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2007-08-31

「マスコミたらい回し」とは?(その94)産経と読売は「少子化対策」の敵 社説のタイトルが「たらい回し」 子どもを持つ予定の家庭には両紙の不買を推奨 当夜、どの病院も命の戦い 目の前の患者を見殺しにして「緊急搬送」に応えろ? 

問われているのは「医師不足」と「体制の不備」だ。
起きているのは「たらい回し」ではなく、「人員不足で救急要請に応じられない、限界ぎりぎりの現場」だ。
それを見抜くことが出来ず、「ベッドが空いている」という単純な発想で、現場の医師を叩くのは、既に「言論による産科医療に対するテロ行為」である。「ベッドが空いている」のは、次に予定されている難しいお産のためかもしれない。「患者を治療するのは空きベッド」だとでも思っているのか。医療スタッフが足りなければ、いくらでもベッドは空く。

奈良大阪妊婦搬送問題があった夜、奈良県や大阪府のどの病院も深夜大変な状況にあった。最初に連絡のあった奈良県立医大は
 奈良県の基幹病院であるにもかかわらず、当直医はわずか二人
だったのだ。その二人の医師が命に関わる厳しい状況の妊産婦と赤ちゃんの懸命な治療に当たっていた。
その事実を確認もせず
 あたかも医師側に問題があった
と叩くのは
 大淀病院産婦死亡事例
でもあったことだ。いったい
 読売と産経の論説委員は、この1年、産科医療問題について、何を学んでいた
のだ。
大淀病院産婦死亡事例から1年を経過しても、奈良の産科医療が向上するどころか
 緊急搬送のシステムがズタズタ
なのは
 マスコミが大淀病院にメディアスクラムをかけて、奈良県南部の最後の砦・大淀病院の産科を潰した
からではないか。影響は大淀病院だけでなく、他の病院にも及び、現在、奈良で夜間に産科救急を取れる病院は
 昨年8月よりもひどい状況
なのだ。
 自分たちが奈良の惨状を招いておいて、そうした現場でまだ頑張って医療の前線を支える産科医を更に叩く
のか。
 これ以上、奈良県の産科医療を叩くことは、産科絶滅を意味する
ことを理解しているのか。
 奈良県の妊産婦は急変したら、死んでもいい
ということか。

これから子どもを持とうと思っているご家庭および医療関係者におかれましては、今後
 読売新聞と産経新聞の購読中止を推奨
いたします。本日の社説が
 前代未聞のひどさ
であります。各ご家庭および各医療機関の待合室・研究室・当直室などでは新聞購読をされているかと思いますが、
 毎日新聞
に加えて
 読売・産経も不買対象
とされますように。
 ただでさえ少ない産科医を更に減らすための反産科キャンペーンを張る新聞は、「子どもを持とうと思っている家庭」の敵
です。つまり
 少子化対策に敵対する新聞
なのです。
また、医療関係者におかれましては、本日の読売・産経両紙およびwebに広告を出稿している医薬品会社に抗議し、場合によっては、当該医薬品会社の製品に対する「評価」をご一考いただけますように。

救急救命には、
 命のトリアージ
がなされる。特に
 常に人員不足の産科医療
においては、
 次々と「赤ちゃんとおかあさんの二つ以上の命」が危険にさらされている状態で運ばれてくる
のだ。今回の
 奈良高槻産婦搬送問題
は、
 残念ながら赤ちゃんは胎内ですでに死亡、妊婦さんには生命の危機がなかった
ことが明らかだと思われる。しかも、
 妊娠しているかも知れない女性が下腹痛を訴えている
というのが、救急からの連絡だった。もし、
 すべての妊娠している女性の夜間の下腹痛に三次救急病院が応需する
ことになれば
 日本では瀕死の妊産婦は、たとえ入院していても、見殺しにされる
ことになる。とてもじゃないが、現在の産科にその余力はない。そうした現状を全く考慮せず、
 緊急性の低い救急搬送を先にして、命の危機に瀕している入院患者を後にしろ
といってるのが、今日の
 読売・産経の社説
だ。
あきれ果てているので、晒しておく。
読売。


妊婦たらい回し 一刻も早い産科救急の整備を(8月31日付・読売社説)

 産科の緊急医療体制の欠陥がまた、悲劇を招いた。

 奈良県の妊娠7か月の女性が大阪府の病院へ運ばれる途中、救急車内で死産した。九つの病院に受け入れを断られ1時間半も搬送先が決まらなかった。

 奈良県では昨年8月、公立病院で分娩(ぶんべん)中に意識不明になった妊婦が19病院に受け入れを拒否され、死亡している。

 妊婦のたらい回しは、首都圏をはじめ全国で起きている。今回のような例は氷山の一角ではないか。一刻も早く、妊婦や新生児の緊急搬送システムを構築し、お産の安全を確立することが必要だ。

