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2007-09-01

福島県立大野病院事件第七回公判@8/31(しばらくこの記事をトップに表示します)→順次追記あり→ロハス・メディカルブログで血も凍るような検察の恫喝が詳述されています

昨8月31日は
 福島県立大野病院事件第七回公判
が開かれた。
例によって、
 ロハス・メディカルブログの川口恭さんが傍聴
している。
福島県立大野病院事件第7回公判(0)
福島県立大野病院事件第七回公判(1)
(追記 21:24)
福島県立大野病院事件第七回公判(2)
福島県立大野病院事件第七回公判(3)
(追記 9/5 12:40)
福島県立大野病院事件第七回公判(4)
福島県立大野病院事件第七回公判(5)

読んでて、どんよりしてきます。
医学的根拠に基づかず、「検事の作文」の文脈に沿って、K医師を法廷で締め上げる検察の尋問。
K医師は、現在、一切の産婦人科医療に携わることが出来ず、休職中です。
福島県は、産科不足の自治体で、そこで一人の働き盛りの医師がいなくなることは、県民の健康福祉の点から見ても、非常に大きなマイナスですが、刑事でやる以上、検察は、暴走を続けるでしょう。
誰も救われない裁判です。
川口さんの結びの言葉がすべてを表しています。


文字起こしを経て、今思うのは
S検事の尋問は鋭かったということと
であればこそ、時間引き延ばしなど姑息なことをせず
正々堂々となぜ尋問しなかったのかということである。

この事件、堀病院事件と続いた刑事司法の動きが
その後の大淀病院事件、先日の奈良死産事件の
引き金となったことは間違いのないことであり
それでもK医師の起訴が正しかったと考えているのなら
策を弄するのでなく正々堂々と立証すべきである。
でなければ、検察はそういう所か、と世の中から見放される。

「周産期医療の崩壊をくい止める会」のサイトにも、第七回公判の詳報が掲載され始めています。(現在作業中)
第七回公判(2007/08/31)について
(追記おわり)

日経メディカルの橋本佳子編集長の傍聴記。


2007. 8. 31「私に落ち度はない、精一杯やった」福島・大野病院事件の第7回公判が開催

検察:「冒頭陳述の際、患者さんを死亡させたことについて忸怩(じくじ)たる思いがあると話したが、結果について落ち度があると考えているのか。『あの時、あれをやれば良かった』と思うことがあるのか」
加藤医師:「特にありません。精一杯のことをやりました。だからこそ、その結果にすごく悔しい思いをしています」

検察:「(事件)当時の知識や経験で足りなかったことはあるのか」
加藤医師:「医師は日々勉強していくものであり、そういう意味ではもっと勉強しようという思いはあります」

検察:「癒着胎盤を疑い、MRIをやっておくべきだった、癒着胎盤の知識・認識が不足していた、医局に応援医師を頼んでおくべきだった、という思いはあるのか」
加藤医師:「ありません」

検察:「(胎盤剥離の際)、用手剥離にクーパーを併用したことは問題だったと思うか」
加藤医師:「思いません」

検察:「あなた自身、自分の知識、手技、判断に落ち度があったと思うか」
加藤医師:「特に落ち度はありません」

 これは、8月31日に開催された福島県立大野病院事件の第7回公判の終盤に行われた、検察側と被告である加藤克彦医師とのやり取りだ。この日の公判は被告人尋問で、9時30分に開始し、途中昼食の休憩などを挟んで、19時までという長丁場だったが、加藤医師は終始冷静に、言葉を選びならが尋問に答えていた。

1日9時間に及んだ取り調べ
 この日は被告人尋問が行われるとあって、15人の一般傍聴券を求めて121人が並んだ。逮捕から起訴に至る取り調べの段階で、本人の供述通りに調書が作成されたとは必ずしもいえないこと、胎盤剥離にクーパーを使った妥当性をはじめ起訴事実に疑問符が投げかけられたことが、今回の公判のポイントだといえよう。なお、公判は通常、主尋問(この日は弁護側)、反対尋問(検察側)、再主尋問(弁護側)という流れで進むが、この日は検察側の反対尋問が長時間にわたり、再主尋問は次回以降に延期された。

 最初に尋問を行った弁護側はまず、逮捕から起訴までの拘留期間の取り調べについて尋問した。加藤医師が逮捕されたのは、2006年2月18日、起訴は3月10日だ。その間の取り調べは、1日7〜9時間に及んだという。留置場から検察庁まで往復約2時間の道のりも含めると、ほとんど自由な時間はなかった。「逮捕ということで、変な緊張があり、頭がぼおっとして何が事実か分からなくなることもあった」(加藤医師)。留置場に戻っても、医学書はなく、物事を考える時間的余裕もなかったという。

