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2007-08-31

「マスコミたらい回し」とは?(その93)奈良高槻妊婦搬送問題 胎児は胎内で死亡していた 何故マスコミはその点を隠そうとするのか→奈良県立医大産婦人科教室叩きには「某有名大学教授選絡み」という怪情報まで

今回の
 奈良高槻妊婦搬送問題
は、当初
0. 36歳妊娠3ヶ月の産科未受診の妊婦さんが、腹痛と出血を訴えて救急搬送を求めたが、搬送先が見つからず、高槻まで搬送される間に「破水(←妊娠三ヶ月で「破水」という言葉自体がおかしい)」、その後交通事故があり、胎児は死亡した
と伝えられていた。
ところが、現在
1. 38歳妊娠7ヶ月の産科未受診の妊婦さんが、腹痛と出血を訴えて救急搬送を求めたが、搬送先が見つからず、高槻まで搬送される間に「胎児を死産」、その後交通事故があり、死産児と共に病院に運ばれた
と報道されている。

毎日より。まず昨日の午後1時頃の記事。


奈良妊婦死産:消防と病院で連絡不備 受け入れ出来ず

 奈良県橿原市の妊婦(38)の胎児が救急搬送中に死亡した問題で、橿原消防署(中和広域消防組合)から最初に妊婦の受け入れを要請された県立医科大学付属病院(同市四条町)が、要請から約2時間のうちに、他の2人の妊婦を救急搬送で受け入れていたことが県の調べで分かった。病院に受け入れの余力がありながら、消防とのコミュニケーションの不備などで結果的にこの妊婦の受け入れが出来なかった。
 一方、大阪府警高槻署の調べで、この妊婦は妊娠24週(7カ月)で、胎児は胎内で死亡していたことが分かった。流産は22週未満で胎児が死亡する場合を指し、このケースは死産に相当する。病名は不詳。
 県によると、28日夜の同病院の産婦人科当直医は2人。1人は帝王切開手術後の患者の経過観察でつきっきりとなっていた。受け入れは、もう1人の当直医が対応した。
 消防から死産した妊婦の受け入れ要請がきた1分前の29日午前2時54分に別の妊婦が来院。通常分娩(ぶんべん)の患者で、同医大をかかりつけにしていた。このため、要請の連絡を病院の事務から受けた医師は「診察中のため後にしてほしい」と回答。事務員は「患者が入り、手術になるかもしれない」と消防に伝え、消防側は「断られた」と認識した。県の聞き取り調査に、医師は「断るつもりではなかった」と話している。
 一方、約30分後の午前3時32分。新たに同医大をかかりつけにしていた妊婦が、破水。この時点で産婦人科の病床は一つ開いていたため、入院した。さらに午前4時ごろ、近くの医院から、分娩後、大量出血した妊婦を搬送したいと要請があり、受け入れを決めた。
 この連絡の直後、死産した妊婦の受け入れ先が見つからなかった橿原消防から2度目の要請があった。事務員が「別の医院からの電話を医師につないだところ」と答えると、電話が切れた。大量出血した妊婦は午前5時ごろ医大病院に到着。産科の病床が満床だったため、他の科の病床で受け入れた。
 橿原消防からの3度目の搬送要請は、緊急度の最も高い3次救急に対応する同医大の救急救命センターに寄せられた。時刻は不明。センターの医師が症状を聞き取り、「全身状態が悪くない」と判断、2次医療機関で対応してほしいと断ったという。センターには一般病床で4床の空きがあった。
 結果的に、死産した妊婦は大阪府高槻市に搬送されることになり、その途中の午前5時9分、軽乗用車との接触事故に巻き込まれた。
【中村敦茂】