 奈良県の妊婦は未明に出血した。通報を受けた消防は、奈良県立医大病院に受け入れを要請したが、宿直医が診察中などという理由で要請を3回断られた。

 しかし、空きベッドはあった。なぜ受け入れられなかったのか。窓口の職員と医師が十分に意思疎通できていたのかどうか。仮に医大病院が無理だったとしても、消防と協力して、別の受け入れ先を探すことができたのではないか。

 やっと40キロ離れた大阪府高槻市の病院を見つけたものの、搬送中の救急車が事故に遭い、到着は通報から3時間後になった。もっと早く搬送できていれば、胎児は助かったかもしれない。

 奈良県や大阪府は、空きベッドの有無や医師が対応可能かどうかをパソコンで確認する産科病院の相互支援ネットワークを、それぞれ設けている。

 だが、ネットワークは、病院間での搬送が前提になっていて、医師が病状を確認していないと、搬送のシステムが動き出さない。今回の妊婦のように、かかりつけの医師がなく、消防から直接要請を受ける場合は想定していなかった。

 重篤な患者については、救急車からの要請にも対応できるよう、運用を改善すべきではないか。

 奈良県は、リスクの高い妊婦や胎児を専門的に診療する「総合周産期母子医療センター」の設置も遅れている。

 厚生労働省は、今年度中に全都道府県が整備するよう求めてきたが、奈良県は医師不足から、山形、佐賀、宮崎の3県とともに来年度以降にずれ込みそうだ。こんな地域格差があってはならない。

 産科医不足は深刻だ。2004年までの10年間で7%も減り、1万人余になった。出産を扱う医療機関も05年までの12年間に1200施設が閉鎖された。

 厚労省は来年度予算の概算要求に医師不足対策費160億円を盛り込んだが、養成には時間がかかる。当面の対策として、自治体や医療機関が緊密に連携した広域的な救急体制を整備すべきだ。

(2007年8月31日1時32分 読売新聞)

産経はもっとひどい。


【主張】妊婦たらい回し また義務忘れた医師たち

 次々と病院から受け入れを断られ、たらい回しにされた奈良県の妊娠中の女性が、救急車の中で死産した。奈良県では昨年8月にも、分娩(ぶんべん)中に意識不明となった妊婦が、19カ所の病院に転院を断られ、死亡している。悲劇が再び起きたことに死亡した妊婦の夫は「この1年間、何も改善されていない。妻の死は何だったのか」と怒りをあらわにする。その通りである。「教訓が生かされてない」と批判されても仕方がない。

 女性はようやく見つかった10カ所目の大阪府高槻市の病院に向かう途中、救急車内で破水し、その直後に救急車が軽ワゴン車と衝突した。

 事故後、消防隊員が連絡すると、病院側は「処置は難しい。緊急手術も入っている」と断った。その後、大阪府内の2病院にも断られ、困った消防隊員が再び要請すると、高槻市内の病院は受け入れをOKした。結局、病院にたどり着いたのは、119番から3時間もたっていた。

 奈良県では危険な状態にあるお産の周産期医療の搬送は、健康状態を把握しているその妊婦のかかりつけ病院が県内の2病院に連絡し、それぞれが受け入れ先を探す。この仕組みだと、比較的受け入れ先が見つかりやすい。

 しかし、死産した女性はかかりつけの医者がいなかった。このため、一般の搬送の手順で消防隊が受け入れ先を探した。これが時間のかかった理由のひとつだという。

 奈良県の幹部は「かかりつけ医のいない妊婦の搬送は想定外だった。すぐに対策をとりたい」と話すが、トラブルや事故は予期せぬ中で発生するのが常である。早急に抜本的対策をとる必要があろう。

 周産期医療を扱う病院は、全国的に減少している。産婦人科医は内科医などに比べ拘束時間が長く、訴訟も多いからだ。

 妊婦のたらい回しは、奈良県だけに限った問題ではない。厚労省は産科医などの医師不足対策に本腰を入れて取り組むべきである。

 それにしても、痛みをこらえる患者をたらい回しにする行為は許されない。理由は「手術中」「ベッドがない」といろいろあるだろうが、患者を救うのが医師や病院の義務である。それを忘れてはならない。

(2007/08/31 05:02)

日本では、
 医療の現実を全く知らない論説委員達が、「机上の空論」を振りかざして、現場の医師を追い詰め、日本の医療を更に荒廃させている
のだ。その実例が今日の
 読売と産経の社説
だ。
 日本の医療報道は死んでいる
とわたしは確信した。

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コメント

本当に、産経の社説は酷いですね。
(朝日新聞は許せる範囲でしたが…)

私も抗議文を投書しました。
http://blogs.yahoo.co.jp/taddy442000/16248030.html
絶対に許せませんね!

投稿: うろうろドクター | 2007-08-31 14:22

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受信: 2007-08-31 16:36

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受信: 2007-09-02 16:07

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