「あなたは殺人者だ」と検察に言われた
 そんな状況でまとめられた調書は、加藤医師の主張がそのまま記載されないこともあった。例えば、本事案は、子宮と胎盤を剥離する際にクーパーを使ったことが大量出血につながり、妊婦の死亡原因となったとされている。
 調書には、「まず用手剥離を行ったが、指が3本、2本、1本と入らなくなったためにクーパーを使った」という内容は記載されている。ところが、実際には、用手剥離とクーパーを併用したのであり、(1)用手剥離で3分の2くらい胎盤をはがし、もう少しですべてはがれる段階だった、(2)用手剥離が難しい部分は、クーパーを使えば、剥離部分が見え剥離作業がしやすい、(3)クーパーであればピンポイントで力をかけることができる——など、クーパーを使った理由を丁寧に説明したにもかかわらず、その辺りの事情は記載されなかった。

 「クーパーを使うこと自体、違法行為であり、『あなたは殺人者として、クーパーを使った』」など、取り調べの場で検察官に言われた場面もあったという。

診断や手技の妥当性を主張
 その後、弁護側、および午後の検察側の尋問は、妊婦の初診時からの診察の流れや、帝王切開手術時の状況について行われた。本事案では、(1)癒着胎盤が術前に予見でき、その対策を講じるべきだったか、(2)胎盤を子宮から剥離する際、クーパーを使ったことが妥当か、(3)出血量はどの程度だったか、(4)死因は何か——などが争点だ。

 両者の尋問に対する加藤医師の証言を簡約すると、以下のようになる。

 まず、(1)の癒着胎盤の予見性については、加藤医師は、初診からの診察過程で何度も超音波検査を行い、癒着胎盤が認められないことを確認していた。検察側の鑑定を行ったある産婦人科教授(「注目の鑑定人・産婦人科教授が証人に」)では、「MRIを行い、癒着胎盤の有無を確認すべきだった」とも述べているが、加藤医師は、「超音波所見で異常が認められなかったこと、MRIによる癒着胎盤の診断の信頼性は高くはない」とした。前回の帝王切開創には胎盤はかかっておらず、術中も癒着胎盤を疑うことは容易ではなかったという。

 (2)のクーパー使用については、前述の通り、用手剥離との併用には妥当性があると主張。(3)の出血量は、「無理にクーパーで剥離したことが大量出血につながった」というのが検察の主張だが、加藤医師は、「クーパーで剥離中、血液で見えなくなったことはなく、急に出血が増えたことはない」などとした。

 さらに(4)について、手術当日の深夜書いた死亡診断書には、「直接的な死因は心室細動であり、それは癒着胎盤による出血性ショックに起因」という旨が記載されている。だが、加藤医師は「弛緩出血やDIC(播種性血管内血液凝固)などのいろいろな原因を考えつつ、この時点ではこれが妥当かなと思っていた」と述べた。

医療事故を刑事裁判で裁く意味はあるのか
 長時間にわたった本日の公判を傍聴して特に感じたのは、揚げ足取り、あるいは重箱の隅を突くような尋問が散見されたことだ。もちろん、特に医療事故の裁判の場合、最終的な判断を下すには、細かな事実の積み重ねが不可欠だ。一つの事象で、有罪か無罪かが決まるわけではない。ただ、これらを差し引いても、質問の目的に疑問符が付くものが少なくなかった。また、何度も同様の質問が繰り返される場面も散見された。

 こうした尋問を聞くにつけ、仮に有罪判決が出た場合、何らかの問題解決になるのかという疑問もわいてくる。刑事裁判は、同様な事例の再発防止、癒着胎盤事例をはじめ周産期医療の安全体制の確立などにつながらず、もとより期待すべくもない。

 では果たして、遺族の救済につながるのか、いったい誰が何の利を得るのか——。今回も含め、この1月の初公判から数えて、計7回の公判を傍聴して筆者に浮かんだのは、こうした素朴な疑問だった。もちろん、現行制度下では、医療過誤に業務上過失致死罪を適用するのはやむを得ない面があるが、このままでは萎縮医療、そして医療崩壊を加速させるだけだ。早急に新たな法体系を確立する必要がある。

(橋本 佳子=日経メディカル オンライン)

(追記おわり)

各メディアの報道から。
朝日より。

被告の医師が検察調書を否定 帝王切開手術中の死亡事件 2007年08月31日11時09分

 福島県立大野病院で、04年に女性(当時29)が帝王切開手術中に死亡した事件の第7回公判が31日、福島地裁(鈴木信行裁判長)であり、業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪に問われた産科医K被告(39)が、被告人質問に臨んだ。

 K被告は「クーパー(医療用ハサミ)を使えば胎盤の取り残しもなく、子宮も傷つけないと判断したと説明したが、検察官には理解も納得もしてもらえなかった」と述べ、検察調書を否定した。K被告は、取り調べ段階では施術が不適切だったと供述していたが、初公判では「適切な処置だった」と主張した。

