産婦の脳出血@医心方巻二三
大淀病院産婦死亡事例は、出産中の産婦さんが脳内出血を起こし亡くなられた、不幸で稀な事例だった。合掌。
ところで、MRIもCTもなければ開頭手術もできない、平安時代、安倍晴明の活躍したのとほぼ同時代に成立した日本最古の医学書である丹波康頼『医心方』巻二三には
出産の際に脳出血を起こした産婦さんの治療法
というのが載っている。(ちなみに『医心方』巻二一〜二四は、産婦人科に充てられている。)
こんなの。
第二七 治産後中風口噤方(産後に中風となり口がきけなくなる症状の治療法)
この時代は脳出血という概念はないから、すべて
中風=風に中(あた)る
ということになる。
産婦の脳出血は知られていたようで、以下中国の医書から
小品方二条
葛氏方一条
千金方一条
録験方一条
僧深方一条
博済方一条
産経一条
と合計八つの治療法が引用列挙されている。治療法といっても、
服薬による対症療法のみ
で、果たしてどれだけ効果があったのかはわからないけれども
産後の脳出血
にこれだけ治療法があるということは、それだけ知られた症状だった、ということだ。
ちなみに、巻二五は小児科の巻だがここにも
第五十 治小児口噤方
があり、脳出血もしくは脳性麻痺で口を開かない乳幼児の治療法が書かれている。書いてある処方は
雀の糞を麻の実くらいのくらいに丸めた物を呑ませる
鹿の角と大豆とを粉状にしたものを乳房に塗って呑ませる
というもので、効果はなさそうだけど。二つ目の処方は「乳房に塗る」ということだから、赤ちゃんの脳出血や脳性麻痺を想定しているのではないかと思う。
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コメント
『医心方』、入所した頃に隣席だったTさんが読んでいました。ついでに色々「薬」を集めていましたよ。
「散歩」が薬に関連する行為だったと知ったのは、その頃でした。
投稿: あかねだ | 2007-08-01 21:59