「マスコミたらい回し」とは?(その88)産科医は促成栽培できる野菜じゃありません 養成に最低10年かかる産科医は絶対数不足なのにNHKニュース9で「スピード感をもって望んで欲しい」「安心して子供が産めません」と血迷ったコメント
NHKのアナウンサーの個人的事情など知らないが
ニュースウォッチ9担当の伊東敏恵アナは子どもを産んだことがない
のか?平成8年入局なので、現役入局なら御年は今年で34歳か。女の厄年も済み、そろそろ
出産を考える年齢
だろうと思うのだが、産科崩壊関係のニュースに対するコメントがだいたい
「夢見る乙女」系
で、地に足がついてない。最近の女性は出産年齢が上がっているとはいえ、
公共放送の看板アナが30歳を過ぎて「夢見る乙女」系コメントを垂れ流している
のは感心できないし、視聴者に与える害の方が大きい。そもそも恥ずかしいとは思ってないところが凄い。
今週はお休みで、代わりは
青山祐子アナ(画像はクリックすると拡大します)
だが、こちらは
伊東敏恵アナよりさらに「夢見る乙女」系
である。青山アナの方が、伊東アナより一期上なのだが、一体どうしたことだろう。
7時のニュースに続き
ニュースウオッチ9
でも、
奈良県の妊婦さんが搬送中に事故にあい、流産
というニュースは大きく取り扱われた。ただし、
扱い方に問題
がある。
このニュースには3つの側面がある。
1. 交通事故の前に女性は救急車内で流産しており、事故と流産に因果関係はないこと
2. 夜中の二時という一番搬送先が見つからない時間に、妊娠しているかどうかも自覚してなかった女性を「切迫流産か」という「知人男性の連絡」によって救急車が駆けつけたこと
3. 奈良県の産科は昨年の「大淀病院産婦死亡事例」報道のメディアスクラムによって、南部は絶滅、北部もその余波を受けて、崩壊していること
つまり
救急搬送を受けられる県内の病院の数は、昨年8月より減っている状態
で、
一番手薄な深夜の時間帯(しかも昨夜は満月で、経験的にお産が多いと言われる)に、「妊娠しているかどうかも不明な女性の切迫流産かも知れない出血」に対する救急要請が出た
ということなのだ。もし、この女性が、産科を受診していて、妊娠が確実な状態での「出血」ならば
3. かかりつけ医から、しかるべき医療機関への搬送依頼がなされた
だろう。したがって
4. 急変ではあるが「一般の妊産婦の急変とは別なファクターが大きい」不幸な例
なのである。きちんと産科を受診してさえいれば、恐らく、なかなか搬送先が見つからない、という事態だけは回避できたかも知れないし、少なくとも、深夜にスーパーに出かけたりしてなかったのではないかと思う。
ところが、ニュース9の伊東青山アナと柳澤キャスターの締めの言葉は
「安心して子供が産めませんね」
「(昨年も同じようなことがあったのに)スピード感をもって望んで欲しい」
という
明後日の方向のコメント
だ。だいたい、
5. 妊娠してるかどうか分からない女性が腹痛・出血を訴えた場合、疑われるのは子宮外妊娠・流産など、いくつもの可能性が考えられ、深夜の人手の少ない病院では、対応しきれない難しい症例の可能性が高い
のだ。もし、人員が足りないのに、救急搬送を受けたら、十分な医療措置を施せないから
結果的に見殺しにする
かも知れないのだ。
拒否ではなく、受け入れ不能だった
ということを、なぜマスコミは理解しようとしないのか。それとも不十分な態勢で受け入れてもらって、予後が悪かったら、今度は
医療ミス
と訴訟を煽るのか。
柳澤キャスターは
産科医は、促成栽培の野菜よろしく、「人員配置しろ」と誰かが号令を掛ければ、簡単に「養成できて人員が足りる」
と思いこんでいるらしい。さすが
人手がたっぷりあるNHKらしい発想
ですね。残念ながら
産科医の半数以上はすでに50代で、あと10年もすれば、日本の産科医は激減する
のだ。しかも、
若手医師は産科にいかない
から、どんどん産科医は減っている。このことについては、以下に。
2007-05-29 産科崩壊 「産婦人科」を標榜する36-60歳の現役医師は全国で5664人 24-35歳の若手医師は2318人(平成16年度) 全員がお産を扱うわけではない
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/05/366056642435231_f19b.html
一般に医師が一つの診療科で一人前になるためには
最低で10年かかる
のだから、
現在すでに不足している人員を埋める
ためには、
これから産科志望の医学生を募っても、医学部6年その後10年の16年かかる
のだ。これを
スピード感をもって望んで欲しい
というのは
暴論
以外の何者でもない。それとも、柳澤キャスターは
自分が脳外科や心臓血管外科の手術を受けるときに、「促成栽培された医師」に頼む
のだろうか?そんなに
医師の養成は短時日に簡単にできる
のか?全くもって
いい年をしたオトナとは思えない、浅薄な見解
としか言いようがない。これが
NHKのニュース9キャスターの見識
なのだから、伊東青山アナが多少血迷ったことを言うのもしょうがないのだろうな。もう一度、先ほど引用した記事の数字を見て欲しい。
全国で36-45歳のベテラン産科医師 2440人、24-35歳の若手産科医師 2318人
と
5000人に満たない数
なのだ。この先生達が中心となって
日本の年間出生数110万件前後
を扱っているのだ。
続き。
搬送された妊婦さんは、NHKのニュースによれば
38歳
だった。
妊婦流産 受け入れ態勢が不備大阪・高槻市で隣の奈良県から妊娠中の女性を搬送していた救急車と軽自動車が衝突する事故があり、女性は流産しました。女性は、受け入れ先の病院が見つからず、
救急隊が11か所目に連絡した病院に向かう途中で事故にあい、出産の受け入れ態勢の不備が浮き彫りになりました。
29日午前5時すぎ、大阪・高槻市の国道171号線の交差点で、奈良県の中和広域消防組合の救急車と軽自動車が衝突しました。救急車に乗っていた奈良県橿原市の妊娠3か月の38歳の女性は別の救急車で病院に運ばれましたが、流産が確認されました。ほかにけがをした人はいませんでした。警察などによりますと、女性は29日午前3時前、
家の近くの橿原市内のスーパーで腹痛を訴え救急車を呼びました。
(以下略)
8月29日 19時7分
「橿原市のスーパー」って
オークワ
だったのね。
しかし
38歳で妊娠に気づかず流産
となると、大変お気の毒なのだが
自然流産の可能性
も高い。人間に育たない胎児(先天的な問題を抱えている場合が多い)は、早期に流産することがある。もし、そうだとすると、流産を止める処置をしても、それ以上胎内で育てるのは難しかっただろう。
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コメント
外国人医師なんていうアイデアもありえなくはないでしょう
投稿: foo | 2007-09-20 13:30