西の記者仲間でも「大淀のアオキ・ハヤシ」でそれなりに通るからなあ・・・
若いけどちょっとした有名人だな。
事実確認や記事内容、表現の妥当性よりも話題性・反響の大きさが
その記者への評価のモノサシという世界だけどね
彼女たちはこのスレで言われていることに殆ど気にしていないと思うよ。
むしろ反響の一つ・やっかみ混じりのヤジぐらいとしか見てないんじゃないの?
半年以上前のネタだから、賞を受けたことの他には、
日々の取材に追われて事実誤認も含めて(ホントはまずいが)忘却の彼方だと思うよ。
書かれた相手、読者のこと、ましてや記事が与える今後の影響なんてヘタに考えたら
誰も記事が書けなくなるよ。
「産科止めたのは医師本人の反省の気持ちと後ろめたさの表れ。
自分たちは天に代わって社会悪を炙りだしただけ」
と受け止めていることでしょうな。
投稿: t_f(ROM専門) | 2007-07-14 10:09
私はクリスチャンで、Amishの方々とは比較的近い宗派ということもあって、一昨年渡米してAmishの人と交流したことがあります。そこでの経験で言えば、基本的にお産はAmishのコミュニティの中におられる助産師さん(ちゃんと公的な資格を取られています)がしておられました。
しかし西洋医学を否定しているわけではなく、手に負えないと分かるとすぐ病院に搬送するそうです。私が行っている間もある妊婦さんに「骨盤が小さいようだから一度病院を受診しなさい」と言われていました。私が帰国後に聞いたところ、38週で帝王切開されたそうです。
ただ彼らは社会保障を一切受けていないので膨大な医療費を請求されます。それはコミュニティの中でお金を出し合ってカバーしておられました。
投稿: ただの(ry | 2007-07-14 11:12
「自然分娩」でなおかつ「胎盤食」までやらかしてくれているのであらうか。反吐が出る。(゚⊿゚)イラネ
おまけに「天使大学」
ネ タ で つ か ? (゜д゜;)
投稿: SY1698 | 2007-07-14 11:56
NATROM様のBlogは、双方の中の人(?)が参戦してすごいことになってますね。
「自然なお産」信者が*何があっても近代医療に一切頼らずに*
頑に「自然なお産」教を守ってくれれば
10年もしないうちに信者が壊滅して平和になるんじゃないかと思ってしまった。
投稿: 泥曰 | 2007-07-15 04:30
岡野さん、自然分娩で暖かい光に包まれたお産をしたい方々の為に、お産の家設立、頑張ってください!!
ずっと応援しています。
それにしても、みなさん随分ひどいことを書きますね。。こんなに酷い言葉を浴びせる人たちが、良いお産をし、子供を育て、良い社会を作っていけるのでしょうか。。。
投稿: あの〜 | 2007-07-31 23:31
当エントリ末尾にある「天使病院」ですが、今日の北海道新聞夕刊によりますと、9月末までに産婦人科医全員が退職へ、ということだそうです。
経営移管に伴う新法人の経営方針をめぐる意見対立が原因だそうです。
投稿: まる | 2007-08-10 20:18
「自然分娩」「オーガニック」・・・はいはいどうぞ、ともいえない世の中です。私は燃え尽き新生児医ですが近所の「札付き」に悩まされる一方「自然志向」な人々の戯言にも悩まされました(ですよね産科の○×先生)。
燃え尽きちゃった今、彼ら、もとい、「そのような意向をお持ちの患者様」には、「だったらウチにくるんじゃねぇ。ただ、赤ちゃんの安全は自分自身で確保してね」ですかね。吉村先生の言うように「西洋医学しか信じない奴はアホじゃ」本当かもしれません。しかしソクラテスの無知の知ともあるもので「何も分からないアホ」の集団だからこそどうしてかと悩んで考えて成し得たこともあるわけで、それをひとからげに「アホ」の一言でくくられてもねぇ・・・
投稿: ダメダメ21 | 2007-10-27 12:51