毎日新聞 2007年8月30日 13時55分

同じ記事が午後11時段階で次のように見出しが書き直されている。

奈良妊婦死産:最初要請の病院 受け入れに余力

さて、まず
 死産を緊急搬送するかどうか
が問題になる。
残念ながら、赤ちゃんはお腹の中で亡くなっていたわけで、死産児に対しては手の施しようがない。あとは
 妊婦さんの状態によって、緊急搬送するかどうか
が決まる。今回の例では、
 妊婦さんは、全身の状態がよい
と判断されたために、緊急搬送しなくても命に別状なしと現場で判断されたモノと思われる。
従って、
2. 交通事故後、処理に時間がかかって「30分ムダにした」のではなく「死産して緊急搬送の必要性が下がった」
のである。
この点を、今日以降
3. 「交通事故のあと、すぐ運べなかったのか」と報道するメディアは「悪意あるミスリード」
だ。
次に
 胎内の赤ちゃんがいつ亡くなったのか
が問題となる。もし
4. 橿原市のスーパーオークワで救急車を呼んだ段階で「すでに死産しかかっていた」
のであれば
5. 緊急搬送しても、誰も助けることが出来ない
のだ。
このあたりの情報は出てきていないのだが、
6. 妊婦さんの妊娠月数の報道が当初、「3ヶ月〜7ヶ月と混乱」していた点から、「死産児が在胎月数に比して、育ってなかった」疑問
がある。
赤ちゃんがお腹の中で育たず、亡くなっても、すぐに胎外に出てくるわけではない。
この妊婦さんは
 産科未受診で、妊娠しているかどうかも自覚してなかった
ようなので、胎児死亡の時期は特定しにくいのだが、娩出した死産児の状態を見れば、すくなくとも
 救急搬送よりかなり以前に死亡していたかどうか
は分かると思う。

つまり
7. 救急車を呼ぶ以前に、赤ちゃんはすでに胎内で死亡しており、腹痛と出血は死産児の娩出が始まったからだった
とすると、
8. 当初の「搬送が遅れたから胎児が亡くなった」という報道自体が結果的に誤報
となる。

今後、もし、この問題が報道されるとすれば
9. 急変した妊産婦の緊急搬送システムの確立とそのシステムを支える医療スタッフの充足
であって、
 今回、救急搬送に応えられなかった病院を責めるのは、はっきり言って筋違い
だ。
どの病院でも、
 赤ちゃんとお母さんの二つ(多胎ならさらに増える)以上の命を救うために、深夜二時過ぎにたくさんの医療スタッフが懸命に治療に当たっていた
のだ。
特に
 三次救急担当の筈の奈良県立医大を責める
のは、不当に近いのではないか。
当日夜の妊婦さんの状況が
11. 腹痛を感じた段階で既に胎児が死亡していたなら、妊婦さんはスーパーに買い物に行ける程度の良好な身体状態だったわけで、緊急搬送を要する、大量出血などのその他の症状がなかった
のだったなら、奈良県立医大が取るべき重篤な患者さんには該当しないだろう。
満月の夜とその前後は、経験的にお産が多いのだが、奈良県立医大産科は、この問題が起こった8/28もその翌日も、極めて難しい症例の妊産婦さんの治療が昼夜を分かたず行われている状況と聞く。
マスコミは
 単なる感情論
で、
 本来救うべき重篤な患者さんを差し置いてでも「死産児の命を救え」という誤ったキャンペーンを張っている
ように見える。
これ以上、
 奈良県の産科の砦である奈良県立医大を「犯人扱い」にするならば、本当に奈良は「産科絶滅地域」になる
ことを、マスコミは肝に銘じて欲しい。
昨夜の
 NHKニュースウォッチ9
でも
 主犯は奈良県立医大というミスリード
が見られた。なお、ある風説では
 奈良県立医大産婦人科教室関係の「良くない話」がすぐにマスコミに取り上げられるのは、某有名大学の教授選に絡んでの「情報工作」
だという、穿った見方もあるという。そうすると、NHKには
 某有名大学教授選に関連する、「奈良県立医大産婦人科教室をよく思わない勢力」からの「情報工作」
でもあるのか? ここまでくると、奇々怪々ですな。

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コメント

はじめまして。いつも拝読させていただいてます。
なるほど、死産によって緊急性が低くなった可能性があるんですね。
マスコミからは、まったくそういう報道がなされていませんね。わかりやすい悪を仕立て上げて、それを叩たく。とにかく記事が売れさえすればいい、という意識が透けて見えます。マスコミには、自分の仕事の使命というものをきちんと考えてもらいたいものです。

投稿: mild7 | 2007-08-31 16:22

はじめまして。この問題については、自分が妊娠中なので気になってテレビ等の報道を見ていたのですが、ご指摘の通り情報が二転三転していて何が真実なのかと疑問に思いました。それよりも、流産の経験がある身としては、妊婦さんに問題が多くあるように思われます。3ヶ月の流産であれば、大量出血と共に胎児が出てくるというのは既に胎児が亡くなっていた為に起こった自然な事でしょうし、7ヶ月であれば、妊娠の兆候があるはずなのに受診していなくてかかりつけ医がいなかった所がまず本人の自覚不足で、救急や病院を責めるのはおかしいですよね。

投稿: ぷらぷら | 2007-09-02 09:56

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