虎なんていないのに@医心方巻十八
ひたすら『医心方』各巻の細目を手で入れている。手元にあるのは半井家の写本を江戸時代に翻刻したものの影印版だからOCRが使えない。 翻刻の詳しい話は森鴎外『澁江抽齋』を読んでくださいね。
ま、手で入れると覚えるからいいけど。
いま片付けた巻十八というのは
いろんな動物や昆虫に咬まれたり刺されたりしたときの治療法
が載っている箇所。
日本に虎なんていないんだけど
虎に咬まれたときの治療法
なんて項目がある。おい、丹波康頼、ちょっと聞きたいんだが、
見栄で入れたのか?
あとヘンなのは
蚯蚓に咬まれたときの治療法
とか
井戸や古墓の毒に当たったときの治療法(井戸は分かるが墓の毒って、墓泥棒でもしてるのか?)
とか
熊に咬まれたときの治療法
も、当然ある。いずれも遭遇したくない。
蛇に巻き付かれたときの治療法
という、あまり考えたくない状況にも、きちんと対策がある。
この巻の前半は、刀傷や矢傷の治療法が列挙されているのだが
刀傷を負って、エッチしたら、急に大量出血しちゃったときの治療法
なんて
英雄色を好む
というか
おい、ちょっと待て
というか、何とも不思議な状況の治療法も記されている。
まあ、古代の人たちの
分類法
って、よくわからん基準だから、適宜突っ込みを入れながら入力していくことになる。ちなみに、この巻の最後は
蠱毒を避ける方法
だ。蠱の呪いなんて、掛けられるとイヤですが。
論文が仕上がって暇になったら、こうした変な治療法を紹介していこうかな。
巻十八に関しては槙佐知子さんの現代語訳があるのだが、滅茶苦茶高価な上に、大学図書館には所蔵がない。筑摩が出してるんだけど、大学図書館が入れてないって事は、値段の問題なのか、訳の精度の問題なのか。NIIで引っかかってこないからなあ。国立国会図書館にはさすがにあるけど。
槙佐知子訳『医心方』は現在までに全30巻の内の23巻分が出ている。一冊18000円前後だから、全部揃えるとちょっと目がくらみますね。どうしても読みたければ、国公立図書館で入れてもらって読むのが吉かな。
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コメント
お暇なときでよろしいので、ぜひお願いいたします。
とても興味があります。
色々な想定での治療法があるとのことですが、古武道でも同様ですね。依然習っていた居合の流派(400年前の)でも、暇乞いのときに襲われた場合とか、月明かりのないときの対処の仕方とか、両側が壁の通常の方法で抜刀できないときの身の処し方とか色々とありますです。
多分、同じような思考の仕方なのではないかと思いました。
投稿: ばあば | 2007-07-31 19:13