同福島版。


手術・調書確認に迫る
2007年08月31日

 −大野病院事件公判 きょう被告人質問−

 県立大野病院で04年、女性(当時29)が帝王切開手術中に死亡した事件で、業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪に問われた産科医K被告(39)の第7回公判が31日、福島地裁で開かれる。「適切な処置だった」として罪状を否認したK被告への被告人質問があり、手術方法の正当性や捜査段階での調書の信用性などについて本人の認識がただされる。

 公判では、胎盤と子宮の癒着を認識した時点で、胎盤剥離(はく・り)を中止すべきだったかどうかが争点になっている。

 弁護側は、剥離を続けたのは、出血を止めるためであり正当、と主張。K被告は初公判後の記者会見で、胎盤をはがすためのクーパー(手術用ハサミ)使用について、「勾留(こう・りゅう)中は取り調べに対し、『クーパーの使用は不適切だった』と言ったが、今はそういうことは考えていない」と述べ、正しい医療行為だったと主張した。どのような認識で胎盤を剥離したのか、法廷での発言が注目される。

 検察側はこれまでの公判で、県警の依頼で鑑定書を作成した新潟大学医学部の田中憲一教授らを証人尋問し、「クーパー使用の有無にかかわらず、無理やり胎盤をはがした点が問題」との主張を展開している。

 また、K被告は捜査段階での供述内容を翻しており、検察官調書の信用性が争点の一つ。検察側は、K被告の供述に強制はなかったとしているが、弁護側は取り調べに問題があったことの立証も試みる方針だ。

河北新報。


被告、あらためて無罪主張 大野病院事件 福島地裁

 福島県立大野病院(大熊町)で2004年、帝王切開中に子宮に癒着した胎盤を剥離(はくり)した判断の誤りから女性患者=当時(29)=を失血死させたとして、業務上過失致死罪などに問われた産婦人科医K被告(39)の第7回公判が31日、福島地裁であった。K被告は被告人質問で「自分に落ち度はなかった。当時の状況の中で最善を尽くした」とあらためて無罪を主張した。

 争点となっている胎盤と子宮の癒着が分かった時期について、K被告は「はがれにくいのは胎盤癒着のためとは考えていなかった。剥離の途中、クーパー(医療用はさみ)を使い始めたころから胎盤癒着が頭に浮かんだ」と説明。癒着を認識した上で剥離を始めたとする検察側主張に反論した。

 検察側が危険性を指摘するクーパーの使用については「指での剥離が3分の2以上進んだ時点で、クーパーも併用した。指と違って剥離部分が見え、力を込めてピンポイントで剥離がしやすい」と適切な判断だったことを強調した。

 その上で「検察の取り調べで何度も説明したが納得してもらえなかったため、調書の内容について訂正は求めなかった」と述べ、「指がすき間に入らなかったからクーパーを使った」とした調書の供述内容を翻した。

 起訴状によると、K被告は04年12月17日、女性の帝王切開手術で胎盤と子宮の癒着を確認し剥離を開始。継続すれば大量出血で死亡することが予見できる状況になっても子宮摘出などをせず、剥離を続けて女性を失血死させた。
2007年08月31日金曜日

福島中央テレビ。


大野病院の医師の裁判 被告の産婦人科医が証言(動画あり)
2007年08月31日 19:01

 大熊町の県立大野病院で、帝王切開の手術を受けた女性が死亡した事件の裁判です。
 きょうの公判では被告人質問が行われ、被告の医師本人が証言に立ちました。
 業務上過失致死などの罪に問われている県立大野病院の産婦人科医、K被告は、2004年に、当時29歳の女性の帝王切開の手術をした際、無理に癒着した胎盤を引き剥がして死亡させたとされています。
 きょうの第7回公判では、被告のK医師本人が証言に立ちました。
 法廷でK被告は、これまでと同じく起訴事実を否定する証言を繰り返しました。
 今回の裁判は全国から注目を集めていますが、これまでの公判で浮かび上がった争点は二つです。
 一つ目は手術の前に胎盤が癒着しているのを予側できたのかという点、もう一つは手術中に癒着した胎盤を剥きはがす医療行為を中止すべきだったのかという点です。
 結果的には、この医療行為を続けたことで、女性は大量出血して亡くなりました。
 この二つの争点をめぐって、検察側と弁護側が激しい攻防を展開している中で、きょうの被告人質問を迎えました。
 争点について被告は、まず癒着を予測できたのかについて「事前に行った超音波検査や女性の症状から、胎盤が癒着していることは認められなかった」と答えました。
 そして、胎盤を引き剥がす医療行為を続けた点については「手でかなりの胎盤をはがすことができた。
 より的確に剥がすために、最終的に医療用ハサミのクーパーを使った」と述べ、無理やり引き剥がしたのではない、と主張しました。
 このほか、K被告は「手術中に出血が増えることもなく、血圧なども安定していたため、引きはがすことをやめようとは思わなかった」などと、自らの医療行為が正しかったことを強調する証言を続けました。
 裁判はこの後も医療の専門家が次々と証言に立ち、その「医師の判断」について、激しい攻防が続くと見られます。

(以上 7:27)

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